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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第40話 遭遇

「呪文【能力付与】!」



 僕は一つの呪文をリナに与えた。リナは「えっ?」というような表情で目を開ける。



「たった今【能力付与】により、余の【創造】の呪文をお前に与えた」



 呪文を発動したことで【変身】が解け、僕は覇王の姿に戻る。それから再び【変身】を発動し、また人間の姿になった。


 変身中は何か呪文を使う度にこれを繰り返さないといけないから面倒だな。今はリナしかいないからいいけど、他に誰かいたら呪文自体が使えないに等しいし。



「ど、どうして私に【創造】の呪文を?」

「リナも女の子だし、風呂に入った後また同じ服を着るのは嫌だと思ってさ。その呪文で好きな服を生成したらいい」


 僕が直接【創造】を使うという選択肢もあるにはあったけど、女の子の服に関する知識は乏しいのでどういう服を生成したらいいのか分からないからな。それに服はまだしも下着まで僕が生成するのはマズイだろう。



「前にもこうして【災害光線】の呪文をリナに与えたんだけど、覚えてないか?」

「あ、いえ、覚えています。こういうことだったんですね……」



 リナは残念なようなホッとしたような、そんな顔をしていた。



「【創造】は後で僕に返してくれ。その呪文は僕もないと困るからな」

「もちろんです。私のことを気遣っていただいてありがとうございます。本当にお優しいですね……」

「これくらいどうってことない。それと風呂に入った後はまたこの部屋に来てくれ。色々と話したいことがある」

「分かりました。それでは失礼します」



 リナはペコリと頭を下げ、部屋から退室した。さて、僕も風呂に入るとするか。


 日中は魂消失事件の情報を集める為に町を歩いて回ったが、犯人は七星天使の可能性がある、ということ以外に目立った収穫はなかった。だが焦る必要はない。本番はこれからだ。


 だが本当に犯人が七星天使だとするのなら、奴らの目的は一体何だ? 人間の魂を集めて何を企んでいる……?




 僕が風呂から出てしばらく経った後、ドアをノックする音がした。僕が「どうぞ」と言うと、新しい服を着たリナが部屋に入ってきた。



「し、失礼します」

「……もっと女の子っぽい服は生成できなかったのか?」



 リナが着ている服は学校の体操服のようなとても簡素なものだった。これもアリといえばアリだけど。



「すみません、いざ生成しようとしたら服のイメージがうまく湧かなくて……。や、やっぱり生成し直した方がいいでしょうか?」

「いや、リナがそれでいいなら別に構わないんだけどさ」



 奴隷時代が長かったせいで自分にどんな服が似合うのか見当もつかないんだろうな。下着以外は僕が生成してあげた方がマシだったかもしれない。



「お兄様――お兄さんは先程と同じ服ですけど、いいんですか?」

「ああ。僕は男だし、二日くらい服を替えなくても気にしないからな。とりあえず適当に座ってくれ」

「は、はい」



 リナは僕の隣りにちょこんと座った。それからリナに【創造】の呪文を返却してもらった後、僕は魂消失事件の犯人についてリナに話した。



「そ、それじゃ事件の犯人は、天使さん達ってことですか……!?」



 リナは目を丸くして言った。



「まだ推測の域だけどな。だけど可能性は高いと思ってる」



 キエルさんは嘘をつくような人には見えないし、自分の立場が悪くなるような嘘をついたところでキエルさんには何のメリットもないからだ。


 僕は静かにベッドから腰を上げ、リナの方を向いた。



「これから町を散策してくる。リナはこの宿で待機しててくれ」

「こ、こんな夜遅くにですか!? もし事件に巻き込まれたりしたら……!!」

「事件に巻き込まれる為だよ。おそらく犯人は夜になってから出没している。この宿でジッとしてたんじゃ犯人の尻尾は掴めないからな」

「き、危険です! もしものことがあったら、私……!!」

「ははっ。リナにもアンリの心配性が移ったのか?」



 とても心配そうに僕を見つめるリナの頭に、僕はポンと手を乗せた。



「僕は覇王だ。もしものことなんて考える必要はない。だから信じて待っててくれ」

「…………」



 リナはしばらく無言で俯いた後、コクリと頷いた。



「それじゃ、行ってくる」

「か、必ず無事で帰ってきてください!」

「ああ」




 僕は宿を出て、人間の姿のまま町の中を歩き始める。さすがにこの時間帯になると人はほとんど見かけないな。


 僕がこの姿で外を歩く理由は犯人を誘き寄せる為だ。悪魔の報告の中には「被害者は10代後半から20代前半」とあったので、僕もギリ対象に入る。犯人が僕の魂を奪おうと襲ってきたところを返り討ちにするという算段だ。


 まあ、まだ犯人がこの町にいると確定したわけじゃないんだけども。リナにはちょっとカッコつけてしまったので、犯人に遭遇することなく普通に宿に戻ったら気まずくなりそうだ。むしろ遭遇しない確率の方が高いだろう。


 しかし事件の犯人が本当に七星天使だとすると、大勢の人間の魂を奪う天使と人間を守る為に戦う覇王あくま。一体どっちが天使でどっちが悪魔なのか分からなくなってくるな。



「きゃあああああ!!」



 すると遠くから突然女性の悲鳴がした。まさか犯人が現れたのか!? 僕は全速力で声のした方に走り出した。




「ハハハハハ!! やっぱ人間を襲うのは楽しいなあ!! 夜の一人歩きは危険だって教わらなかったのかあ!?」


 路地裏に出ると、少し離れた所で両手を広げて高笑いをする男と、その目の前で地面に横たわる全身傷だらけの若い女性の姿があった。



「んじゃ、そろそろ楽にしてやるか。呪文【魂吸収】!」



 その男がパチンと指を鳴らす。すると女性が横たわる地面に半径二メートルほどの青白く光る紋章が出現した。



「やめろ!! 何をする気だ!!」



 僕はその女性に向かって駆け出した。今あいつは「魂吸収」と言った。間違いなく人間から魂を抜き取る呪文だ。


 すると紋章が出現して数秒後、その女性の身体から〝白く光るもの〟が抽出されるのが見えた。まさかあれが魂なのか……!?


 やがてその〝白く光るもの〟はフッと消える。同時に青白く光る紋章も消失した。



「大丈夫か!? しっかりしろ!!」



 僕はその女性の肩を揺らす。だが何度呼びかけても女性の意識が戻ることはなかった。これが魂消失事件の正体か……!!



「おやおや? どうやら次の生贄が運ばれてきたみてえだなあ」



 その男は一人の魂を奪ったにもかかわらず、罪悪感の欠片も感じていない様子だった。僕は女性を地面に寝かせ、ゆっくりと立ち上がる。



「……お前、何者だ」



 僕は男の方を睨みつけた。男は頭の後ろを右手でガリガリと掻く。



「一応正体は隠せって言われてんだけどなあ。まあいっか、特別サービスだ」



 男は不気味に口角を上げ、こう名乗った。



「俺の名はガブリ。七星天使の一人っつったら分かるか?」

「!!」



 やはりキエルさんが言っていた通り、この事件は七星天使が起こしていたのか……!!

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