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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第4章 邪竜の洞窟編
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第70話 初のモンスター戦

「おそらくこの障壁が張られてからそれほど時間は経過していない。まさか七星天使に先を越されたか……!?」



 サーシャの推測が場の空気を更に緊迫したものにする。しばしの沈黙の後、アスタが口を開けた。



「考えすぎじゃねえかサーシャ? まだ七星天使の仕業と決まったわけじゃねえ。俺達のように『狂魔の手鏡』を使って七星天使をブッ倒そうとしてる奴かもしれねえ」

「アタシもアスタの意見に賛成ね。こんなタイミングで七星天使が出てくるなんで、偶然にも程があるわ」

「だといいが……」



 アスタとセレナはそう言ったものの、僕はサーシャと同じく嫌な予感を抱えていた。もし本当に七星天使がこの洞窟に入ったとしたら、狙いは確実に『狂魔の手鏡』を破壊することだろう。



「……どちらにせよ障壁が張られたままということは、そいつはまだ洞窟内にいることになる。【瞬間移動】を使える奴でもない限りはな」

「で、でも、この障壁があったら私達は洞窟に入れないのでは?」

「心配するなリナ。この程度の障壁なら……」



 そう言いながらサーシャは右手を前にかざした。



「呪文【解呪】!」



 直後、ガラスの割れるような音が響く。障壁を張っていた呪文が解除されたようだ。



「おっ、流石はサーシャだな」

「それとお前達にこれを。呪文【蛍光】!」



 続けて呪文を唱えるサーシャ。すると僕達それぞれの目の前に、ピンポン球くらいの丸い光がポンと出現した。サイズは小さいが割りと明るい。



「これで真っ暗な洞窟も歩けるだろう。ただしこの【蛍光】はお前達のMPを少しずつ消費することで光を放つ呪文なのでMPの残量には注意してほしい。両手で包み込めば光は消えるから、いざという時はそうしてくれ」

「ありがとうサーシャ。助かるわ」



 僕ほどではないにしろ、本当にサーシャって呪文が多彩だな。



「ところでサーシャ。もしアスタ達の言うように『狂魔の手鏡』を狙っている人がいて、その人と洞窟内で遭遇した時はどうしたらいい?」



 スーの質問に、サーシャは腕を組んで考え込む様子を見せる。



「協力できそうな相手なら協力し、そうでないのならその者よりも早く『狂魔の手鏡』を手に入れるしかないだろう」

「もし既に『狂魔の手鏡』を取られていたら?」

「……その時は力ずくで奪うしかないな。ただしくれぐれも殺すような真似はするんじゃないぞ」

「うん、分かってる」



 同じくセレナ達も頷く。一方サーシャは依然として険しい表情を浮かべていた。



「問題なのは、洞窟にいるのが七星天使だった場合だ。もしお前達が七星天使と戦うことになったら……」

「心配すんなって。オレ達は五人もいるんだ、仮に七星天使の一人と戦闘になっても何とかなるだろ」

「そうよ。アタシ達を信じてサーシャ」

「……もちろん信じている。だが相手は単独とは限らない。決して油断はするな」



 それからサーシャは僕に目配せをした。いくらセレナ達が強かろうと、七星天使に届くことはない。サーシャもそれを理解しているのだろう。その時は僕がセレナ達を守るしかない。



「それよりサーシャはそろそろアジトに戻った方がいいんじゃない? 子供達が起き出す時間に間に合わなくなっちゃうし」

「……そうだな。他力本願になって申し訳ないが、後のことは頼んだぞ」

「任せとけ! 必ず『狂魔の手鏡』を持ち帰ってやるぜ!」



 こうして僕、リナ、セレナ、アスタ、スーの五人はサーシャに見送られながら『邪竜の洞窟』の中へと入っていった。




 洞窟に入って十分が経過した。洞窟の幅は広くなったり狭くなったりと規則性がなく、地面も整備されていない山道のように不安定なので、僕達は慎重に歩ることを余儀なくされた。明らかに人工的に作られた洞窟じゃないな。



「皆前を見て!!」



 セレナの声で前方に注目すると、何やら巨大な紫色の蛇が凄いスピードで近付いてくるのが分かった。



 ポイズンスネーク Lv103


 HP3658/3658

 MP2789/2789

 ATK86

 DFE49

 AGL105

 HIT77



 すると蛇の頭上にこのようなステータスが表示された。なるほど、悪魔や天使と違って野生のモンスターは一定の距離になるとステータスが勝手に見えるようになるのか。


 思えばこの世界に転生してガチのモンスターに遭遇するのはこれが初だな。数日前までアンリ達とトランプやジェ○ガで遊んでばかりで、ほとんど覇王城から出る機会はなかったわけだし当然か。



「い、いきなりレベル100超え!? どうなってんのよこの洞窟!!」



 程なくしてポイズンスネークは僕達の前で止まり、獲物を狙うような目で睨んでくる。どうやらこちらの様子を窺っているようだ。



「皆下がってろ! こいつがオレがやる! 呪文【電撃――」

「待てアスタ。ここは僕に任せろ」



 呪文を発動しようとしたアスタを僕が制止する。



「ああっ!? さてはユート、女の子達の前で格好良いとこ見せようって腹だな!? そうはさせねーぞ!」

「それはお前だろ。一緒にするな」

「はあっ!? お、オレは別にそんなつもり全くねーし!!」



 やっぱり図星かよ。



「この洞窟にはあの蛇以上に強いモンスターがゴロゴロいるだろうし、アスタ達はMPを温存しておく必要があるだろ。僕なら呪文は使わないし、MPも関係ないからな」

「そ、そりゃそうだけどよ……」



 アスタも納得したようなので、僕は皆の前に出て拳を握りしめる。直後、ポイズンスネークが僕を喰らおうと大きく口を開いた。まったく、蛇如きが覇王である僕を喰らおうなど、身の程を弁えてほしいものだ。



「〝破滅一撃ディストラクション・ブロー〟!!」



 僕は瞬時にポイズンスネークとの距離を詰め、拳を叩き込んだ。



 HP0/3658



「グギャアアアアアアアアアア……!!」



 悲痛な叫び声が洞窟内に響き渡る。間もなくポイズンスネークは地面に倒れ、その身体は塵となって消滅した。やっぱりゲームとかと違ってモンスターを倒してもお金やアイテムが出てきたりはしないか。



「れ、レベル103のモンスターをワンパンKOかよ……」



 後ろを振り向くと、皆が唖然とした顔で僕を見ていた。どうやら今のはアスタ達からすると驚愕に値することだったようだ。



「セレナ、今のユートを見てカッコイイって思ったでしょ」

「ば、馬鹿なこと言わないでスー!! これくらい全然大したことないわ!! 100点満点中の5点っていったところね!!」



 低っ!? 前回の評価よりも下がってるし!



「ところでユート、その〝破滅一撃〟ってオレとの勝負の時にも叫んでたが、気に入ったのか?」

「っ!? ど、どうでもいいだろそこは! ほら早く行くぞ!」



 僕は早足で前に進んでいく。実は結構気に入ってるなんて恥ずかしくて言えない……。

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