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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第55話 憑依の脅威

「ところでスーの【生類召喚】って、どんなレベルのモンスターでも呼び出せるのか?」

「うん。だけど単に呼び出すだけじゃ言うことを聞いてくれないから【憑依】でモンスターの意識を乗っ取ることで戦わせてる」



 だからアスタとの訓練の時に【生類召喚】と【憑依】を同時に発動してたのか。



「ちなみに【憑依】が有効なモンスターの範囲はレベル500以下だから、必然的に【生類召喚】で呼び出すモンスターはレベル500以下ということになる。あと一度に憑依できるのは一体までという制限もある」

「なるほどな。ちなみに【憑依】は人間に対しても使えるのか?」



 って、さすがにそれはないか。もし人間にも有効だったら一対一の勝負でスーに勝てる人間は存在しないことに――



「うん、使える。人間にはレベルという概念がないから、どんな人間でも意識を乗っ取ることが可能」

「マジか!?」

「例えばこんなふうに。呪文【憑依】」



 スーがセレナの方に顔を向ける。するとセレナの肩がピクッと揺れたかと思えば、その両目が青白く光り出した。まさかセレナの意識を乗っ取ったのか?



「え?」



 直後、セレナは僕の手首を掴み、驚くべき行動に出た。なんとセレナは僕の手を自分の胸まで引き寄せたのである。



「なな、何してんだセレナ!? いやスーか!?」



 思わず声が裏返ってしまう。以前触ってしまった時と同様に、凄く柔らかい。無理矢理引き離そうと思えばできるが僕の本能がそれを許してくれず、指が勝手に動いてしまう。なんて反則的な感触なんだ……!!



「……へ?」



 するとスーの【憑依】が解けたのか、セレナの目の色が元に戻った。そしてセレナは今の状況を確認し、数秒間硬直した。



「あの、いや、これは……」

「きゃあああああああああああああああーーーーー!!」

「痛っ!?」



 セレナのビンタが僕の頬に炸裂した。DEFは99999もあるのでこの程度では痛みを感じないはずなのに、何故だろう、凄く痛い。



「この変態!! スケベ!! 腐ったもやし!!」

「腐ったもやしは酷くないか!? てか今のはスーの呪文のせいだから僕に非はないぞ!! おいスー何でこんなことした!?」

「ユートに私の【憑依】の力を知ってもらいたくて」

「それ僕にセレナ胸を揉ませる必要なかったよな!?」



 本音を言うとスーには全力で感謝の言葉を贈りたいんだけど、それは心の中だけに留めておくことにした。



「スー!! お前なんてことしやがんだ!!」



 アスタが真剣な顔つきでスーに怒鳴った。おっ、アスタの意外の一面が……!?



「今ユートにやったことをオレにもやるんだ!! さあ早く!!」



 うん、そういうことだろうと思ったよ。



「アスタは下心が丸見えだからダメ」

「なん……だと……!?」



 アスタはこの世の終わりのような表情でガクリと膝をついた。



「もう嫌……なんでアタシばっかりこんな目に……」



 セレナはその場うずくまり、声を押し殺して泣いていた。そんなセレナの肩にサーシャがポンと手を乗せる。



「まあいいじゃないかセレナ。別に減るものでもあるまいし」

「よくないわよ!!」



 どうしたものかと僕が悩んでいると、スーがツンツンと僕の背中を突いてきた。



「ほらユート、早くセレナに謝って」

「なんで僕!? 謝らないといけないのはスーだろ!?」



 まあ5%、いや10%くらいは僕が悪いかもしれないけど、スーに謝れと言われるのは心外だ。



「それじゃ私が【憑依】でユートの意識を乗っ取って代わりに謝ってあげる」

「えっ!? ちょっと待っ――」

「呪文【憑依】」



 まずいと思った時には既にスーが【憑依】を発動させていた。数秒後、スーは不思議そうな顔で首を傾げた。



「おかしい……ユートの意識を乗っ取れない」



 そりゃそうだ。今の僕は人間に姿を変えているだけであって、実際はレベル999の覇王。よってスーの【憑依】が効かなくて当然だ。


 では何がまずいかって? それは僕が人間じゃないことがバレるかもしれないってことだ。



「今まで乗っ取れない人間なんていなかったのに、どうして……」

「れ、例外もあるんじゃないか!? スー自身が知らなかったってだけで!!」

「……そうかも」



 ひとまずスーが納得したのを見て、僕は胸を撫で下ろした。僕が人間じゃないことがバレたら面倒なことになるからな。


 それからスーはセレナのもとに歩み寄り、しゃがみ込んだ。



「ごめんセレナ。ちょっとやりすぎた」

「……もうスーとは仲良くしてあげない」



 膨れっ面でセレナが言うと、スーはやや困惑した顔になった。



「それはヤだ。私はセレナがいないと何もできない。お願いだから許して」

「…………」

「お願いセレナ。許して」

「……今回だけよ」



 セレナは優しく言った。どうやら無事に仲直りできたようだ。このやり取りだけでも二人の仲の良さが伺えるな。



「でもアンタのことは絶対許さないから!!」



 僕を鋭く睨みつけるセレナ。なんというとばっちりだ。



「さて。いつまでもこんな場所で立ち話というのもなんだし、話の続きは昼食を食べながらにしよう」



 と、サーシャが提案した。もう昼食の時間か。



「僕とリナも一緒にいいのか?」

「もちろんだ。その代わり二人にも昼食の準備を手伝ってもらいたい。なんせウチは子供が沢山いるからな」

「……分かった」




 それから僕達五人はアジト内の食堂に向かい、昼食の準備にとりかかる。料理は主にセレナが担当し、他四人はその周辺のサポートをすることになった。材料を見る限り作るのはカレーのようだ。



「料理か……」



 ジャガイモを水洗いしている最中に僕はふと呟いた。僕が【創造】の呪文を使うことができたら、料理する手間もかけずにカレーを生成できるんだけどな。だけど今そうするわけにはいかない。



「お前が思ってることを言い当ててやろうか? 『【創造】の呪文を使えたら、こんなことせずともカレーを生成できるのに』だろう?」



 隣りでタマネギの皮を剥いていたサーシャが周囲に聞こえない程度の声で言った。



「……何の呪文で僕の心を読んだ?」

「今のはただの勘だ。お前がいかにも面倒臭そうな顔をしていたからな」

「別に面倒臭いってわけじゃ……」



 図星を突かれた僕を見て、サーシャは小さく笑みをこぼす。



「確かに呪文は便利だし、お前の気持ちは分からなくもない。だが呪文は必ずしも万能というわけではない」

「……どういう意味だ?」

「それはセレナの料理を食べてみれば分かる」

「…………」



 しばらく僕はサーシャの言葉の意味を考えていた。

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