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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第1章 異世界転生
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第9話 自由

「きゃっ……!」

「おっと危ない」



 地震の揺れで倒れそうになったリナの身体を右手で支えた。



「ふっ、あの村もツイてないな。山賊の脅威から救われた矢先にこのような大地震に見舞われるとは」



 僕はワザとらしく言った。もっと強力な地震を起こそうと思えば起こせるが、あまりやりすぎると僕の功績を伝えるどころじゃなくなるからな。唯一の懸念はこの地震が僕の仕業だと気付かれることだけど、それは多分ない……と思いたい。



「あっ! すす、すみません、無断でご主人様の身体に触れてしまいました!」



 揺れが収まると同時にリナが慌てて僕から離れ、素早く土下座をした。突然のリナの行動に僕はギョッとする。



「殴っていただいて構いませんので、どうか怒りをお鎮めください!」

「……いや、触れたのは余の方からだし、触れるくらい何の問題もない。だから土下座などするな」



 前の家庭では触れることすら許されていなかったのか。にしても今の動き、どうやら奴隷としての振る舞いが染みついてしまっているようだ。


 僕はその場でしゃがみ、リナに目線を合わせる。



「余は前の主人とは違う。お前の望みを一番に優先させたいと思っている」

「私の……望み……?」

「ああ。お前はこれからどうしたい? 自由の身になりたいと言うのなら、余は喜んでお前を解放しよう」

「そう……言われましても……」



 困惑したようなリナの顔。きっと今まで自由というものを与えられたことがなかったので、逆にどうしたらいいのか分からないのだろう。


 僕は少しの間考えた後、静かに立ち上がった。



「よし、やはりお前の身は余が預かろう。お前がやりたいことを見つけるまで余が面倒を見てやる」

「……ありがとう、ございます」



 無機質な声で女の子は言った。とはいえ普通に人間の女の子を覇王城に連れ帰ったりしたら大変なことになってしまう。何か手を打たなければ。



「と、その前に……」



 僕は右手をリナにかざした。ビクッとリナの肩が揺れる。



「呪文【万能治癒】!」



 僕が呪文を唱えた途端、女の子の身体中の傷がみるみるうちに治っていった。



「えっ……!?」



 リナは目を丸くしながら、肩の部分を露出させる。当然そこにあった傷跡も綺麗サッパリなくなっていた。



「ど、どれだけ手を尽くしても治らなかった傷が、一瞬で……!?」

「この程度、余には朝飯前だ。お前も女の子なのだから身体は大事にしないとな」



 するとリナの目からポロポロと涙がこぼれ始めた。

「ありがとうございます、本当に嬉しいです。ありがとうございます……!!」



 それは先程の無機質な声と違い、心の底から嬉しそうな声だった。そんなリナの姿を見て、僕にも思わず笑みがこぼれた。



「わ、私はどうやってこの恩を返したらいいのでしょうか……!?」

「その必要はない。お前はただ喜んでいればそれでよい」



 さて、これからどうしよう。ひとまず【瞬間移動】で僕の寝室に連れ帰るとするか。そこなら悪魔達にもバレないだろうし。



「リナよ。どこでもいいから余の身体に触れるがいい」



 僕の【瞬間移動】は自分及び僕が触れたものに対してのみ有効だからな。



「そ、そんな、ご主人様の身体に触れるなんて、畏れ多くてできません……!!」

「…………」



 仕方なく僕はリナの肩にポンと手を乗せた。



「呪文【瞬間移動】!」




 僕は呪文を唱え、僕はリナと共に覇王城の僕の寝室に帰還した。困惑した様子でキョロキョロと周囲を見回すリナ。



「ここは一体……!?」

「余の寝室だ。余の呪文で一瞬でこの部屋に移動したのだ。驚かせてすまない」

「い、色々な呪文をお持ちなんですね……」

「まあな」



 そういえば大広間がどうなってるのか気になるな。なんせ僕の人形を身代わりにして勝手に外出しちゃったわけだし。アンリにバレてないといいんだけど……。とりあえず僕は【千里眼】で大広間の様子を見てみることにした。



「……は!?」



 その光景を見て思わず僕は声を上げた。大広間には城中の悪魔達が集結しており、その中心にいるアンリが天井から垂らされたロープの輪に今にも首をかけようとしていたのである。


 って何この自殺ショー!? なんでこんなことになってんの!? とにかく早く止めなければ!!



「リナよ、余はしばらくここを離れる! 余が戻ってくるまで絶対にこの部屋から出るんじゃないぞ! ダチョ○倶楽部的なアレじゃなく絶対に!」

「ダチョ○倶楽部……?」

「すまん、それは忘れてくれ。とにかくこの部屋からは絶対に出るなよ、よいな!?」

「……分かりました。ご主人様の命令とあらば必ず従います」



 そのご主人様という呼び方はやめてほしいんだけど、今は気にしてる場合じゃない。僕は【瞬間移動】を発動し、寝室から姿を消した。




「ユート様……無能な配下で申し訳ありませんでした……愛しています……」



 アンリが一筋の涙を流し、ロープの輪に首をかけた、その時――



「せいやあっ!!」



 瞬間移動によって大広間に現れた僕はすぐさま手刀でロープを千切り、落下するアンリの身体を受け止めて着地した。ぎ、ギリギリ間に合った……!!



「ユート様だ!!」

「ユート様がお帰りになられたぞ!!」



 同時に大広間に集まった悪魔達から歓声が湧き上がった。



「ユート様……戻ってきてくださったのですか……!?」



 アンリが頬を赤く染めて尋ねてくる。どうやら僕が城から抜け出したことはバレていたようだ。あんな子供騙しの策じゃやはり無理だったか……。



「それよりアンリ、何故このような真似をしている? 他の者もどうして見ているだけでアンリを止めようとしなかったのだ」

「も、申し訳ございません! 我々も思い留まっていただくよう何度も説得を試みたのですが、聞いてもらえず……!!」



 悪魔の一体がそう答えた。まあアンリは僕の次に地位が高いし、立場上無理には止められなかったのだろう。



「アンリ、説明してもらおうか」

「は、はい。ユート様が大広間からいなくなったことに気付いた私は、すぐに覇王軍を騒動員してユート様の捜索にあたらせました」



 そんな大事になってたの!?



「ですが、いくら捜してもユート様は見つからず……。そこで私は悟ったのです。ユート様は私に愛想を尽かし、この城から出て行かれたのだと」



 なんでそうなる!? 被害妄想にも程があるだろ!!



「ユート様を失った私には、もはや生きる価値などありません。だから命を絶つ決意をするに至ったのです」



 動機はともかく、自害を決断した原因は僕にあったというわけか……。



「……いつ余が大広間から姿を消したことに気付いた?」

「ユート様が人形と入れ替わっていることはすぐに気付きました。あの人形からはユート様のニオイがしませんでしたから」



 ニオイで分かっちゃうのかよ!! どうやら僕はアンリを甘く見すぎていたようだ。

誤字報告ありがとうございます。

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