点夜線夜3
人間からパンをもらった狸は、民家の横手にある雑木林の丘にある巣穴に戻った。
「お母さああん」
「おかえりいい」
「お腹減ったあ」
と3匹の子狸が口々に言った。
「はいはい。ただいま。ご飯持って帰りましたよ」
と母狸が言い、持ち帰ったパンを前足で器用に三等分にした。
子狸たちは一様にパンに食らいつき、せっせとお腹を膨らませた。
母狸が笑顔でその光景を眺めている時、背後でバイクの排気音がプルプルと響いた。
近くの道路をバイクがノロノロと走っているのが見えた。
よく見ると、先程パンをくれた人間であった。
バイクが巣穴を通り過ぎる際、母狸は少し頭を下げて
「有難く頂きます、ご主人」
と小さく呟いた。
子狸たちはそんな事は我知らず、一所懸命に小さなパンを食べていた。