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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第54話 自己紹介

「……ははっ。あっはっはっはっはっは!」



 僕に敗れたアスタは地面の上で仰向けになり、大きく笑い出した。



「オレの負けだ! いやーここまで清々しく負けると逆に気持ちいいな! 全く悔しくない自分が悔しいぜちくしょう!」

「……どっちだよ」



 僕は苦笑いをこぼしながらアスタに手を差し伸べる。アスタはそれを掴んで身体を起こし、立ち上がった。



「しっかし何者だよお前? ただの人間じゃないよな?」

「えっ!? そ、それは……」



 言い淀む僕を見て、アスタは察したような顔をした。



「ま、言いたくないのなら別にいいけどよ。にしても〝ディストラクション・ブロー〟ってどんなネーミングセンスしてんだよお前。思わず噴きそうになったじゃねーか」

「は!? お前の〝サンダー・バレット〟とか〝サンダー・ビッグバン〟に比べたらだいぶマシだろ!」

「なんだと!? オレのセンスが理解できないようじゃオメーもまだまだだな!」

「それはこっちの台詞だ!」



 僕とアスタが睨み合っていると、女子四人がこちらに歩いてきた。



「虚しい言い争いはやめたらどうだ。どっちのセンスも五十歩百歩だぞ」



 サーシャが溜息交じりに言った。確かに虚しいだけに思えてきたので、僕とアスタは言い合うのをやめた。



「流石でしたお兄様! とってもカッコ良かったです!」

「ああ。ありがとうリナ」



 やった、リナにカッコ良いって言われた! 僕は心の中で小躍りした。



「ビックリしたわ。まさかアスタが手も足も出ないなんて……」

「これでセレナもユートの実力はよく分かっただろう?」

「っ! ま、まあまあね! 100点満点中の7点といったところかしら!」



 えらい低評価を頂いてしまった。軽くショックなんだけど。



「あーあ、可愛いレディ達の前で格好悪いところは見せたくなかんだけどなー。ま、負けたもんはしょうがねーか」



 そう言いながらアスタは僕に右手を差し出してきた。



「約束通りお前を仲間として認めてやるぜ。ってなわけでこれからよろしくなユート。ただしオレのハーレムを譲るつもりはねーからな!」

「いや、僕は仲間にはならないぞ」

「……は?」



 アスタはキョトンとした顔になった。


 それから僕は、サーシャの仲間になるつもりはなく『狂魔の手鏡』を入手するまで一時的な協力関係を結んだだけ、ということをアスタ達に説明した。



「なんだそれ!? じゃあオレ達が戦った意味ねーじゃんか! なんでそれを早く言わなかったんだよ!」

「言うタイミングを逃したというか……。そもそもサーシャが『私達の仲間になった』とか嘘をつくからややこしいことになったんだよ」

「ん、そうだったか?」



 とぼけたように言うサーシャ。この幼女め……。



「まあ『狂魔の手鏡』を手に入れるまでは仲間ってことでいいじゃねーか。童貞同士仲良くしよーぜ!」

「……そうだな」



 お前も童貞だったのかよと心の中でツッコミながら、僕はアスタと握手を交わした。



「ねえ、一つ気になってることがあるんだけど」



 すると今まで黙っていたスーが口を開いた。



「さっきのアスタとユートの戦い、なんだかユートの勝ちみたいな話になってるけど、先に足以外のどこかが地面に付いた方が負けってルールだったから、アスタがコケる前に地面を殴ったユートが負けになると思うけど」

「「「「…………」」」」



 スーの説明に全員が沈黙し、何とも言えない空気になる。



「えっと……。せ、背中が付いた方が負けってルールじゃなかったっけ?」

「ううん。確かに『足以外のどこかが地面に付いた方が負け』って言ってた」

「…………」



 僕の額からダラダラと汗が流れる。


 あれ? てことはさっきの勝負って僕の負け? ドヤ顔でアスタに敗北を言い渡した僕の立場は? やばい、超恥ずかしくなってきたんだけど。



「そ、そんなことありません! 実はお兄様は四足歩行動物なので手が付いてもセーフなんです!」



 リナ!? どういうフォローの仕方だよ!?



「ま、まあ、所詮決闘のルールは建前で、ユートに力を示してもらうのが目的みたいなものだったからな。なあアスタ?」

「お、おう。ルールはオレが勝手に決めたもんだし、オレも一度認めた敗北を撤回するつもりはねえ。だから気にすんなユート!」



 挙げ句サーシャとアスタに気を遣われてしまう始末。穴があったら入りたいとはこういう時に使うのだろう。



「そんなことより、私達は『狂魔の手鏡』の入手に向けて協力していく関係になる。互いのことを知る為にも簡単に自己紹介をしようじゃないか」



 話の流れを変える為か、サーシャがこんなことを言った。



「んじゃ、まずはオレからだ。オレの名はアスタ、十六歳。所持呪文はもう分かってると思うが【電撃祭】だ。趣味は女子の観察、特技は女子の身体を一目見ただけで三サイズを言い当てることが――」

「次、セレナ」

「おいこらサーシャ!! まだ途中だぞ!!」



 僕がセレナの方に目を向けると、セレナはプイッと僕から顔を逸らした。



「どうしたセレナ? お前も自己紹介を――」

「こんな変態に紹介することなんて何もないわよ!」



 セレナは強く言い放った。やっぱり嫌われてるな僕。まあ僕がやらかしたことを考えたら当然の態度なんだけども。そんなセレナを見てサーシャは溜息をついた。



「しょうがない、では代わりに私が紹介してやろう。名前はセレナ、十六歳。この通り容姿は優れていてエロい身体をしているが、驚くことに異性との交際経験はゼロだ」

「余計なこと言わないでよサーシャ!! てかなんでそのことを知って……!!」

「趣味と特技は料理。一番の特徴はツンデレだ。ユートに対する態度もただの照れ隠しだから気にするな」

「誰がツンデレよ誰が!! アタシがいつデレたっていうのよ!!」

「ま、こんなところか。最後はスーだ」



 えっ、それで終わり? 肝心の所持呪文の説明がなかったんだけど。まあいいかと思いながら、僕はスーの方に目を向けた。



「私はスー、十五歳。所持呪文は【生類召喚】と【憑依】の二つ。呪文を二つ以上所持している人間は非常に珍しい。よって私は神」



 自分で神って言っちゃうのか。



「趣味は腹話術、特技は読書。私のことは気軽に〝スー様〟と呼んでもらって構わない」



 どこが気軽!? あと趣味と特技が逆になってるよね? 色々とツッコミ所が多い子だ。


 それから僕とリナもそれぞれ簡単に自己紹介をした。と言っても「僕は覇王です」なんて言うわけにはいかないので、当然そこは伏せておいた。

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