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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第60話 セレナとお風呂!?

 スーの姿になった僕は、セレナのペンダントを持って部屋を出た。確かセレナの部屋は四階の一番奥って言ってたよな。



「!」



 四階に上がると、ちょうど廊下を歩くセレナの姿を発見した。やばい、なんだか緊張してきた。絶対に僕だとバレないようにしなければ。とにかくスーになりきるんだ!



「あら、スーじゃない。もう絵本の読み聞かせは終わったの?」



 セレナが僕の方に近付いてくる。よし、今のところバレてない。後は口調に気を付けるだけだ。スーの喋り方は淡々としていて、いかにも女の子って感じではなかったよな。あまり口調の真似には自信がないけど、やるしかない。



「こ、こんにちは、セレナ」

「こんにちは……って何で挨拶? ていうかスー、なんか声変じゃない?」

「!! そ、そう?」



 ちなみに【変身】は声帯も変えることができるので、一応スーの声が出るようにしたつもりだったが、どうやら少し本人のものと違ったようだ。



「ちょ、ちょっと発声練習してたら、喉を痛めちゃって。ゴホッ、ゲホッ」

「発声練習!? なんでそんなことしてたの!?」

「明日に向けて気合いを入れようと……。ゴホッ、ゴホッ」

「そ、そう。せっかく可愛い声してるんだから喉は大事にしなさいよ?」

「ありがとう。それよりセレナ、これ」



 僕はセレナに例のペンダントを差し出した。



「えっ!?」



 セレナはそれを見て声を上げた後、慌てた様子でポケットの中を確認する。どうやらペンダントを落としていたことに気付いたようだ。



「それ、どこに落ちてたの!?」

「階段の踊り場」

「全然気付かなかった……。きっとユートの嫌がらせね! さっきすれ違った時に隙を見てアタシのポケットからペンダントを抜き取ったに違いないわ!」

「そんなことするか!!」

「……え? 急にどうしたの?」

「あ、いや……」



 いかん、つい叫んでしまった。今の僕はスーであることを忘れるな。



「そ、それよりセレナ、ほら」

「うん。ありがとう」



 セレナはペンダントを受け取ると、とても愛おしそうに胸の前でそれを握りしめた。



「それ、大事な物なの?」

「……アタシの誕生日にお姉ちゃんがくれた、アタシの宝物なの」

「!」



 セレナのお姉さんは七星天使に魂を奪われたとサーシャが話していた。きっとお守りのようにいつも持ち歩いているのだろう。



「ていうか前にこのこと話さなかったっけ?」

「っ! ご、ごめん。すっかり忘れてた」

「ふふっ。スーって何でもすぐ忘れちゃうもんね」



 そう言って、セレナは目を細めてペンダントを見つめる。



「これをなくしちゃってたら、しばらく立ち直れなかったと思う……。だからスー、本当にありがとう」



 優しく微笑むセレナを見て、僕の心臓が大きく高鳴った。セレナは元々可愛いけど笑顔は更に可愛い。僕は主にセレナの怒った顔しか見たことがなかったからな。こんな可愛い笑顔を見せられるのならずっと笑顔でいてほしいものだ。



「それじゃセレナ、また後で」



 用も済んだし、自分の部屋に帰って阿空悠人の姿に戻ろう。そう思った矢先だった。



「待ってスー。これから一緒にお風呂に行かない?」

「……え?」



 セ、セレナと一緒に、お風呂……!?



「どうしたのよ、変な顔して。まだ入ってないでしょ?」

「う、うん。でも……」

「あっ、もしかしてまた自分の下着をどこにしまったか分からなくなったんでしょ。ほんとスーは忘れっぽいんだから」

「そうじゃなくて……」

「大丈夫、アタシも一緒に探してあげるわよ。ほら、部屋に行きましょ」



 セレナは僕の腕を掴んで歩き出す。


 これはマズいことになった。僕は本当はスーじゃないし、男の僕がセレナとお風呂に入るわけにはいかない。しかし中身が思春期男子の僕としては、当然セレナと一緒に入りたいという気持ちはある。どうする……!?


 こうして僕はセレナに連れられるまま、四階の奥から二番目の部屋に入った。ここがスーの部屋か。タンスの上やベッドにはぬいぐるみが置かれており、床は少し散らかっている。何の許可もなく女の子の部屋にいるので、なんだかとても申し訳ない気持ちになった。



「どうしたのよ、そんな所に突っ立って。スーも探したら?」

「いや、その……」



 タンスの引き出しを上から順番に開けていくセレナ。さすがに女の子のタンスの中を漁るわけにはいかない。



「あっ、下着発見。今日はこれでいいでしょ?」

「ぶほっ!?」



 セレナが白色のパンツを見せてきたので、僕は思わず噴き出してしまった。あ、あれが普段スーが穿いてる……!!



「? スー、さっきから様子が変じゃない?」

「そ、そんなこと、ない」



 僕は必死に動揺を隠して答えた。それからセレナはシャツや寝間着も見つけ出し、布に包んで僕に渡してくれた。僕をスーだと思い込んでるとはいえここまでしてくれるなんて、きっとセレナは根っからの世話好きなのだろう。



「それじゃ浴場に行きましょうか」



 セレナも自分の着替えを持ち、僕と一緒に一階の浴場へと向かう。って向かったらダメだろ。このままだと本当にセレナと風呂に入ることになってしまう……!!


 この状況から抜け出す方法はただ一つ。それは【瞬間移動】を使ってこの場から退散すること。他の呪文を使うと【変身】が解除されてしまうが、同時にセレナの前からはいなくなるので覇王の姿を見られる心配はない。


 セレナにとっては近くにいたはずのスーが突然姿を消すことになるので不自然極まりないだろうけど、もはやそんなことを言ってる場合ではない。今ならまだ間に合う、【瞬間移動】を使うんだ。さあ早く!!


 しかし結局【瞬間移動】を使うことはできず、僕とセレナは女湯の前に到着してしまった。やはり煩悩に抗うことはできなかったようだ。



「日が沈む前にお風呂に入るって、なんだか不思議な気分よね」

「う、うん……」



 脱衣所に入ると早速セレナが服を脱ぎ始めたので、僕は慌ててセレナに背を向けた。もうここまで来たら覚悟を決めるしかない。背後から聞こえる衣擦れの音に妄想を掻き立てられつつ、僕も服を脱ぐことにした。



「……あっ」



 とここで、僕は重大なことに気付いた。


 僕が【変身】によって変えたのは容姿や髪型、声帯だけで、胸以外の服に隠れた部分には手を加えていなかった。


 つまり――〝アレ〟は僕の下半身に付いたままなのである。


 僕の額から大量の汗が流れる。やばい、凄くやばい。〝コレ〟を見られたら一発で僕がスーじゃないことがバレてしまう。とにかく絶対に見られないようにしなければ。僕は服を全部脱いだ後、急いで下半身をタオルでぐるぐる巻きにした。

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