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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第6章 第一次大戦編
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第97話 姉妹の情

明けましておめでとうございます。今年も本作品をよろしくお願いします。

「わ、私が滅魔の第一席!? よろしいのですかユート様!?」

「うむ。元より席次などに拘るつもりはなかったが、お前の忠誠心の高さは第一席に相応しいと判断した。お前もその方が嬉しいだろう?」

「もちろんです! このアンリ、天にも昇る気持ちでございます……!!」



 涙を流しながらアンリが言った。あとはまあ、やっぱりエリトラの言動にも目に余るものがあったし。問題はエリトラがこれを受けてどういう反応を見せるか――



「ホホホ。たとえ第二席に降格しようとも、心はいつでもナンバーワン!! ん~~ジェネシス!!」



 あ、思ったより全然大丈夫そうだ。揉め事になるかもと思ったけど杞憂だったようだ。



「では早速注意させてもらうぞエリトラ」



 コホンと咳払いをするアンリ。



「まずその間抜けな仮面を外せ!! ユート様の前で素顔を隠すなど無礼極まりない!! それとこの御方のことは覇王様ではなくユート様と呼べ!! 馬鹿みたいにクルクル回ることは今後一切禁止する!! 突然なぞかけを出すのも禁止だ!! ジェネシスって何だ意味が分からないから二度と言うな!!」



 おおう、席次が入れ替わった途端に捲し立ててきた。きっとだいぶ前から鬱憤が溜まっていたのだろう。



「落ち着くのだアンリ、それは少々言い過ぎだ。エリトラにも悪気があるわけではないのだろう」

「ハッ!? もも、申し訳ございません、ユート様の御前で騒々しい声を……!! この非礼を詫びて今すぐ――」

「自害はしなくてよい」



 でも仮面については僕も気になっていたところだ。自分の素顔に自信がない、というわけでもなさそうだし。



「エリトラよ。その仮面はいつも身に付けているのか?」

「はい。就寝の時も食事の時も、いついかなる時も我はこの仮面と共にあります。この仮面は我の一部だからです。しかし覇王様が外せとおっしゃるのでしたら、我もそのようにいたしましょう」

「……いや、そのままでよい」



 美少女ならともかく、野郎の素顔なんて正直あまり興味ないし。



「覇王様のお心遣い、感謝いたします。ん~~ジェネシス!!」

「余のことはユートと呼んでくれ。あとその口癖は……禁じるとまでは言わないが、できるだけ控えてくれると助かる」

「承知しました、ユート様。ん~~ジェネシス!!」



 やっぱり禁じた方がよかっただろうか。でも席次を降格させた上に口癖まで禁止するのは可哀想だし、今は大目に見てやるとするか。


 にしても四人目の滅魔がこんなに濃い奴だったとは驚きだ。他三人もだいぶ濃いけどこいつが一番かもしれない。



「ところでユート様。後ほど説明するとおっしゃっていた〝事情〟についてお聞きしたいのですが……」

「そうだな。だがその前にユナとペータをここに呼んでくれ。これは滅魔全員に聞いてもらいたい」

「かしこまりました」



 数分後、ユナとペータが大広間に入ってきた。



「あら、帰ってきてたのねエリトラ」

「なんすかなんすか!? 四滅魔が再集合したお祝いにパーティでも始めるんすか!?」

「控えろペータ。これよりユート様が重大なお話をなさるところだ」



 僕の前に四人の滅魔が並ぶ。全員揃ったところを見るのはこれが初めてのことだ。



「皆に作戦を伝える。今晩我々は『天空の聖域』に乗り込み、七星天使の根城である『七星の光城』に襲撃を仕掛ける」



 僕の発言に対し、アンリは焦燥を見せ、ユナは目を見開き、ペータは目を輝かせる。エリトラは仮面を付けているので表情は見えない。



「おそらく七星天使との全面対決になるだろう。その時こそ七星天使を殲滅し、余の餌である人間に手を出すという行為がいかに愚かなことか思い知らせてやるのだ」

「た、大変申し訳ございませんユート様。先日ユート様が私に命じてくださったゲート捜索の件ですが、未だに発見の報告は上がっておらず、今の段階で『天空の聖域』に乗り込むことは……」



 あ、そういやアンリにそんなことをお願いしてたっけ。



「それなら問題ない。ゲートの場所は昨日の時点で余が突き止めている」

「ま、真でございますか!?」

「うむ。よってゲートの捜索は打ち切ってくれて構わない」

「覇王軍の悪魔を5000動員しても発見できなかったゲートを、ユート様がお一人で……!? ユート様の偉大さに改めて感服するとともに、我々の不甲斐なさを嘆くばかりでございます……!!」



 厳密に言えばセアルが僕を仲間にしようと『天空の聖域』まで連れて行ったおかげなんだけど。



「では覇王軍を総動員して『天空の聖域』へ攻め込みますか?」

「いや、余が入手した情報では『天空の聖域』の空間は我々悪魔の身体には毒であり、継続的なダメージが発生してしまう。生半可な悪魔では一時間と保たないであろう」



 実際に僕がこの身をもって体験したことだ。あの時の頭痛と吐き気は本当に参った。



「よって『天空の聖域』へ攻め込むのは余とお前達四滅魔のみとする。奴らを蹂躙するのは五人もいれば十分だ。何か異存のある者はいるか?」

「ユート様の崇高なお考えに異議を唱える者などいるはずがございません。私達もこの時が来るのを待ち焦がれておりました」

「ホホホ。とてもジェネシスな作戦だと思います」

「ウチもワクワクしてきたっす! テンションMAXっす!」

「…………」



 アンリ達が盛り上がる中、ユナだけはどこか浮かない顔をしていた。ユナの境遇を考えれば無理もないだろう。



「どうしたユナ? ようやく目障りな七星天使を殲滅する時が来たのだ。もっと喜んだらどうだ?」

「……え、ええ。そうね」



 アンリの言葉にユナは愛想笑いで答える。アンリ達はユナの境遇を知らない。僕だけがそれを知っている。



「話は以上だ。各自出陣の時まで身体を休め、英気を養っておくように」



 アンリ達は深く一礼し、大広間から立ち去っていく。



「待てユナ。お前だけはここに残れ」

「! わ、私ですか?」

「ユート様!? もしや私より先にユナと性の営みを……!?」

「勘違いするな。アンリは早く行け」

「りょ、了解しました……」



 こうして大広間には僕とユナの二人が残った。



「ユート様、何故私を……?」

「出陣の前に、どうしてもお前と話をしておきたくてな。お前の妹についてだ」

「!」



 僕は『七星の光城』でユナの妹――ミカをこの目で見た。ユナにとてもよく似ていたことを覚えている。



「先程余は七星天使を殲滅すると言った。その中には当然、お前の妹も含まれることになる」

「……はい」

「だがもしお前が望むのであれば、その妹だけは生かしてやろうと思っている」

「……!」



 たとえ今は敵対関係にあっても、血の繋がった妹が死ぬのはとても悲痛なことだろう。そう思って僕は言った。そして僅かな沈黙の後、ユナは静かに口を開いた。



「ユート様の器量の深さ、尊崇いたします。ですがその必要はございません。今の私は赫々たるユート様にお仕えする四滅魔の一人。いつまでも姉妹の情に縛られるわけにはまいりません」

「……お前は以前、妹が自分の命を奪うつもりで挑んできたならば自分も覚悟を決める、と言ったな。その決意は今でも変わらないか?」

「はい」



 強く返事をするユナ。だが、僕は気付いてしまった。その瞳が悲しげに揺れていることに。



「……そうか。分かった」



 それ以上僕は何も言わなかった。

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