7話 Q.武器が無くなったらどうしようもなくない?
アダムは練習の成果が出たのかはたまた運が良かったのかその後2回とも無事勝つことができた。H組の担任の先生によると、H組の生徒で4回戦までいったのはアダムを含めて3人しかいないのだそうだ。残りの50人以上がほぼJ組で占められている。
アダムの4回戦の対戦相手はI組の生徒だった。3回戦までは相手は全員アダムよりの格下のクラスだった。だから格上の相手と戦うのはアダムにとって初めてだった。
相手は50cmほどの片手斧を持っていた。斧使いと戦うのもアダムにとって初めてだ。そもそも斧使いなんて学校にほぼいない。斧は威力は強いが、動きが遅くなってしまい動きの速い相手や、遠距離系の相手に分が悪いのだ。
(斧か…確か斧は威力が強いが動きが…なら…)
カウントが0になるとアダムはすぐに動いた。相手に向かって一直線に走ったのだ。相手は待ってましたとばかりに斧を振り下ろす。あの威力なら一発でも当たれば円の外まで吹き飛ばされそうだ。
アダムはすんでのところで右によける。
「くっ、ならこれでどうだ!」
振り下ろした斧をそのままアダムの足に向かって振った。それを見越していたアダムは斧が足に届く前に剣を相手に叩きつけた。
「ぐっ!」
相手はうめき声を上げながら3mほど後ずさりする。
「くそっ!これで終わらせてやるッ!」
相手は何と斧をアダムに向かって投げたのだ。
(やばいッこの距離じゃよけられない!)
アダムは剣を構えた。斧を剣ではじこうとしているようだ。
ガツッ!と木と木がぶつかり合う音が聞こえた。アダムの剣は斧によって弾き飛ばされ円の外に出てしまった。一方斧は運のいいことに剣とぶつかった反動で相手の足元に刺さっていた。
「へへ…よくあれを防いだな…でも神様は俺の味方らしいなぁ。これで終わりかな?」
不気味な笑みを浮かべながら地面に突き刺さった斧を引き抜く。そしてアダムの方へ走りながら斧を振り下ろす。アダムはそれを難なくよけながら相手の懐に入る。
「お前!何をする気…」
アダムは素早く相手の服の袖と肩のところをつかむ。そして足を踏み込み、一気に相手を背負い、肩越しに投げた。
「この技はッ!」
相手は円の外へと投げ飛ばされた。
「そう、あなたも習いませんでしたか?〈フライング・メア〉」
「まさかここで使うとは…」
アダムの対戦相手は地面に突っ伏しながら答えた。
「そうですね…僕には神様の味方は必要なかったということですね」
フライング・メアについては10.5話で。