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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第51話 3人の仲間

「ところで僕達ってなんで地下に向かってるんだ?」



 サーシャから地下に向かうように言われたのでとりあえず階段を下りてはいるが、その理由はまだ聞いていなかった。



「まずは私の仲間に会わせたいと思ってな。仲間と言ってもメンバーは私を含めて四人だけだが」

「四人? 四人で七星天使に立ち向かうつもりなのか?」

「人数が多ければいいというものでもないしな。七星天使に対抗するにはそれなりの実力者でなければならない。ただし実力者と言っても、それはあくまで人間という枠の中での話。残念ながら現段階での私達では七星天使の力には遠く及ばない」

「その力不足を補う為に『狂魔の手鏡』が必要というわけか」

「そういうことだ。ま、さすがに四人だけでは心許ないと思ったので、お前に声をかけたわけだ。フラれてしまったがな」



 リナに抱っこされたまま、サーシャは苦笑いをこぼした。きっと他の三人もサーシャと同じように大切な人の魂を七星天使に奪われた境遇にあるのだろう。



「今は地下の訓練場にいる時間だから、こうして階段を下りてもらっている。三人ともお前達と同じくらいの歳だ」



 ということは他の三人は十六歳前後ってことでいいんだよな。もうサーシャのような年齢詐欺は御免被りたいところだ。



「サーシャは子供の姿のままでいいのか?」

「ああ。仲間には私が六歳であることも、天使と人間の間に産まれた子供だということも既に打ち明けているからな」

「……ならいいけど。あっ、もしかしてその三人もサーシャのように、天使と人間のハーフとかじゃ――」

「安心しろ。三人とも正真正銘、純粋な人間だ。私のような者はそうそういるものじゃないからな」

「……だよな」



 純粋な人間という言葉でふと思ったけど、今ここにいるのって、天使と人間の間に産まれたサーシャ、僕の【悪魔契約】によって人間から悪魔になったリナ、そして人間の姿に化けている覇王、すなわち僕。端から見れば全員普通の人間だろうけど、実際はかなりの色物揃いだよな……。



「一つサーシャに頼みだけど、これから会う仲間には僕が覇王ってことは秘密にしておいてくれ」

「……それは別に構わないが、お前が覇王だということが分からなければ覇王のイメージアップには繋がらないんじゃないか? お前の目的は覇王が善良な存在であることをより多くの人間に認知させて人間と悪魔が共存できる世界を作ることなんだろう?」



 そこまで知ってるのかよ。やはり【千里眼】と【千里聞】のコンボは怖ろしいな。監視カメラと盗聴器を取り付けられていた気分だ。



「正体を明かすにはまだ時期尚早だ。打ち明けるタイミングは僕が決める」

「……そうか。お前がそれを望むのならそうしよう」



 今僕が覇王だとバラしても、バイトの面接を受けに村まで行った時のように、ただ恐怖に怯えさせるだけだろう。覇王だと打ち明けるのは何かしらの功績を残してからだ。だから今はまだその時じゃない。



「さあ着いたぞ。ここが私達の訓練場だ」



 階段を下りた先には高校の体育館ほどの空間が広がっていた。奥のコートでは二人の人間が十メートルほどの距離を置いて向かい合っている。



 右に見えるのは茶髪の男子。身長は今の僕と同じく平均的で、いかにもチャラそうである。左に見えるのは水色ツインテールの女子。身長はやや低めで、眠いのかそれとも癖なのか、目が半開きである。



「あの二人がサーシャの仲間か?」

「ああ。男はアスタ、女はスーという名だ。両者ともかなりの実力者だ。七星天使に匹敵する――とまではさすがに言えないが、下級天使を倒せるくらいの力は備えている」



 サーシャがリナの抱っこから下りながら言う。ちょうど勝負が始まったようなので、ここは二人のお手並みを拝見するとしよう。



「呪文【生類召喚】と【憑依】を発動」



 スーが落ち着いた声で二つの呪文を唱える。するとスーの目の前にどこからともなくワニとクマを合体させたような巨大なモンスターが出現した。


 それに驚いたのか、隣りでリナが「ひゃっ!」と可愛らしい悲鳴を上げる。スーはモンスターを呼び寄せる呪文が使えるようだ。



「おおっ。こりゃ倒し甲斐のありそうな奴が出てきたじゃねーか」



 それを見てアスタが不敵に笑う。モンスターの体長はアスタの三倍近くあるし、普通の人間ならば一方的にやられるだけだろう。



「こっちも遠慮なくいかせてもらうぜ!! 呪文【電撃祭】!!」



 アスタが呪文を唱えると、黄色い火花のようなものがアスタの身体を纏った。



「あれは……電気でしょうか?」

「そのようだな」



 リナの呟きに僕が答える。僕が元いた世界ではかなり重宝されそうな呪文だな。この世界はまだ電気を実用化できるほど文明は発展していないようだし。


 そんなアスタに臆することなく、スーが召喚したモンスターはアスタに向かって突進を仕掛けた。



「っと危ねえ!」



 アスタが素早く横に跳んでそれをかわす。すかさずアスタは左手の人差し指と親指を立て、人差し指をモンスターの方に向けた。



「〝雷撃弾サンダーバレット〟!!」



 アスタの人差し指の先から電気の塊が放たれ、がら空きになったモンスターの背中に直撃した。モンスターの悲痛な叫び声が響き渡る。あんな風にいつもこの場所で訓練しているのか。



「アスタ! スー! すまないが一旦中断してくれ!」



 サーシャが叫ぶと、二人の目が僕達の方に向けられた。間もなくスーが召喚したモンスターはその場から姿を消し、アスタが身に纏っていた電気も消えた。


 僕達は二人のいるコートの所まで歩いていく。そういやサーシャの話ではあと一人仲間がいるはずだけど、ここにはいないのだろうか。



「なんだよサーシャ、せっかく良いところだったのによ。てかそいつら誰だ?」



 アスタの質問に、サーシャはフッと笑う。



「紹介しよう。今日から私達の仲間に加わったユートとリナだ」

「よろしくお願いします。ってちょっと待てサーシャ!! 仲間にはならないって僕言ったよな!? あとしれっとリナも加えんな!!」



 思わずノリツッコミをしてしまう。するとアスタが僕の顔をジロジロと見てきた。



「お前がオレ達の仲間? なんかいかにも童貞っぽい男だな」

「誰が童貞だ! 失礼な奴だな!」

「なんだ違うのか?」

「……違わないけどさ」



 言っておくけど僕は敢えて童貞なんだからな? 覇王の権力をもってすればいつでも容易く卒業できる。だから泣きそうになるな僕!



「あ、安心してください! もし気にしているのでしたら、私が、その……!!」

「リナ?」

「……いえ、何でもありません」



 リナは顔を赤くして俯いた。リナが言おうとしたことはなんとなく察したけど、一応僕達は兄妹という設定だからそういう発言は問題になりそうだ。

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