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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第4章 邪竜の洞窟編
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第71話 分かれ道

 その後も何体かモンスターが襲ってきたが、その度に僕はワンパンで倒した。中にはレベル400近いモンスターも出現したが、特に苦戦することもなかった。



「ユートばっかりずりーぞオイ! これじゃオレらがいる意味ねーじゃねーか!」



 不満をぶちまけるアスタ。確かに今のところ僕以外戦ってないな。



「さっきも言ったけど、アスタ達はMPを温存しておくに越したことはないだろ。この先何が起きるか分からないわけだし」

「限度があるだろ限度が! いい加減オレにもやらせろ!」



 思わず僕の口から溜息が出る。



「分かったよ。少し休みたいと思ってたところだし、しばらくはアスタに任せる」

「へへっ、そうこなくっちゃな!」



 僕は先頭をアスタに譲る。直後、レベル76のモンスターが僕達の前に現れた。

「早速きやがったな! 悪いがテメーにはオレ様が輝く為の生贄になってもらうぜ! 呪文【電撃祭】!!」



 アスタは電撃を身に纏い、すかさず〝雷撃弾〟を放つ。それは見事モンスターに直撃し、HPが0になって消滅した。



「どうだ見たか! オレも一発KOにしてやったぜ! さあレディ達よ、オレの勇姿に黄色い歓声を上げるがいい!! そして惚れるがいい!!」

「ねえ見て、こんな所に花が咲いてる」

「ホントだ。こんな真っ暗な洞窟で花が咲くなんて不思議なものね」

「綺麗ですね……」



 戦隊ヒーローのようなポーズを決めるアスタだが、三人ともアスタの方を見ていなかった。今にも泣き出しそうなアスタの肩に、僕はポンと手を乗せる。



「気を落とすなよ。僕はちゃんと見てたから」

「オメーじゃ意味ねーんだよ!!」




 洞窟に入って約一時間が経過した。未だに『狂魔の手鏡』は発見できておらず、洞窟にも終わりが見えない。



「リナ、疲れてないか?」

「あっ、はい! 私なら大丈夫です!」



 一瞬無理してそう言ってるんじゃないかと思ったけど、リナの様子を見るに本当に大丈夫そうだった。リナって意外とタフなんだな。


 それにしてもこの洞窟、一体どこまで続いているのやら。ゴールの見えない道を歩き続けるのは精神的にキツいが、唯一の救いは単純な一本道であることだ。これなら道に迷うこともないし――


 と思った矢先に、前方の道が二つに分かれていることに気付いた。僕達は分かれ道の手前で足を止める。



「一旦ここで休憩しようぜ。ここまでずっと歩きっぱなしだったからな」



 アスタの提案に全員が頷いた。本当は一刻も早く『狂魔の手鏡』の封印場所まで辿り着きたいところだが、この先の戦闘に備えて身体を休めることも必要だろう。僕は鞄から水筒を取り出して口に含んだ。



「それでこの先どうする? 皆でどっちかの道を進むか、それともここで二手に分かれるか。アタシは二手に分かれた方がいいと思うけど」

「オレも賛成だ。全員で一つの道を進んでそっちに『狂魔の手鏡』がなかったらまたここまで戻んなきゃならねえ。そうなったら二度手間だ」

「……いや、僕は皆でどちらかの道を進む方がいいと思う」



 僕はセレナとアスタの意見に異議を唱えた。



「なんでだ? オレ達以外にも『狂魔の手鏡』を狙ってる奴がいるかもしれねーんだし、二手に分かれた方が効率的だろ」

「それはそうだけど……」



 僕が気掛かりなのは、この洞窟にいるのが七星天使だった場合だ。二手に分かれてしまえば一方のメンバーを僕が守れなくなってしまう。僕が進んだ道に七星天使が現れるのはいいが、もう一方の道に七星天使が現れたら……。



「それでどう分かれる? 五人だから二人と三人に分かれるのは確定だよな」

「無難に男と女でいいじゃない」

「いやいや女の子だけとか危険すぎんだろ!」

「大丈夫よ、女は三人いるんだし」



 僕が考え事をしている内に、アスタ達は二手に分かれる方向で話を進めていく。



「待って。こんな時はこれの出番」



 するとスーがどこからともなく五本の割り箸を取り出した。



「先が赤色の割り箸が三本、青色の割り箸が二本ある。赤を引いた人は左の道、青を引いた人は右の道ってことで」

「……スー、そんなの持ってきてたの?」



 スーが五本の割り箸を右手に握り、そこからセレナとアスタが一本ずつ引く。



「ほら、ユートとリナも早く引けよ」

「……ああ」

「は、はいっ」



 僕は仕方なく割り箸を引いた。くじ引きの結果、リナ、アスタ、スーが赤色を、僕とセレナが青色を引いた。



「決まりだな。そんじゃオレとスーとリナちゃんが左の道、セレナとユートが右の道ってことで――」

「待って!! どうしてアタシがこの変態と一緒にならないといけないのよ!!」



 セレナが僕を指差しながら抗議する。予想通りの拒絶反応である。



「んなこと言っても、決まっちまったもんはしょうがねーだろ」

「こ、こいつはアタシのむ、胸を二回も触ったのよ!? 二人っきりになったら何をされるか分かったもんじゃないわ!!」

「落ち着けってセレナ。いくらユートでもこんな時にそういうことはしねーだろ」



 おい、その言い方だといつも僕がそういうことをしてるように聞こえるんだけど。



「いいえするわ!! 暗闇に乗じて絶対変なことをしてくるに決まってる!! こんな変態と一緒なんて死んでもゴメンよ!!」

「……僕も反対だ」



 僕がそう言うと、セレナがキッと僕の方を睨みつけてきた。



「な、何よアンタ! アタシと一緒になるのは嫌だって言いたいの!?」

「そうじゃなくて……。つーかセレナは僕と一緒になりたくないんじゃないのか?」

「そ、そうだけど、アンタの方から嫌って言われるとなんかムカつくの!」



 なんだそりゃ。女心はよく分からないな。



「僕が反対と言ったのは、二手に分かれること自体についてだ。やっぱり全員で一つの道を進む方がいいと思う。なんせこの洞窟には――」

「七星天使がいるかもしれない、か?」



 アスタが割り込むような形で言った。



「……ああ。二手に分かれたら僕が一方を助けることができなくなる。アスタ達が七星天使と遭遇したらどうする?」

「悪いがユート、オレはお前に助けてもらおうだなんて思ってねえ。オレが七星天使に何をされたのか昨日話しただろ?」

「!」



 アスタは親友の魂を七星天使に奪われ、その復讐の為にサーシャの仲間になったと言っていた。



「オレは必ず七星天使の奴らに復讐する。七星天使と遭遇するのはむしろ好都合、いくら強かろうが迷わず戦うぜ。たとえその時『狂魔の手鏡』がなかったとしてもだ」

「……分かった」



 僕は観念してそう言った。おそらく僕が何を言ってもアスタは自分の意志を貫こうとするだろう。それにまだ七星天使がいると決まったわけじゃない……。

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