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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第44話 人間との交渉

「だが余を仲間にして一体どうする? 余の力を利用して世界征服でも画策しているのか? 言っておくが余はそのようなことの為に力を行使するつもりは一切ない」

「生憎そんな大それたことを企むほどの野望は持ち合わせてなくてな。お前を勧誘しているのはもっと合理的な理由だ」

「ほう。その理由とは?」

「……七星天使を抹殺する為だ」



 サーシャの口から思わぬ言葉が飛び出した。



「お前も知っていると思うが、現在何人もの人間が七星天使によって魂を抜かれる事件が起きている。私は何としてもこれを阻止しなければならない」



 魂消失事件の犯人のことまで把握しているのか。これもきっと【千里眼】と【千里聞】のおかげなのだろう。



「貴様は七星天使が人々の魂を集める目的を知っているのか?」

「残念ながらそこまでは知らない。私の呪文もさすがに『天空の聖域』までは及ばないからな」



 天空の聖域……そこが天使達の住処なのだろう。どんな所か一度この目で見てみたいものだ。



「つまり余を仲間にして七星天使を退治してもらおうという腹か」

「ま、それもアリだけどな。だが七星天使が奪っているのは人間の魂だ。ならば七星天使を抹殺するのも人間の手によるものでなければならないと私は考えている」

「貴様ら人間が七星天使を葬ると? それはやめておくのが無難だ。七星天使は余から見れば脆弱な存在にすぎないが、人間にとって強大な敵であることは変わらないだろう」

「分かっている。それは身をもって体験した」

「……身をもって? 七星天使と交戦したのか?」



 サーシャは自分の左足を指差した。



「先程私は足を負傷していると言ったな。これは七星天使の一人、セアルにやられたものだ」

「!」



 セアル。七星天使のリーダーであり、魂消失事件の主犯の名である。



「私はセアルに戦いを挑んだ。腕にはそれなりに自信があったんだが、全く歯が立たなかったよ。逃げるので精一杯という無様な結果に終わってしまった」

「そうか。身の程を弁えていると言ったわりには蛮勇だったな」

「返す言葉もない。【未来予知】でセアルが人間の魂を奪う未来が視えて、いてもたってもいられなくなったものでな。だが七星天使の実力を見誤っていたのも事実だ」

「……そこまで分かっていながら、貴様ら人間が七星天使を葬ると?」

「ああ。私にはその策略がある。『狂魔の手鏡』は聞いたことがあるか?」



 狂魔の手鏡? 初めて聞く単語だ。



「その顔は知らないようだな。『狂魔の手鏡』は数百年前に天使への対抗手段として作られた代物だ。それを作ったのが人間なのか悪魔なのか、またどのような技術で作られたのか、今となっては不明だがな」

「天使への対抗手段というからには、その鏡には天使の力を封じる力でもあるのか?」

「その通り。『狂魔の手鏡』に姿を映された天使は人間の赤ん坊並みに力が弱体化し、あらゆる呪文が使用不能になる」

「なるほど。その鏡さえあれば貴様ら人間でも天使を倒すことができるということか」



 凄い鏡だな。そんな大昔にどうやってそんなものを作ったんだろうか。



「今まで『狂魔の手鏡』は行方が分からなくなっていたが、ついに先日その在処が判明した。だが天使達がこれに気付くのも時間の問題だろう。いや、もしかしたら既に気付いているかもしれない」

「天使達はその鏡を見つけ次第破壊するだろうな。ならばこんな場所で余と雑談してないで、真っ先にその鏡を取りに行くべきではないか? その言い方だとまだ入手できていないのだろう?」



 僕がそう言うと、サーシャは小さく溜息をついた。



「そう簡単に取りに行けたら苦労しないんだがな。『狂魔の手鏡』が隠されているのは『邪竜の洞窟』と呼ばれる所だ」

「……邪竜の洞窟?」

「その洞窟はレベル700を超える三体のドラゴンによって統治されている。その他にもレベル三桁のモンスター達がウヨウヨ棲息している。正直私達だけではそいつらをかいくぐって『狂魔の手鏡』を手に入れるのはかなり困難を極めるだろう」



 なんかいかにもやばそうな洞窟だな。でもこれで大体話は見えてきた。



「つまり貴様が余を仲間にしようとする理由は『狂魔の手鏡』の入手に協力させる為、ということか」

「長々と説明したが、そういうことだ」

「……随分と回りくどいやり方だな。直接余に七星天使を葬ってほしいとお願いすればいいものを」

「さっきも言ったが、七星天使を抹殺するのは人間の手によるものでなければならないと私は考えている。それに私も、やられたらやり返さないと気が済まない性格でな」



 サーシャは自分の左足に目を向ける。



「しかしそれは貴様にとって些か都合が良すぎるな。貴様の仲間になったところで余には何のメリットもない。人間の力など借りずとも、余の力だけで七星天使は殲滅できる」

「そう言うと思ったよ。だが安心しろ、ちゃんと見返りは考えてある」

「……ほう?」

「お前は天使達がどうやって地上と天空を行き来しているか知っているか?」



 このサーシャの質問に、僕は喉を唸らせる。そういや考えたことなかったな。天空の聖域とやらは地上からかなり離れた所にあるイメージだし、普通に行き来してたらかなり時間を要しそうだ。



「【瞬間移動】のような呪文を使っているのではないのか?」

「基本、地上と天空の往来に転移系や転送系の呪文は使えない。というか、それが可能だったらお前もとっくにそうしているはずだ」

「……そうだな」



 そもそも【瞬間移動】を使って天使達の領域に行くという発想がなかった。



「この世界のある場所に、地上と天空を繋ぐ〝ゲート〟がある。七星天使はそのゲートを使って行き来している」

「……なるほど。貴様はそのゲートの場所を知っているのか?」

「ああ。もしお前が私の仲間になってくれるのならゲートの場所を教えてやろう。お前にとっても悪い話ではないはずだ」

「……!」



 ガブリは人々から奪った魂は『七星の光城』に送られると言っていた。その城はほぼ間違いなく天空の聖域内にある。もしゲートの場所が分かれば、そのゲートを使って天空の聖域に向かい、人々の魂を取り返すことができるかもしれない。



「お前が自分の力でゲートを見つけるというのならそれでもいいが、なんせこの世界は広い。【千里眼】を駆使したとしても最低一年は掛かるだろう。私もゲートを発見したのはつい最近のことだ」



 だが果たしてそのようなゲートは存在するのだろうか。仮に存在したとして、本当にこの人はその場所を知っているのだろうか。僕を仲間に引き入れる為の真っ赤な嘘、ということも考えられる。


 ああ、こんなことなら前に襲撃してきた下級天使を何人か捕虜にしておけばよかった。そうすればゲートに関する情報を聞き出せたかもしれない。

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