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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第3章 魂狩り編
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第31話 魂狩り

 アンリとペータによって下級天使の大群が壊滅し、二日が経過した。『七星の光城』の一室では、この前と同じく七星天使のセアル、ガブリ、ミカ、ラファエの四人が集まっていた。



「イエグは『狂魔の手鏡』破壊の任務中だから仕方ないとして、キエルは今日も来ておらんのか」



 セアルが眉間にシワを寄せながら言う。



「はっ、あの馬鹿はバイトをクビにでもならない限り来やしねーだろ。それよりまた俺達を集めて今度はどうしたんだよセアル?」



 そう言った後、ガブリは何かを思いだしたような顔をした。


「ああ、そういや下級天使共にアンリちゃんを捕獲するよう命じてたんだったな。これはその祝勝会ってわけか。んで、アンリちゃんはどこにいるんだ?」

「……アンリの捕獲は失敗じゃ。下級天使はアンリともう一体、ペータという覇王の部下によって全滅させられてしまった」



 セアルは苦々しい表情で言った。



「失敗だあ!? おいおい冗談じゃねーよ! こちとらアンリちゃんの拷問を楽しみにしてたってのによお! 俺のワクワクを返せよマジで!」

「ガブリ貴様!! 1000人もの下級天使が犠牲になったというのにそのふざけた態度は何じゃ!!」



 セアルが大声で怒鳴ったが、ガブリは平然とした顔で頭の後ろに手を組む。



「俺に八つ当たりすんじゃねーよセアル。そもそもこの作戦を決行したのはお前だったじゃねーか」

「くっ……!!」

「つーかよお、覇王ならまだしもその部下に全滅させられるとか下級天使共どんだけ弱いんだよ! しかも下級天使1000人に対し向こうはたった2人とかもはやギャグの領域じゃねーか! ははははは!」



 ガブリが笑い飛ばす中、セアルは無言で拳を震わせる。やがて自分を落ち着かせるように大きく息をついた。



「……確かに、今回の件は覇王の部下達の力を侮っていた私の責任じゃ」

「おっ、珍しく素直だなセアル。こりゃ明日は雪だな!」

「ここは雲の上だから雪は降らない」



 ミカが菓子を食べる手を止め、ガブリにツッコミを入れた。



「ああ? ジョークに決まってんだろーが。こういう時だけ口を挟むんじゃねーよミカ」

「…………」



 ミカはまた無言になり、菓子を食べる作業に戻った。



「んで、今度はどーするつもりだよ? また下級天使共を使ってアンリちゃんを捕獲させる作戦か?」

「も、もうやめましょうよ! また全滅させられたりしたら……!!」



 ラファエが震えた声で言う。



「……そうじゃな。覇王の部下達にも相当な力があると分かった今、これ以上は無駄に犠牲者を増やすだけじゃろう。かと言って手をこまねいていれば、覇王によって人間が絶滅するのを待つだけじゃ」

「くくっ。となると、いよいよ『幻獣の門』の封印を解くしかなさそうだな」



 このガブリの発言で室内の空気が一変する。やがてラファエが青ざめた顔で立ち上がった。



「な、何を言ってるんですかガブリさん!! 冗談で言ってるんですよね!?」

「冗談なものかよ。覇王に対抗できるとしたらもう幻獣くらいしかいねーだろうしな」

「だけど『幻獣の門』の封印を解くには1000以上の人間の魂を生贄に捧げなければなりません!! そんなこと許されるはずが――」

「いや……ガブリの言うことにも一理ある」

「せ、セアルさん!?」



 ラファエが信じられない顔でセアルを見る。



「おそらく覇王の力は我々七星天使をも凌駕しておる。『幻獣の門』の封印を解く以外に覇王を滅ぼす手段はないじゃろう。大昔に覇王を滅ぼしたのは幻獣という言い伝えもあるくらいじゃからな」

「ってことは、セアルも賛成ってことでいいんだな?」

「…………」



 セアルは腕を組み、目を閉じる。やがて苦渋の決断を下すように、小さく頷いた。



「ははっ、決まりだな! そんで誰に人間共の魂を狩らせる? また下級天使共に押し付けるか?」

「……下級天使には荷が重いじゃろう。それに二日前の件で下級天使の志気は大きく低下しておる。よって魂狩り我々七星天使で行うものとする」

「ヒャッハー!! そうこなっくっちゃな!! やっと面白くなってきやがったぜ!!」

「ガブリ、これは決して遊びではない。それを忘れるな」

「へいへい、分かってますって」

「待ってください!!」



 血相を変えたラファエが大声で叫んだ。



「セアルさん前に言いましたよね!? 人間を守ることも七星天使の使命だって!! そんな僕達が人間の魂を狩るなんて、本末転倒じゃないですか!!」

「……お前の気持ちは分かる。だが私はこうも言ったはずだ。覇王を滅ぼすには手段を選んでいる余裕などない、と。それともお前には他に覇王を倒す考えでもあるのか?」

「そ……それは……!!」

「多少の犠牲を払って覇王を倒し、人間の絶滅を防ぐか。このまま何もせず、覇王によって人間が絶滅するのを黙って眺めているか。どちらを選ぶべきか、それは言うまでもないじゃろう」

「……!!」



 ラファエは何も言い返せず、唇を噛みしめることしかできなかった。



「ミカ、お前も何か意見はあるか?」

「…………」



 ミカは菓子をポリポリと砕きながら、まるで興味がなさそうに首を横に振った。



「んじゃ早速人間領に向かうとすっか!」

「待てガブリ。これを迅速に行うには人間共の協力が不可欠じゃ。まずはそれなりに地位のある人間と交渉する必要がある」

「んだよ面倒くせーなあ。しゃーねえ、俺が交渉してきてやっか」

「お前では交渉にすらならんのがオチじゃろう。ここは私に任せておけ」

「ほう、七星天使のリーダー様が直々に? まあ別にいいけどよ」

「それでは行ってくる。お前達は私が戻ってくるまで待機しておけ」



 こうしてセアルは〝人間の魂狩り〟を実行に移すべく、人間領へと向かった。

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