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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第42話 ワンサイドゲーム

「弱体化を解除……だと? どういうことだ……!?」

「理解できないか? 余は今までステータスを著しく下げた状態で貴様と戦っていたということだ。本気の1%も出ていない状態でな」



 僕は右手を前に出し、人差し指を上げる。



「余が弱体化したまま貴様と戦った理由は二つ。一つ目は貴様に【魂吸収】を使わせ、その呪文の概要を探るためだ。紋章の出現から魂の抽出までタイムラグがあることは貴様が女の魂を奪うのを見た時から大凡見当はついていたが、再度確認しておきたくてな」



 続いて僕は中指を上げる。



「二つ目の理由は、本気の1%も出していない余に貴様がどれだけ拮抗できるか試してみたかったからだ。貴様がどこまで余を追い詰めることができるか楽しみだったが、とんだ期待外れだったな。貴様もウリエル同様、取るに足りない存在だ」

「……ク、クク。ハハハハハ!!」



 ガブリは笑う。だがその頬には汗が伝っていた。



「本気の1%も出ていないだあ? 意地張ってんじゃねーぞ覇王。そんなハッタリが通用するかよ!!」

「フッ。本当にハッタリかどうか、試してみるがいい」

「上等だ!! 〝三日月斬〟!!」



 ガブリが三度目の三日月斬を放つ。僕はその場から一歩も動かず、その攻撃を正面から受けた。



「なんだと……!?」



 ガブリの表情が大きく歪んだ。僕が攻撃をまともに受けたにもかかわらず微動だにしなかったからだろう。



「今のはたった1ポイントのダメージだ。果たして何度これを繰り返せば余のHPを0にできるのだろうな」

「このっ……!! 呪文【月光砲】!!」



 ガブリが放った光のレーザーが僕に直撃する。しかしやはり僕の身体を動かすには至らない。



「どうした? 貴様の力はその程度か?」

「呪文【月光砲】!! 呪文【月光砲】!! 呪文【月光砲】!!」



 やけになったのか、ガブリは【月光砲】を何度も撃ってくる。だが所詮は無駄な足掻きでしかなかった。



「やれやれ、まるで子供とじゃれ合う父親の心境だな。だが同じ呪文ばかりだとパパも飽きてくるぞ」



 ガブリの呼吸が徐々に荒くなっていく。やがてガブリは【月光砲】を撃つのをやめ、腕をダランと下ろした。



「馬鹿な……何故効かねえ……!?」

「これで思い知っただろう。余と貴様の間には天と地ほどの力の差があるのだ」



ガブリは息を切らしつつも、僕をギロリと睨みつける。この目はまだ諦めていないようだ。



「次はこちらの番だ。呪文【覇導弾】!!」



 僕はガブリに向けて【覇導弾】を放った。ガブリは防御のつもりなのか、両腕を胸の前でクロスさせた。



「ぐああああああああああ!!」



 ガブリの悲鳴が響き渡る。僕の【覇導弾】はガブリの左腕に直撃し、まるでマグマをぶっかけたように皮膚を大きくただれさせた。



「俺の……俺の腕がっ……!!」

「これが本当の【覇導弾】の威力だ。先程とは段違いだろう?」



 避けてさえいればこんなことにはならなかったものを。一発目の【覇導弾】が大したことなかったので二発目も問題ないと判断してしまったのだろう。



「もうその腕はまともに動かせまい。ま、腕が吹っ飛ばなかっただけでも幸運と言えるだろう」

「黙りやがれえ!!」



 ガブリが僕に向かって駆け出し、勢いよく右腕を突き出してくる。それを見て僕は小さく息をついた。



「もう悪足掻きはよせ。呪文【大火葬】!!」



 ガブリの身体を巨大な炎の渦が包み込んだ。



「うああああああああああ!!」



 再びガブリは悲鳴を上げる。ガブリは炎が消えるまで激しくのたうち回った。僕はその様子をただ黙って見つめる。



「く……そが……!!」



 炎が消えた後、ガブリは右手で左腕を押さえながらヨロヨロと立ち上がった。まだ戦う気力が残っているとは驚きだ。



「改めて聞こうか。貴様ら七星天使が人間共の魂を奪っている目的は何だ? 素直に吐いたら少しだけ寿命を伸ばしてやろう」

「あぁ……!? 片腕を潰したくらいで調子に乗ってんじゃねえ……!! この程度どうってことねえんだよ……!!」



 やはり答える気はナシか。ならばこれ以上生かしておく理由はないだろう。



「テメエこそ何故人間の味方をする……!? 人間がどうなろうが覇王のテメエには何の関係もねーだろーが……!!」

「余の質問には答えないのに自分の質問には答えろと? それは虫が良すぎるな」



 しかし思ったよりしぶといな。こいつを戦闘不能にするまであと数分は掛かりそうだ。あまり騒ぎを大きくして誰かにこの場を嗅ぎつけられたりしたら面倒なことになる。


 だがこれはあくまで僕が普通に戦ったらの話だ。僕にはこの戦いを数秒で終わらせることができる呪文がある。



「そろそろオママゴトも終わりにしよう。良い子は寝る時間だ」



 僕は指をパチンと鳴らした。



「呪文【死の宣告】」



 一瞬視界が暗転する。直後、ガブリの身体を黒いものが蝕み始めた。



「な、何だこれは!? 一体何をしやがった!?」

「【死の宣告】は対象に死を与える呪文。貴様はもう終わりだ」

「……はあ!? ふざけんな!! そんな呪文あるわけねえだろーが!!」

「現実を受け入れられないか? まあ無理もないだろう。そういえばウリエルもこの呪文で葬ったのだったな」

「なに……!?」

「ウリエルも貴様と似たような反応だった。真偽はあの世でウリエルに直接確かめてみるがいい」



 既に黒いものはガブリの首のあたりまで浸蝕していた。



「嘘だ……この俺が……七星天使の俺が……!!」

「だがこの呪文は貴様が使っていた【魂吸収】と違い、都合良く魂だけ奪うことなどできない上、絶命まで最低でも10秒は掛かってしまう。【魂吸収】に比べたら完全下位互換の呪文だよ」



 ガブリはギリギリと歯を食いしばり、僕に向かって駆け出した。



「覇王おおおおおおおおおお!!」

「……タイムアップだ」



 呪文【死の宣告】が発動する。ガブリの最期の足掻きも僕に届くことなく、ガブリは絶命し、その場に倒れた。やがてガブリの身体は蝋燭の炎のようにフッと消えた。



「……?」



 それを見て僕は一つの違和感に気付いた。ウリエルや下級天使が死んだ際は、身体が塵となって空気に溶け込むように消えていったのを覚えている。


 だがガブリのそれは明らかに他の天使達と違っていた。ガブリだけ死んだ際の消え方が異なるとは考えにくい。となると――



「……分身の類か」



 僕がたった今葬ったのは本物のガブリではない。おそらくガブリが呪文で作り出した分身だったのだろう。本物は別の所にいる。


 まったく、とんだ戦い損だったな。だがあれほど高性能な分身を生み出す呪文となるとMPの消費も膨大なはずだ。何度もポンポン使えるものではないだろうし、全くの無駄というわけではなかっただろう。



「!!」



 その時だった。背後に何者かの気配を感じ、僕は素早く振り返る。すると一つの影がこちらに近付いてくるのが分かった。

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