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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第4章 邪竜の洞窟編
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第81話 サーシャの推測

 ユートとセレナが『天空の聖域』へ向かった頃、『邪竜の洞窟』にて。



「しっかりしろリナ! 大丈夫か!?」

「……うっ」



 自分を呼ぶ声でリナは意識を取り戻し、うっすらと目を開ける。そこにはサーシャの顔があった。



「サーシャさん……どうしてここに……? アジトに戻ったのでは……」

「【未来予知】でお前達が七星天使にやられる未来が視えて引き返してきたんだ。すまない、もう少し早く視えていれば……」

「……いえ、サーシャさんは何も悪くないです」



 リナはゆっくりと上体を起こす。



「動いて平気か? あまり無理はするな」

「私なら大丈夫です。それより、アスタさんとスーさんを……」

「二人なら意識こそないが命に別状はない。既に私が介抱した」

「……そうですか」



 地面に仰向けになっているアスタとスーを見て、リナは安堵の息をついた。

「……リナが七星天使から二人を守ってくれたんだな」

「えっと、守ったと言えるかどうかは分かりませんが……」



 するとサーシャはその場で土下座をした。



「ありがとう。お前がいなかったら今頃はアスタもスーも七星天使に魂を奪われていただろう。本当にありがとう……!!」

「い、いえそんな! 私だってドラゴンと遭遇して気を失っていた時お二人に守っていただきましたし、それに……」



 リナは俯き、服を握りしめる。



「相手は明らかに手加減をしていました。最初から本気を出されていたら、今頃は私も……」



 自分の無力さを噛みしめるようにリナは言った。



「はっ! それよりお兄様とセレナさんは!? 途中で二手に分かれたのですが……!!」

「ああ、これから様子を見に行こうと思っていたところだ。だがアスタ達をここに置いていくわけにはいかない。二人くらいならなんとか運べるか……?」

「スーさんは私が運びます。サーシャさんはアスタさんを」

「いいのか? お前は七星天使との戦いで怪我を負っているというのに……」

「怪我をしているのはサーシャさんも同じのはずです。私のことなら心配しないでください」

「……すまない。恩に着る」



 サーシャは【急成長】の呪文で大人の姿になってアスタを背負い、リナもスーを背負って歩き出す。少し前にドラゴン達が暴れたせいかモンスター達は遠くへ逃げており、リナ達の前に姿を現すこともなかった。



「お兄様とセレナさん、無事だといいんですけど……」

「ユートのことだ、たとえ相手が七星天使でも殺されるようなことはないだろう。セレナもユートが守ってくれたと信じよう」

「……はい」



 そして歩くこと数分、リナ達は洞窟奥の大空洞に到着した。



「これは……!!」



 壁や地面の大きな亀裂、あちこちに飛び散った血。生々しい戦闘の跡を見て、リナとサーシャは顔をしかめた。



「お、お兄様とセレナさんがどこにもいません!!」

「七星天使の姿も見当たらない……。ここに来るまで誰ともすれ違わなかったということは、転移系の呪文で離脱したのか……?」



 サーシャが【未来予知】で視たのはセレナがイエグにやられる場面だったので、その後どうなったのかまでは把握していなかった。


 するとサーシャは地面に散らばる鏡の破片に目が止まり、その内の一つを拾い上げた。



「それは……?」

「……おそらく『狂魔の手鏡』の破片だ」

「えっ!? そ、それじゃ……!!」

「ああ。ユート達が手に入れるより先に、七星天使によって破壊されたと見て間違いないだろう……」



 サーシャは唇を噛みしめる。『狂魔の手鏡』はサーシャ達にとって七星天使を抹殺する為の唯一の希望だったので、その悔しさは計り知れないものがあった。



「まさか、お兄様とセレナは、七星天使に魂を奪われて……!!」

「……ユートほどの男が七星天使に敗れたとは思えない。それに魂を奪われたのならユートとセレナの身体はここに残っているはずだ。わざわざ魂の抜けた身体を持ち帰る意味はないだろうしな」

「で、では、お兄様達はどこに――」



 その時リナは何かを思い出したような顔をした。



「どうしたリナ?」

「……セアルという人は、私と戦っている最中に『求めていた人材』『七星天使に引き込む』などと言っていました。その時はよく意味が分からなかったのですが、もしかしたらお兄様は……」



 サーシャはしばらく考え込む様子を見せた後、口を開けた。



「あくまで推測だが、セアルはユートの力に惚れて七星天使に引き込もうと考えた。そこでセアルはセレナを人質に取り、言うことを聞かざるを得ない状況にしてユートを『天空の聖域』に連れて行った……といったところか」

「そ、それではお兄様とセレナさんは、『天空の聖域』に……!?」

「その可能性は高いな」



 ユートが敢えてセアルの誘いに乗ったという点を除けば、サーシャの推測はほぼ当たっていた。



「……サーシャさん、お願いがあります。私にゲートの場所を教えてください」

「!」



 リナは真剣な眼差しをサーシャに向ける。



「『狂魔の手鏡』の入手に成功したらゲートと場所を教えるという交渉をお二人が結んでいたことは知っています。だけどサーシャさんの推測が本当だったら、誰かがお兄様達を助けに行かなければなりません。だから、どうか……!!」



 深く頭を下げるリナ。その言葉からはユートの力になりたいという想いが強く表れていた。



「……お前はアスタとスーの命の恩人だ。教えるのは構わないが、一人で『天空の聖域』に行くなど無謀にも程が――」

「うっ……」



 その時アスタに意識が戻り、両目が静かに開いた。直後にスーも意識を取り戻した。



「よかった、二人とも気が付いたか」

「……すまねえサーシャ。もう下ろしてくれて大丈夫だ」

「……私も。ありがとうリナ」



 アスタとスーは壁にもたれるように座り、サーシャから簡単に事情を説明された。



「ユートとセレナが『天空の聖域』に連れて行かれた……!?」

「あくまで推測の域だが、私はほぼ間違いないと思っている」

「くそっ。オレが不甲斐ないせいで……!!」

「……悪いのはアスタだけじゃない」



 アスタは地面を叩き、スーは拳を握りしめる。七星天使のセアルに為す術もなく敗れ、二人は己の弱さを痛感していた。

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