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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第57話 それぞれの復讐

「ユートとセレナがキスだとぉ!? なんでオレじゃなくてユートなんグハッ!!」

「何言ってんのサーシャ!? 笑えない冗談はやめて!!」



 セレナがアスタを突き飛ばし、サーシャに詰め寄る。



「冗談ではない。私が【未来予知】に関して嘘をつくことはない。こういうことは一度でも嘘をついたら信用されなくなってしまうからな」

「そんな……!! 絶対有り得えないわ!!」



 正直僕も信じられない。僕とセレナが、キス……!?



「おめでとうセレナ。私は応援してる」

「スーは黙って! 仮に百歩譲ってキ、キスするとしても、転んだりぶつかったりした拍子の事故とかそういうオチよね!?」

「いや、明らかに意図的なキスだった。セレナがユートに求める形でな」



 しかもセレナの方から!?



「わ、私が自ら望んでこいつとキスをするっていうの!?」

「そうだ。おそらくそう遠くない未来だな。つまりセレナ、お前は近い内にユートに惚れることになるわけだ」

「……!!」



 絶句するセレナ。こんなに僕のことを毛嫌いしているセレナが僕の事を好きになるなんて、とても信じられない。



「こんな……こんな……!!」



 セレナは身体を小刻みに震わせ、涙を浮かべた目で僕を睨みつける。



「こんな男を好きになるくらいなら……死んだ方がマシよー!!」



 そう言い放つと、セレナはもの凄い速さで食堂から飛び出していった。それを見てサーシャは溜息をつく。



「やはりこうなったか。だから話していいかどうか迷ったんだが」

「……この場を和ませる為の冗談、ではないんだよな?」

「さっきも言っただろう。私が【未来予知】に関して嘘をつくことはない」

「……その【未来予知】が外れることは?」

「ほぼないな。視たい未来を自分で選べない代わりに、的中率は驚きの99%だ」



 マジか。ということは本当に、僕はセレナとキスを……!?



「ううっ。お兄さんとセレナさんがそんなことになるなんて、私はどうしたら……」

「落ち着けリナ。まだそうと決まったわけじゃない」



 とは言ったものの、的中率99%ならもはや確実と言って差し支えないだろう。それにアスタも言ってたように、セレナは可愛いしスタイル抜群だし料理上手だし、僕への態度を除けば完璧な女の子だ。もしセレナが高校の生徒で、女子人気投票が行われたらブッチギリの一位になるだろう。


 そんなセレナに好意を抱かれるのは、僕としても悪い気はしない。というか普通に嬉しい。あのツンがデレに変わったセレナはさぞ可愛いことだろう――


 そこで僕はふと我に返り、疚しい考えを追い出すように首を振った。


 ダメだ、何を考えている。僕は悪魔の頂点に君臨する覇王なんだ。人間のセレナとそういう関係になるわけにはいかない。セレナにとってもそれが一番だ。



「ユートてめえ……よくもオレのセレナを寝取りやがったな……!!」



 先程セレナに突き飛ばされたアスタがユラリと立ち上がった。



「……まだ寝取ってないし、そもそもアスタのものでもないだろ」

「うるせえ黙れ!! これからオレのものになる予定なんだよ!! オレの【未来予知】でもそう視えてんだ!!」

「アスタには【未来予知】の呪文なんてないはず」



 スーのツッコミが入り、アスタはぐぬぬという顔をする。



「とにかくお前が現れてからオレのハーレムは滅茶苦茶だ!! 今度もう一回オレと決闘しろ!! 次こそ叩きのめしてやらあ!!」

「……何度やっても結果は同じだと思うぞ」

「んだとぉ!? 上等じゃねーか!!」



 そこでサーシャがパンパンと二回手を叩いた。



「私の予知のせいで話が脱線してしまったが、今はキスだのハーレムだので争っている場合ではない。明日のことだけに集中しろ」

「……だな」



 アスタは自分の席に座り直した。確かに今はセレナのことより『狂魔の手鏡』の方が重要だ。僕は大きく深呼吸し、気持ちを切り替えた。



「では話を戻そう。先程も言った通り、お前達には明朝に『邪竜の洞窟』に入り『狂魔の手鏡』を入手してきてもらう。『邪竜の洞窟』はこのアジトから歩いて二、三時間ほど歩いた場所にあるので、出発は深夜になる」



 セレナが不在のまま、サーシャは話を続ける。



「だから日が沈む前に風呂に入り、出発まで寝ておくことを推奨する。睡眠不足で力が出せなくなっては困るからな。ユートとリナはアジトの空いている部屋を勝手に使ってもらって構わない」

「……ならお言葉に甘えようかな」

「『邪竜の洞窟』までの道は私が案内する。あとは結構歩くから飲み物と軽い食料を持っておいた方がいいかもしれないな。それは私が用意しよう」



 なんだか小学生の頃の遠足を思い出すな。実際は全然違うけど。



「とまあ、説明はこんなところだろう。悪いが誰かセレナにも後でこの事を伝えてやってくれ」

「なら私が伝えとく」



 スーが小さく手を挙げて言った。



「さて、何か質問のある者はいるか?」

「……一つ、聞いておきたいことがある」



 そう言ったのは僕だった。



「なんだユート?」

「今の話と直接的には関係ないけど、アスタ達も七星天使を抹殺する為にサーシャの仲間になったんだよな? それはやっぱり、誰か大切な人の魂を七星天使に奪われたから……なのか?」

「……ああ、そうだ」



 アスタがこれまで見せたことのない、暗然たる表情で答えた。



「オレは七星天使に親友の魂を奪われた。ガキの頃からずっと一緒に過ごしてきた、兄弟同然の奴だった。オレは絶対に七星天使を許さねえ……!!」



 怒りを滲ませた声でアスタが言う。



「オレは七星天使に復讐すると誓った。奴らをこの世から抹消し、必ずアイツの魂を取り返してみせる……!!」



 その目にはとてつもなく強い意志が宿っていた。アスタもサーシャ同様、七星天使にかけがえのない人の魂を奪われてしまったのか……。



「それじゃ、スーも?」



 僕の問いにスーはコクリと頷く。そして懐から一枚の紙を出し、無言で僕に差し出してきた。きっとこの紙にスーの大切な人の顔が――



「ん?」



 その紙を見て僕の頭上にクエスチョンマークが浮かんだ。その紙に描かれてあったのは人ではなく、小犬のような動物だったのである。



「……スー、これは?」

「名前はメラトスハクトリノ。私が飼っていたペット」

「いや、そういうことを聞いてるんじゃなくて……」



 つーか長いな名前。そんな恐竜っぽい名前を付けなくても。



「七星天使による魂狩りが始まった頃にちょうど、私のメラトスハクトリノが行方不明になった。きっとこれも七星天使の仕業に違いない」

「……言っちゃ悪いけど、それ七星天使関係なくないか?」

「そんなことはない。メラトスハクトリノはとても賢くて優秀だったから、七星天使が脅威を感じて魂を奪ったに違いない」

「は、はあ……」

「もちろん冗談だけど」



 冗談かよ! 何この無駄なやり取り!

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