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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第53話 ユートvsアスタ

「お兄様、頑張ってください!」



 リナが健気に声援を送ってくれる。これは元気が湧いてくるな。だけど特に頑張る必要もないだろう。



「ねえサーシャ、本当に大丈夫なの? アスタは馬鹿だけど実力は確かだし、まともに戦って無事で済む相手じゃないと思うけど……」

「なんだセレナ、ユートの身を案じているのか?」

「なっ!? だ、誰があんな変態のことなんか!! 私はただ状況を分析してるだけよ!!」

「ま、よく見ておくことだ。変た――ユートは強いぞ」



 セレナとサーシャの会話が聞こえてくる。サーシャも僕のこと変態って呼ぼうとしなかった?



「さーて。女の子が四人も見てる前だし、ここはカッコいいところを見せねーとな。悪いがテメーにはオレ様の好感度アップの踏み台になってもらうぜ!」



 威勢よく宣言するアスタ。果たしてどちらが踏み台になるのやら。



「それでは勝負、始め!」



 サーシャの合図により、僕とアスタの決闘がスタートした。



「早速飛ばすぜ!! 呪文【電撃祭】!!」



 アスタの身体が電気を纏う。さっきスーとの訓練の時に見せた呪文だな。一般的に人間が所持できる呪文はせいぜい一つか二つ。僕の勘ではアスタの所持呪文は【電撃祭】の一つだけだろう。



「〝雷撃弾〟!!」



 すかさずアスタは右手の人差し指の先から電気の塊を放った。僕は敢えてその場から一歩も動かず、アスタの攻撃を真正面から受けることにした。〝雷撃弾〟は僕の身体に直撃し、周囲に爆風が巻き起こった。



「どうだ!! オレ様の〝雷撃弾〟の味……は……?」



 平然と立っている僕を見て、アスタはポカンと口を開ける。当然今のはノーダメージである。



「……はは、どうやら外しちまったみてーだな。悪運の強い野郎だ。ならば!」



 アスタは両手の人差し指を僕に向ける。



「〝W雷撃弾〟!!」



 二発の電気の塊が時間差で放たれる。今度も僕は一歩も動かず、二発の〝雷撃弾〟が僕の身体に炸裂した。



「っしゃあ! 今度こそ直撃だぜ……ってはあ!?」



またしても平然と立っている僕を、アスタは信じられない顔で見つめる。もちろん僕のHPに変動はない。僕は服についた土埃を軽く手で払った。



「おいおいどうなってんだ!? なんでオレの攻撃が当たらねーんだよ!?」

「いや、ちゃんと直撃してるぞ。最初の〝雷撃弾〟も、さっきの〝W雷撃弾〟も」

「はあ!? いやそんなわけねーだろ! オレの〝雷撃弾〟は大人でも一発で気絶するほどの威力だぞ! 直撃してまともに立っていられるはずがねえ!」



 早くも動揺を見せるアスタ。この程度の攻撃ではDEF99999の僕には傷一つ負わせることもできないだろう。



「あっ! さてはこっそり変な呪文を使いやがったな!? 一体何の呪文だ!?」

「……呪文なんて使ってない。僕は一つも呪文を所持してないからな」

「な、なにいいいいい!? 本当なのかサーシャ!?」

「……本当だ」



 サーシャも話を合わせてくれた。もし呪文を使ったら【変身】が解けて僕が覇王であることがバレてしまうからな。呪文は一つも持ってないことにしておいた方が都合が良い。所詮相手はただの人間、呪文を使うまでもないだろう。



「くっ……!! だったらテメーが倒れるまで攻撃をぶち込むだけだ!! 〝雷撃連弾〟!!」



 アスタが次々と〝雷撃弾〟を放ってくる。その内いくつかが僕の身体に直撃するが、やはり僕にダメージを与えるには至らない。



「くそっ、すました顔しやがって。むかつくぜ……!!」



 するとアスタは徒競走のスタート前のような体勢をとった。



「テメーに生半可な攻撃が通用しないことはよく分かった。ならこれでどうだ!!」



 アスタの身体を纏う電気が更に激しさを増す。直後、アスタはフッと姿を消し、一瞬で僕との距離を詰めた。



「〝雷撃拳〟!!」



 そのスピードを維持したまま、アスタが僕に拳を突き出してきた。しかし――



「なっ!?」



 驚愕するアスタ。僕の身体にアスタの拳が届く前に、僕はそれを片手で受け止めたのだった。そのまま僕はアスタの身体を遠くに投げ飛ばした。



「どわっとっと!」



 なんとかアスタは着地に成功し、コート内に踏み止まった。もうちょっと強く投げ飛ばすべきだったか。やはりまだ力の調整に慣れていないようだ。



「あ、危ねえ危ねえ。〝雷撃拳〟のスピードに対応するとか、何者だよテメエ……」



 アスタの頬を汗が伝う。やがてアスタは不敵に微笑んだ。



「こうなったらもう容赦はしねえ。殺すつもりでやってやる!!」



 アスタは右手を頭上に掲げる。そして右手の上に電気の塊が生成され、それは徐々に膨らんでいくのが分かった。



「おおっ……!?」



 思わず僕は声を発した。なんとアスタが生成した電気の塊は半径十メートルほどにまで成長したのである。



「必殺!! 〝雷撃膨張爆発サンダー・ビックバン〟!!」



 その巨大な電気の塊が僕に向かって放たれる。避ける時間も場所もなくそれは僕の身体に直撃し、ダイナマイトのような爆発が巻き起こった。



「ちょ、ちょっとアスタやりすぎよ!! 本当に殺しちゃったらどうすんのよ!!」

「心配すんなセレナ。〝雷撃弾〟でビクともしねーような奴だし、せいぜい気絶くらいだろ。なんにせよこれでオレの勝ち――」



 途中でアスタの言葉が止まった。僕が未だに倒れていないことに気付いたからだろう。



「ゲホッ、ゴホッ」



 HP9999999979/9999999999



 僕は軽く咳き込みながら自分のHPを確認してみる。


 まさかこの僕が人間にダメージを与えられるとは。しかも七星天使のウリエルの最期の攻撃に相当するダメージ量だし、なかなか大したものだ。サーシャがアスタ達について「下級天使を倒せるくらいの力は備えている」と言っていたのは本当みたいだな。



「ば……化け物かよ……」

「よく言われる」



 アスタの顔はすっかり青ざめていた。もう戦意も消失したようだし、そろそろ決着をつけるとしよう。


 僕は拳を強く握りしめ、地面に向けて振り下ろした。



「〝破滅一撃ディストラクション・ブロー〟!!」



 僕の拳が地面に炸裂する。同時に地下訓練場全体が地震でも起きたかのように大きく揺れた。


 あ、ちなみにこの技名はたった今考えついたものです。ただ地面を叩くだけじゃ味気ないと思って叫んでみたけど、やっぱり恥ずかしいなこれ。



「うおおっ!?」

「きゃあっ!」



 この揺れでアスタや見学していた女の子達の足下が不安定になる。その隙に僕はアスタの背後に回り込み――アスタに足払いをかけた。



「どわあっ!?」



 盛大にズッコケるアスタ。直後に僕が引き起こした揺れも収まった。



「足以外のどこかが地面についた方が負け……だったよな?」



 地面に這いつくばるアスタを見下ろしながら僕は言う。こうして僕とアスタの不毛な戦いは幕を下ろしたのだった。

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