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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第64話 第三の四滅魔

 姿を現したのは、紫色の長髪にスラリと背が高い、凛とした顔立ちの女の子。彼女がユナか。いかにも真面目そうな子で、もし彼女が高校生だったら生徒会長でもやってそうな雰囲気を醸し出している。


 しかしこの子も可愛いな。アンリといいペータといい、滅魔の容姿レベルの高さには驚かざるを得ない。



「あぐっ!?」



 なんて思っていた矢先、彼女は扉の段差の部分で躓き、盛大に転けてしまった。しばらく呆然となる僕。なんか外見の印象と違う?



「……ユナはああ見えてかなりのドジッ子です」



 アンリが呆れ顔で言った。意外だ、全然そうは見えないのに。やはり何でも外見で判断するのはダメだな。



「失礼しました、覇王様……」



 ユナが鼻を手で押さえながら立ち上がる。



「派手に転けたようだが、大丈夫か?」

「……お言葉ですが、今のは転けたわけではありません」



 いや転けたよね? 思いっきり「あぐっ!?」って声出てたよね?



「四滅魔の一体である私が、覇王様の御前でそのような醜態を晒すことなどあってはなりません。今のは大広間の床の強度を確かめるべく、敢えて顔をぶつけてみただけのことでございます」



 めっちゃ苦しい言い訳してきた!



「見苦しい言い訳をするなユナ。ユート様の荘厳な存在感に圧倒され、つい足下が狂ってしまったと正直に言ったらどうだ」



 それも違うと思うよ!?



「……久し振りねアンリ。相変わらず元気そうでなによりだわ」

「お前もな。それよりユナ、まずはユート様にご挨拶しないと失礼だろう」

「! 申し訳ございません、覇王様」



 ユナはアンリと軽く言葉を交わした後、僕のもとまで歩いてきた。



「お初にお目にかかります。四滅魔の一体、ユナです。私が想像していた通り、いえそれ以上の高尚なお姿に感服いたしました」



 僕の目の前で膝をつくユナ。他の悪魔達と同じく僕の評価が無駄に高い。だけど例によって僕のことは覇王様呼びだし、まずはそこを直してもらおう。



「ユナよ。悪いが余のことは覇王ではなくユートと――」

「分かっております。今後は〝神〟とお呼びすればよろしいのですね?」



 全然分かってない!



「冗談はよせユナ。ユート様は神をも超越したお方であるぞ。神などという不相応な名で呼ぶことはユート様への侮辱に他ならない」

「確かに、アンリの言うとおりね」



 僕のハードルがどんどん上がっていく。



「……とにかく、余のことはユートと呼べばよい」

「かしこまりました、ユート様」



 うーん、ほんの数時間前までアスタ達から普通の人間として扱われてたから、様を付けられることにも違和感を覚えてしまう。僕としては呼び捨てでも全然構わないんだけど、ここでの僕は覇王だからそういうわけにはいかないだろう。



「それよりユナ、予定ではもっと早くこの大広間に来るはずだっただろう。一体どこで油を売っていたんだ」

「……覇王城に敵が紛れ込んでないか巡回していただけよ。決して迷子になっていたわけじゃないわ」

「はぁ、また城内で迷子になったのか。ボケた老人じゃあるまいし、いい加減大広間の場所くらい覚えろ」

「ま、迷子じゃないって言ってるでしょ!? だいたいこの城って迷路みたいになってて訳分かんないし……!!」

「見苦しい言い訳をするなと言っているだろう。それもユナの悪い癖だ」

「…………」



 ユナは顔を赤くし、無言で俯いた。だいぶ二人の関係性が分かってきた気がする。



「それはそうと、任務終えて帰還したということは『ヒュトルの爪』はちゃんと手に入れたのだろうな?」

「愚問ねアンリ。当然じゃない」



 前にもアンリが話していたが、改めて僕から説明しよう。


 アンリを除く三人の滅魔は、僕が覇王として転生する前から『闇黒狭霧』の生成に必要な四つの材料を集める為に覇王城を出ていた。その中の一つが『ヒュトルの爪』である。先日ペータが『ガンドルの牙』を持ち帰ったので、これで材料は二つ目となる。


 この『闇黒狭霧』は人間の死体を半悪魔に変えるという怖ろしいものであり、僕が人間を滅ぼした後これを利用して世界を支配する、というのがアンリ達の計画である。しかし当然ながら僕に人間を滅ぼす気なんてない。


 だが四つの材料が全部揃って闇黒狭霧が完成したら、嫌でも僕が人間を滅ぼす流れになるだろう。だから絶対に揃わないでくださいお願いします、というのが僕の本音だ。その前に何としても悪魔と人間が共存できる世界を築き上げなければ。



「ユート様、『ヒュトルの爪』でございます。どうぞお納めくださ――え?」



 するとポケットに手を入れたユナの顔が、みるみるうちに青ざめていくのが分かった。



「ない、ないわ!! 『ヒュトル爪』がない!!」

「……ユナ、まさかとは思うけど帰還の途中で落としたりは――」

「そ、そんなはずないでしょ!? 身体のどこかに絶対あるわ!! 申し訳ございませんユート様、少々お待ちください!!」

「っ!?」



 突然ユナが服を脱ぎだしたので僕は思わず噴き出しそうになった。いくら何でも動揺しすぎだろう。



「ユナよ、慌てる必要はない。落ち着いて探すのだ」



 という僕の声も届かず、とうとうユナは全裸にまでなってしまった。反射的に顔を逸らした僕だが、目だけはどうしても向いてしまう。可愛くてスタイルの良い女の子の裸なんだからしょうがない。


 それにしても今日は女の子の裸を目にする機会が多くて理性を抑えるのに苦労してしまう。多分一生忘れられない日になっただろう。



「あっ、あったわ!! よかった……!!」



 服のどこかに挟まっていたのか、ユナは深く安堵の息を洩らした。僕としてはなくしてくれていた方が好都合だったので少しガッカリしてしまう。



「ユート様、こちらが『ヒュトルの爪』でございます」

「……うむ」



 ユナから五センチほどの銀色の爪を受け取る。これが『ヒュトルの爪』か。こっそり捨てたりしちゃダメかなあ。



「それよりユナよ。早く服を着たらどうだ……?」

「……ハッ!? ももも、申し訳ございません!!」



 ようやく我に返ったのか、ユナは顔を真っ赤にして服を着始めた。本当にドジッ子なんだな。



「まったくユナは。ま、ユート様の前で服を脱ぎたくなる気持ちは分かるけど」



 アンリの場合は違う意味だよね?



「とりあえず、任務ご苦労だったなユナ。これからよろしく頼む」



 僕はユナに右手を差し出す。しかしユナは一瞬右手を出そうとしたものの、すぐに何かを思い出したような表情で手を引っ込め、どこか悲しげに俯いた。



「……申し訳ございませんが、そのお手を取ることはできません」

「えっ!?」



 ガーン!! という効果音が背後で響く。ショックのあまり思わず声を上げてしまった。僕そんなに手汗凄かった!?

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