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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第46話 協力関係

 僕はガブリによって魂を奪われた女性を両手で抱え、リナの待つ宿に向かう。とりあえず【万能治癒】を使って女性の身体の傷は治したものの、やはり意識は戻らなかった。魂を取り返す以外にこの人を元に戻す方法はないだろう。



「お兄様!」



 宿が見えてくると、外に出て僕の帰りを待つリナの姿があった。リナはとても心配そうな顔で僕のもとに駆け寄ってくる。



「リナよ。こんな夜遅くに外に出ていたら危険だぞ」

「す、すみません、お兄様のことを思うと、いてもたってもいられなくなって……。何かあったのですか?」

「七星天使の一人、ガブリと一戦交えてきた。と言っても相手は分身だったがな」

「えっ!? だだ、大丈夫でしたか!? お怪我は!?」

「心配するな。見ての通りかすり傷一つ付いていない」

「よ、よかったです……」



 リナはとても安心したように息をついた。



「ところでお兄様、その女性は……?」

「ガブリに魂を抜かれた女だ」

「えっ……!?」



 リナは青ざめた顔で女性を見る。



「も、もうどうすることもできないのですか……?」

「魂を取り返さない限りはな。朝になったら余が近くの病院まで運ぶ。医者にどうにかできる問題ではないが、他に預けられる所もないだろう。悪いがそれまでリナの部屋に寝かせておいてくれないか?」

「……はい、もちろん大丈夫です」



 僕も中身は思春期の男子。意識のない女性と一緒に寝て朝まで理性を保てる保証はないし。




 僕とリナは宿の中に入り、女性をリナの部屋のソファーに寝かせ、毛布をかける。それからリナにはまた僕の部屋に来てもらい、事の経緯をリナに説明した。主にサーシャのことを中心に。



「天使と人間の間に産まれた子、ですか……」

「ああ。サーシャは七星天使を抹殺する為、余に『仲間になってほしい』などと言ってきた。己の目的を遂げる為なら覇王の力をも利用しようとする心意気には素直に感心したものだ」

「そ、それで、なんとお答えしたんですか?」

「返事は保留にしてあるが、余にも覇王としての立場がある。人間の仲間になるつもりはないが、一時的に協力関係を結ぶくらいはしてやってもいいと考えている」



 僕はリナが用意してくれたお茶を口まで運ぶ。



「人間の策に乗じるのは少々癪だが、余の最終目標は人間と悪魔が共存できる世界を作ること。ならば今の内に人間に協力的な姿勢を見せておくことも必要だ。これはその大きな一歩になることだろう」

「はい、私もそう思います」

「……あと、保護欲を掻き立てられたというのもあるかもしれない」



 僕の脳裏に子供姿のサーシャが浮かぶ。



「ほ、保護欲……?」

「いや、今のは忘れてくれ」



 言っておくが僕は断じてロリコンではない。小さな女の子を可愛いと思うのはごく普通の感情……だよね?



「そういえば覇王城を出てからアンリ達には何の連絡もしていなかったな」



 アンリのことだから多分ものすごく心配してるだろう。僕は〝念話〟を使ってアンリに連絡を試みる。念話とは簡単に言えばデバイス要らずの携帯のようなものである。まだ寝てないといいんだけど……。



「アンリ、余だ」

『ユート様!! 首を長くしてユート様からのご連絡をお待ちしておりました!! こちらから連絡しては御迷惑かと思いまして……!! お身体の方は大丈夫ですか!? 体調は崩されていませんか!?』



 ほら、やっぱりものすごく心配してた。



「案ずるなアンリ、こちらは何も問題ない。今まで連絡できずにすまなかったな。覇王城の方は何か異常はないか?」

『はい、特にございません』

「そうか。覇王城に帰還するのはもう少し先になりそうなので、ひとまずこのことを伝えておこうと思ってな」

『えっ……!?』

「ん? どうしたアンリ」

『……いえ、何でもございません。承知致しました』



 急にアンリの声のトーンが下がった。僕としばらく会えないことが分かってショックなのだろうか。



「それとアンリに一つ頼みたいことがあるのだが、よいか?」

『もちろんです!! 何なりとお申し付けください!!』



 今度は声のトーンが上がった。僕に頼られることが相当嬉しいようだ。



「これは先程得たばかりの情報なのだが、天使が地上と天空を行き来する手段として〝ゲート〟を利用していることが判明した」

『ゲート、でございますか?』

「うむ。そのゲートは人間領のどこかに存在する。そこで覇王軍の悪魔達を使ってそのゲートの場所を特定してほしい。指揮はお前に任せる」

『かしこまりました。必ずやユート様のご期待に応えてみせます』

「……ただし決して悪魔達に無理はさせるな。まだゲート自体が存在すると確定したわけではないのだからな」

『もちろん分かっております』



 本当に分かってるのだろうか。魂消失事件の調査を頼んだ時のことを考えると不安でしょうがない。もしゲートを見つけられなかったら悪魔達諸共自害するとか言いそうだ。



「用件は以上だ。夜遅くに連絡してすまなかったな」

『滅相もございません。いつでもご連絡をお待ちしております』



 僕はアンリとの念話を切った。


 アンリにゲートの探索を依頼したのはあくまで保険だ。七星天使も馬鹿じゃないだろうし、普段のゲートは何らかの呪文で外部から視認できないようにしている可能性が高い。悪魔達がゲートを発見してくれたらそれが一番だけど、あまり期待はしないでおこう。



「明日、早速サーシャのアジトに向かう。リナには引き続き余と行動を共にしてもらいたいが、よいか?」

「もちろんです! お兄様とならたとえ火の中ゴミの中、どこまでもご一緒します!」



 ゴミの中はちょっと嫌だな、と思う僕であった。



  ☆



 翌朝。再び【変身】の呪文で人間の姿になった僕は、女性を病院に運んだ後、サーシャから貰った地図を頼りにアジトに向かうことにした。リナは半歩下がって僕に付いてきている。


 地図を見る限りアジトまでの距離はここからそう遠くなく、徒歩でだいたい一時間くらいと思われる。【瞬間移動】を使ってもいいけどまた変身するのは面倒だし、最近まで城の中に籠もりっきりだったのでちょうどいい運動になるだろう。

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