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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第4章 邪竜の洞窟編
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第75話 想定外の遭遇

 大空洞でセレナとイエグの戦闘が始まった頃。アスタとスーは途中で遭遇したディストレスドラゴンとの戦いを続けていた。



「くそっ。流石はレベル700オーバーのドラゴン、一筋縄じゃいかねーか……!!」



 アスタとスーは息を切らしながらディストレスドラゴンと向かい合っている。ドラゴンのHPは五分の一まで削ることができたものの、二人ともHPとMPはほとんど残っていなかった。



「おいスー、お前の【生類召喚】と【憑依】はあと何回ずつ使えそうか?」

「一回か二回。アスタの【電撃祭】はどれくらい保ちそう?」

「あと30秒ってところだ。せめて60秒ありゃな……」

「ユートの忠告通り、MPを温存しなかったからそんなことになる」

「う、うるせえ! 過ぎたことをゴチャゴチャ言ってもしょうがねーだろ!」



 ディストレスドラゴンの口から紫色のヘドロ爆弾がスーに向かって放たれる。スーは横に跳んでなんとかそれを避けた。



「それじゃどうする? 諦めて引き返す?」

「冗談じゃねえ! この先に『狂魔の手鏡』があるかもしれねーんだ、諦めてたまっかよ――っと危ねえ!」



 今度はアスタに向けてディストレスドラゴンのヘドロ爆弾が放たれる。同じくアスタも横に跳んでそれをかわした。



「あっ、やべえ!?」



 が、その時アスタは自分の後ろに気絶状態のリナがいたことを思い出した。このままではヘドロボムがリナに直撃することになる。



「おいリナちゃん目を覚ませ!! そして避けろ!!」



 助けが間に合わないと判断したアスタは大声で叫んだ。



「……はっ!?」



 その声で我に返ったのか、リナの目に色が戻った。そして自分に向かって何か紫色の物体が飛んできていることに気付く。



「ひゃあっ!?」



 リナは反射的に右腕を大きく振った。するとその風圧でヘドロボムの軌道が変わり、リナから少し離れた所で爆発した。



「じゅ、じゅ、呪文【災害光線ディザスター・キャノン】!!」



 左手を前に出し、呪文を唱えるリナ。すると手の平からビームが放たれた。この反撃はディストレスドラゴンも想定外だったのか、反応する間も与えずビームはドラゴンの脳天を貫いた。



 HP 0/89764



「ゴアアアアアッ……!!」



 断末魔の悲鳴を上げながら、ディストレスドラゴンは地面に倒れる。程なくしてドラゴンはアスタ達の視界から消滅した。



「あ、あれ? 私は一体何を……」



 ほとんど無意識でやったのか、リナは自分が何をしたのかよく分かっていない様子だった。そんなリナをスーとアスタは唖然とした顔で見つめる。



「……凄い。流石はユートの妹」

「ああ。つーかリナちゃん、呪文使えたんだな……」

「あっ、えっと、はい! い、今まで黙っていてすみませんでした!」



 慌ててリナは頭を下げる。



「いやまあ、別に謝る必要はないんだけどよ。でもビックリしたぜ、まさかビーム一発でドラゴンの残りのHPを全部吹き飛ばしちまうとはな」

「とにかくリナのおかげで助かった。ありがとう」

「い、いえ! 私こそ気を失っていたようで、御迷惑をおかけしました」



 二人との会話で、リナは自分が何をしたのか少しずつ理解してきた。



「これが……お兄様が与えてくださった力……」



 自分の左手を見つめながら、リナは小さく呟いた。



「っと、今は呑気に話してる場合じゃねえ。行くぜ二人とも!」




 ディストレスドラゴンを撃破したアスタ達は洞窟の先へと駆けていく。そして走ること約三分。



「どうやらもうこっちの道にドラゴンはいねーみたいだな」

「うん。だけどそれはセレナ達が進んだ道の方にドラゴンが二体いることを意味してる」

「だな。まあユートなら二体のドラゴンが相手でも心配いらねえ気が――」

「っ!! アスタ、リナ、止まって!!」



 突然スーが足を止めて大声を出し、アスタとリナは急ブレーキをかけた。



「びっくりしたじゃねーか。どうしたスー?」

「……誰か来る」

「何?」



 前方に注目する三人。やがて暗闇の中から一人の女が姿を現し、静かに歩いてくるのが見えた。



「ほう、これは驚いた。まさかこんな所で人間に出会うとはな」



 その背中に生えた白い翼を見て、アスタ達は驚愕の表情を浮かべた。



「テメエ……七星天使か……!?」

「いかにも。ワシは七星天使のリーダー、セアルじゃ」



 更なる衝撃がアスタ達を襲った。天使の頂点に君臨する存在、七星天使。それを統べる女が今、アスタ達の目の前に立っていた。



「入口には障壁を張っておいたはずじゃが、どうやって入った? お前達の中に呪文を解除できる者がいるのか?」



 洞窟の入口に障壁を張ったのはこいつの仕業だったのかと、アスタ達は理解した。



「……まあいい。それよりお前達、どこかでイエグという女を見かけなかったか?」

「イエグ……? まさかそいつも――」

「ああ、七星天使じゃ。髪は金色、全身に宝石を身に付け、『美しい』が口癖の女じゃ。この洞窟内で合流する予定だったのじゃが、なかなか見つからなくてな」



 アスタ達は絶句する。洞窟内に七星天使がいることは想定していたものの、それが二人もいるとは誰も思っていなかったからだ。



「ま、見ていないのなら仕方ない。ところでお前達が障壁を割ってまでこの洞窟に入ってきた目的はなんじゃ?」

「……そんなの決まってんだろ。『狂魔の手鏡』を手に入れて、お前ら七星天使をブッ倒す為だよ」



 セアルを鋭く睨みつけながらアスタは言った。



「なるほど。その怒りに満ちた目を見る限り、ワシらへの復讐が目的といったところか。しかしワシらが人間に恨みを買われて当然の所業に手を染めているのは紛れもない事実。その意志を咎めるつもりはない」

「よく分かってんじゃねーか。で、七星天使が何故こんな所にいやがる。テメーも『狂魔の手鏡』が狙いか?」

「その通り。あの鏡が人間や悪魔の手に渡れば厄介なことになるからな。そうなる前にワシらの手で破壊する必要がある」



 そう言って、セアルは小さな溜息をつく。



「が、残念ながらこっちの道はハズレのようじゃ。この先は行き止まりで何もなかったからな。だからこうしてやむを得ず引き返してきたところじゃ。おそらく『狂魔の手鏡』はもう一方の道を進んだ先にある」



 つまり『狂魔の手鏡』はユートとセレナが進んだ道の方にある。アスタ達はそう確信した。



「しかしこちらの道でイエグと会わなかったということは、イエグはもう一つの道の方に行ってくれたようじゃな。そろそろ『狂魔の手鏡』の破壊が完了したとの報告が入ってくるはずじゃ」

「……どうかな。そっちの道にもオレ達の仲間が行っている。そう簡単にはいかないだろうぜ」

「ほう。随分と信頼しているのだな、自分の仲間を」



 それからセアルはアスタ達の後方に視線を移した。



「そういえば、この道の途中にいたドラゴンの気配が消えておるな。私が遭遇した時は戦うのが億劫だったから〝威嚇〟で黙らせて素通りしてきたが、どうやらあのドラゴンはお前達が倒したようじゃな。人間にしてはやるではないか」



 アスタ達は戦慄を覚える。レベル741のドラゴンを威嚇一つで黙らせたのか、と。



「さて。先程貴様は『七星天使をブッ倒す』と宣言したな。ならばどうする? 今ここでワシと戦うか?」

「……当然だろ。テメーら七星天使には計り知れねーほどの恨みがある。テメーはこの場でオレが殺してやる……!!」



 憎悪を滲ませた声でアスタは言った。

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