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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第61話 情欲に完敗

「何してるのスー?」

「へっ!? いやこれは――」



 セレナの声に僕は反射的に振り返る。すると既に服や下着を全て脱ぎ終えた、生まれたままのセレナの姿が僕の目に飛び込んできた。



「……!!」



 豊かな胸の膨らみに、芸術的な身体のライン。思わず喉が鳴るような健康的な肉体を、セレナは惜しげもなく晒していた。この光景に僕は目が釘付けになり、言葉を失ってしまった。



「? どうしたの、急に固まっちゃって」

「……はっ!」



 我に返った僕はすぐにセレナから目を逸らす。バッチリ見てしまった。セレナの、裸を……!!



「な、何かで隠した方がいいと思う」

「今更何言ってんのよ、お風呂に入る時アタシはいつもこうじゃない。それよりスーこそ今日に限ってどうしてタオルを巻いてるの? いつもはスッポンポンなのに」

「きょ、今日はなんだか恥ずかしい気分だから」

「ふふっ、どんな気分よそれ。あら?」



 急にセレナが無言になったのでチラッと前を見てみると、セレナが不思議そうな顔で僕の胸を見つめていることに気付いた。



「ど、どうしたのセレナ?」

「……スーの胸って、そんなに大きかったっけ?」

「!!」



 しまった、ちょっと大きくしすぎたか!?



「わ、私もセレナに追いつこうと、色々と努力してるから。多分その成果が出たんだと思う」

「へー、スーでもそういうこと気にするのね。ま、アタシに追いつくにはまだまだ時間が掛かるでしょうけど!」



 セレナが得意気に胸を張り、二つの膨らみが大きく上下に揺れる。その威力に僕は思わず噴き出しそうになった。



「……んん?」



 次にセレナは僕の下半身に注目した。



「こ、今度はどうしたの?」

「……なんかタオルがちょっと浮いてない?」

「!!」



 ああっ、男の生理現象が!! 僕はすぐに両手でタオルを押さえ、セレナに背を向けた。これは自分の意志ではどうしようもない。



「……スー?」

「えっと、ちょっとタオルを浮かせる手品の練習をしてただけ!」

「このタイミングで!? まあいいけど……」



 僕の苦しい言い訳にもセレナは納得してくれたようだ。ここまで僕がスーじゃないことがバレてないのは奇跡と言っていいだろう。



「それよりほら、早く入りましょ」

「えっ、あっ……」



 僕はセレナに腕を引っ張られ、浴場まで連れて行かれた。幸いなことに僕とセレナ以外誰もいない。旅館にある温泉のように広くてなかなか立派な浴場だが、今はそんなことに感心する余裕はなかった。



「それじゃまずは身体を洗いっこね」

「えっ!?」



 そんな僕に追い打ちをかけるようにセレナが言った。セレナが全裸というだけでもヤバいのに、その上身体を洗い合うだと!? それはさすがに理性を保たせる自信がないので断るしかない。



「そ、そういうのは私、ちょっと苦手かも……」

「何言ってんのよ、毎日やってることじゃない。昨日はアタシから洗ってあげたから今日はスーが先ね」



 そう言いながらセレナは鏡の前に置いてあった桶にお尻を乗せた。いくら仲が良いからって年頃の女の子が毎日身体を洗い合ったりするか普通!?



「ほらスー、早くしてよ」

「……う、うん」



 セレナに促されるまま、僕はスポンジにボディシャンプーを垂らし、セレナの後ろに腰を下ろす。そして僕は心臓をバクバクさせながら、泡立てたスポンジでセレナの背中を洗い始めた。


 セレナのモデルのように綺麗な肌と、女の子特有の良い匂いが僕の煩悩を更に刺激してくる。やばい、なんだか頭がクラクラしてきた。



「スー、どうしてさっきから背中ばっかり洗ってるの? ちゃんと前の方も洗ってよ」

「えっ!? そ、それは……!!」



 だって前の方を洗うってことは、セレナのあんなところやこんなところに触れるってことじゃないか。そんなことしたら僕の理性もいよいよ限界を迎えてしまう。



「……やっぱり今日のスー、なんか変じゃない?」

「そ、そんなこと、ない」



 このままだと僕がスーじゃないことがバレる怖れがある。やはりやるしかないのか……!?


 そうだ、僕はもう引き返せないところまで来ている。ここまできたら最後まで隠し通すしかない。悪く思わないでくれセレナ!


 僕が意を決してセレナのお腹の方に手を伸ばそうとした、その時――



「!!」



 突然浴場のドアが開いた。そこに立っていたのはスー本人だった。セレナと同じく、生まれたままの姿で。まさかの事態に僕は一瞬硬直してしまった。



「あらスー。悪いけどアタシ先に入って――え?」



 ポカンとした顔のセレナ。それから僕とスーの顔を交互に見比べる。



「……私がもう一人?」



 スーは僕を見て不思議そうに首を傾げていた。するとセレナが勢いよく桶から立ち上がった。



「ちょ、ちょっとどういうこと!? なんでスーが二人――」

「呪文【瞬間移動】!!」



 僕は最後の手段である【瞬間移動】を使い、アジトの自分の部屋に緊急避難した。同時に【変身】が解除され、僕は覇王の姿に戻った。



「……余としたことが、情欲に負けてしまうとは」



 僕は頭を抱え、溜息をつく。なんだか今頃になって罪悪感が湧いてきた。だが僕も中身は健全な男子、一体誰が責められようか。そもそもお風呂に入ろうと誘ったのはセレナの方だし……いや、これはただの言い訳だな。


 覇王の姿の時はちゃんと自制できてたはずなのに、どうも人間に変身すると思春期男子の面が強く出てしまうようだ。だけどこういうことは二度としないようにしよう。


 僕は今一度【変身】で阿空悠人に姿を変え、部屋に置きっぱなしにしていた服に着替える。それから女湯の様子が気になったので、僕は部屋から出て一階に下りてみることにした。もちろん再度女湯に突入するつもりはなく、ただ入口付近を通ってみるだけだ。



「!」



 一階に下りて廊下を歩いていると、寝間着姿のセレナが血相を変えて走ってくるのが見えた。



「ユート!! どっかで怪しい男とすれ違わなかった!?」

「あ、怪しい男?」

「スーの偽者が現れたのよ!! しかもその姿を利用して女湯まで入ってきて……!!」



 セレナの目の前にいる、なんて言えないよな。するとセレナが疑いの目で僕を見ていることに気付いた。



「まさかアンタが犯人じゃないでしょうね? アンタも変態だし十分考えられるわ」



 誰が変態だとツッコもうとしたけど、今の僕に否定する権利はなかった。それに犯人は紛れもなく僕なんだし。



「ま、そんなわけないわよね。アンタは呪文を使えないってサーシャも言ってたし、アンタにそんな度胸があるとは思えないもん」

「あ、ああ……」



 なんか勝手に納得してくれた。僕は呪文を使えないという設定がこんなところで活きてくるとは。



「男に裸を見せたことなんて一度もなかったのに……しかもアタシの身体まで洗ったりして……絶対に許せない……!!」



 涙目で身体を震わせるセレナ。本当にごめんなさい。



「とにかく怪しい男を発見したらすぐアタシに報告して! 分かった!?」

「わ、分かった……」



 セレナは僕のもとから走り去っていく。僕はセレナの背中を見送りながら、深々と頭を下げたのであった。

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