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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第4章 邪竜の洞窟編
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第69話 邪竜の洞窟

 再び場面は変わり、『七星の光城』にて。ラファエがミカの部屋に戻ると、そこにはベッドの上で半分だけ身体を起こしたミカの姿があった。



「ミカさん! 目が覚めたんですね!」



 ラファエは安堵した顔でミカのもとに駆け寄る。一方ミカは不思議そうに部屋の中を見回していた。



「私は人間領にいたはず……どうして自分の部屋に……」

「セアルさんが連れ帰ってきてくれたんです。さっきまで意識を失ってたんですよ? だけどガブリさんが回復呪文で治してくれたので、ひとまず大丈夫だと思います」

「……そう。迷惑かけたみたいでごめん」

「気にしないでください。それより体調を崩した原因に何か心当たりはありますか? セアルさん、凄く心配してましたよ」

「……特にない」



 そう言いながら、ミカはベッドから出ようとする。



「あっ、何か欲しい物があるなら僕に言ってくれれば持ってきますよ。やっぱりお菓子ですか?」

「人間領に……戻らないと……」

「えっ!? な、何を言ってるんですか! まだ安静にしてないと!」

「大丈夫……もう平気……。っ!」



 目眩がしたのか、ミカは頭に手を当てる。



「どこが平気なんですか! それにセアルさんはミカさんへの【能力共有】を解除したのでもう【魂吸収】は使えません! 人間領に行っても無意味です!」

「……関係ない。そもそも私の本当の目的は人間の魂を集めることじゃない」

「じゃ、じゃあどうして!?」

「……お姉ちゃんを、殺す為」



 両手で布団をギュッと握りしめながら、ミカは言った。



「地上で何か大きな事件を起こせば、お姉ちゃんが私の存在に気付いて来てくれると思ったから。その手段として人間の魂を狩っていたってだけ」

「そ、その為に、人々の魂を……!?」



 ミカはユナが覇王に仕える四滅魔の一人になったという事実を知らないので、ユナの居場所の手掛かりを何も持っていなかった。



「私の中にあるのはお姉ちゃんを殺すという意志だけ。人間の魂を集められくなったのなら、何か別の事件を起こしてお姉ちゃんの気を引きつける。だからどいてラファエ」

「…………」

「ラファエ?」

「……ごめんなさいミカさん。呪文【睡魔の囁き】!」



 ラファエの両目が紫色に光る。間もなくミカは眠りに落ち、ガクッと頭を垂れた。ラファエはミカをベッドに寝かせ、そっと布団をかける。



「こんな方法しか思いつきませんでした。許してください……」



 ミカの寝顔を見ながら、ラファエは申し訳なさそうに呟いた。



  ☆



 日付が変わり、不気味なほどに静まり返った深夜。いよいよ僕達が『狂魔の手鏡』が封印されているという『邪竜の洞窟』に向けて出発する時が来た。サーシャ、セレナ、アスタ、スー、リナ、そして僕の六人はアジトの外に集まっていた。



「しっかり眠れたかユート?」

「ん……まあまあかな」



 両腕を軽く前に伸ばしながらアスタに返事をする。アジトの部屋に戻ってベッドに横になったらなんとか眠ることはできた。と言っても二時間ちょっとくらいだけど。でも身体の調子は悪くないし、作戦に支障をきたすことはないだろう。


 洞窟にはレベル700を超えるドラゴンが三体棲息しているとサーシャが言ってたし、おそらく戦闘は免れない。気を引き締めて挑まなければ。



「じゃんけんぽん。あっち向いてホイ」

「あっ!? ま、また負けちゃいました……」



 一方リナは何故かスーとあっち向いてホイをして遊んでいた。おそらくスーから誘われて仕方なくやることになったと思われる。今しなくてもいいだろと思ったが、緊張を解すという意味では効果的だろう。



「!」



 すると不意にセレナと目が合った。が、すぐにプイッと逸らされてしまう。やっぱりまだ嫌われてるな……。


 だけどこれから『狂魔の手鏡』の入手に向けて力を合わせないといけないわけだし、こんな状態では駄目だ。そう思った僕は、勇気を出してセレナに声をかけることにした。



「や、やあセレナ。体調の方はどうだ?」

「はい、アタシに話しかけたから『タンスの角に小指を百回ぶつける刑』ね。昨日言ったでしょ?」

「えっ、それまだ続いてんの!?」

「当然よ。ま、いきなり百回はキツいだろうから今日のところは特別に八十回で許してあげるわ」

「回数の問題じゃなくて! つーか昨日廊下ですれ違った時は普通に話してたよな!?」

「そ、それとこれとは話が別よ!! とにかく今すぐタンスを持ってきて八十回小指をぶつけなさい!! さあ早く!!」

「お、横暴だ……」



 そんな僕とセレナを見かねたのか、サーシャが一回大きく咳払いをした。



「はいそこ、痴話喧嘩はそれくらいにしておけ。そろそろ出発するぞ」

「これのどこが痴話喧嘩よ!!」



 結局セレナとはギクシャクしたまま、僕達六人は『邪竜の洞窟』に向けて歩き出した。これからドラゴンと戦うことになるかもしれないのに、果たしてこんな雰囲気で大丈夫なんだろうか。何とかなることを祈るばかりだ。




 夜空に浮かぶ星々の光を頼りに歩くこと、約三時間。途中でアクシデントに見舞われることもなく、僕達は無事に洞窟の前に到着した。



「ここが『邪竜の洞窟』か……」



 その洞窟を見て僕は呟いた。入口は思ったより狭く、幅は五メートルもないだろう。この洞窟のどこかに『狂魔の手鏡』が封印されているというわけか。



「本当は私の【千里眼】で予め封印場所を把握した上で臨んでもらいたかったが、洞窟内は非常に暗く【千里眼】では何も見えない。よってお前達には手掛かりのない状態で洞窟に入ってもらうことになる」

「問題ねーよ! そんじゃ早速突入しようぜ!」

「待てアスタ、話はまだ終わって――」



 しかしサーシャの声は届かず、アスタは洞窟の入口に向かって突っ走る。



「んぎゃっ!?」



 が、何故かアスタは入口の手前で後方に大きく吹っ飛ばされてしまった。僕はすぐにアスタのもとに駆け寄った。



「痛ってえ! 一体どうなってやがる!?」

「どうしたアスタ? 何をされたんだ?」

「こっちが聞きてーよ! 何か知らねーけど弾き飛ばされたんだよ!」

「えっ……?」



 するとサーシャが洞窟の入口まで歩き、そっと手を伸ばした。やがて何かに気付いたらしく、サーシャは大きく目を見開いた。



「これは……!!」

「サーシャ、何か分かったの?」



 セレナの問いに、サーシャは静かに頷く。



「何らかの呪文によって洞窟の入口に見えない障壁が張られている。アスタはその障壁に弾かれたようだ」

「見えない障壁……?」

「しかもこの障壁は外側からではなく内側から張られている。つまり先に洞窟に入った者がいることになる」

「!!」



 僕達の間に衝撃が走った。

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