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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第2章 七星天使編
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第24話 圧倒的な差

「どうだアンリ。これでもまだ余の心配をするか?」

「とんでもございません。どうやら私はユート様のお力を完全に見誤っていたようです。今はただ自分の愚かさを痛感するばかりでございます」



 アンリは恍惚な表情を浮かべて言った。



「どうだ、七星天使の一人よ。これで貴様と余の間には圧倒的な力の差があることを思い知ったはずだ」



 僕はウリエルから言われた台詞をそのまま返した。



「しかしガッカリだな。まさか天使がこれほどまでに貧弱な生き物だったとは」



 試しに煽ってみたところ、ウリエルは大きく目を見開いた。



「貴様……今なんと言った……!?」

「どうした、聞こえなかったのか? その若さで難聴を患うとは気の毒だな。それとも天使というのは歳を取っても外見は衰えないのか? もしそうであるなら若いと言ったことは謝ろう」



 更に僕が煽ると、ウリエルの拳がワナワナと震え出した。



「下等生物の分際で……調子に乗るなあ!!」



 ウリエルが両手を大きく広げた。何かする気か?



「今から私の奥の手を披露してやる。この私を挑発したことを後悔するがいい!!」



 奥の手なんてものがあったのか。だったらもっと早く見せればいいのに。


 するとウリエルの周囲に無数の〝氷の塊〟が出現した。また氷塊なんとかという呪文かと思いきや、氷の塊が一カ所に集まっていくのが分かった。


 氷の塊は何かを形作りながら加速度的に大きさを増していく。やがてそれは城の一階の天井をも突き破り、氷の巨人へと姿を変えた。



「なんだこの化け物は……!?」

「有り得ない……!!」



 その巨人の出現に悪魔達が驚嘆する。体長は二十メートル以上あるだろう。天井を壊すなんてはた迷惑な巨人だ。



「これが私の最上級呪文【氷岩巨人】だ!! 恐怖するがいい!! 絶望するがいい!! ハハハハハ!!」



 ウリエルは豪快に高笑いをしてみせる。



「どうした覇王!! 何か言ったらどうだ!?」

「…………」

「ふっ、どうやら恐怖のあまり言葉を失っているようだな!! だがこれで貴様は命をも失うことになる!!」



 氷の巨人が僕を叩き潰すべく、大きく腕を振り上げた。



「やれ、氷岩巨人!! 覇王を亡き者にするのだ!!」



 そして巨人の腕が僕目がけて振り下ろされた。ダイナマイトが爆発したかのような巨大な音が城内に響く。



「さらばだ覇王!! ハハハハハハハハハハハ……ハ?」



 ウリエルの高笑いが途中で止まる。僕が平然と立っていることに気付いたからだろう。



 HP 9999999975/9999999999



 なるほど、流石は最上級呪文。僕のHPが20も削られてしまった。



「ど、どうなっている!? 貴様は一体何なのだ!?」



 ウリエルの表情はすっかり絶望の色に染まっていた。さっき僕に絶望するがいいとか言ってたのに、逆に自分が絶望してしまったようだ。



「今更な質問だな。余は悪魔の頂点に君臨する者、覇王。それだけだ」

「……!!」

「だが恥じることはない。なんせ余のHPを20ポイントも削ったのだからな。むしろ誇るべきことだ」

「……は?」

「さあ皆の者。この天使に称賛の拍手を贈るのだ」



 見物している悪魔達に呼びかける。皆は疎らながらも拍手をしてくれた。



「ま、待て!! 氷岩巨人の攻撃を正面から喰らって20ポイントしかHPが減らなかったというのか!?」

「だからそう言っているだろう」



 僕は足下に落ちていた瓦礫を拾い上げ、氷の巨人に向かって投げる。その瓦礫は巨人の腹を貫通し、そこからピキピキと亀裂が生じる。やがて地震で倒壊するビルのように、巨人は崩れ落ちた。



「わ……私の最上級呪文が……こんなあっさり……!?」

「そう落ち込むことはない。今の攻撃を5億回繰り返せば余のHPを0にすることができるぞ。もっともその前に貴様のMPが尽きるだろうがな」

「5億……!? それだと貴様のHPは100億近くあることに……!!」

「ほう、計算が早いな。ま、冗談だと思いたいのなら勝手にするがいい」



 僕のステータスを見せて更に絶望させてやってもいいけど、この世界ではステータスは他人に見せないのが一般的みたいだからな。中にはこいつみたいに堂々と見せびらかす奴もいるようだが、僕はそんな真似はしない。


 それに、僕のステータスを見たらこいつは完全に戦意を喪失してしまうだろう。それでは制裁のし甲斐がない。



「どうした、もう打つ手なしか? ならばそろそろ余の呪文もご覧に入れようか。余の可愛い部下達を手にかけた罪はきっちりと償ってもらおう」



 僕は指先を前に向けた。ウリエルの肩がビクッと揺れる。



「呪文【災害光線ディザスター・キャノン】!!」



 シーン……。


 あれ? おかしい、呪文が発動しない。一体どうして――


 あっ! そうだった、【災害光線】はリナに【能力付与】であげちゃったから今の僕は使えないんだ! すっかり忘れてた!



「ユート様、一体どうなされたのだ……?」

「まさか呪文を失敗されたのでは……?」



 悪魔達の間からこんなヒソヒソ声が聞こえてくる。やばい、メッチャ恥ずかしい。誰か助けてくれ!



「馬鹿者!! ユート様ともあろうお方が呪文を失敗などするはずがなかろう!! これは【災害光線】を使うまでもないということを遠回しに意味しておられるのだ!! そんなことも分からんのか!!」



 アンリが悪魔達に大声で怒鳴った。ナイスフォローだアンリ! アンリの思い込みの激しさもたまには役に立つな!



「アンリよ、よくぞ代弁してくれた。この程度の奴に【災害光線】など勿体ない。下手をすれば皆まで巻き込んでしまう怖れもあるからな」



 悪魔達は「なるほど!」「そうだったのか!」と納得していた。僕はホッと安堵し、他の攻撃系呪文を使うことにした。


 えーっと、どれにしようか……。よし、この呪文にしよう。



「呪文【大火葬】!!」



 僕は威力を5%程度に抑えた【大火葬】をウリエルに対して発動した。ウリエルを中心に炎の渦が巻き起こる。



「うああああああああああーーーーー!!」



 ウリエルが悲痛な声を上げる。こいつのDEFの数値ならこれくらいの火力で十分だろう。



「はあ……はあ……!!」



 と思っていたが、炎の渦が止んでもウリエルは未だにくたばっていなかった。ちょっと威力が低すぎたか?


 すると僕はウリエルの全身が濡れていることに気付いた。なるほど、全身に氷を纏ってダメージを最小限に抑えたわけか。なかなかしぶとい。



「下等生物が……そう易々と私を殺せると思うな……!!」

「ふっ。この圧倒的な力の差を前にして、まだ心が折れていないとは大したものだ。その強靭な精神力だけは認めてやろう」



 だけどもう奥の手も見たことだし、これ以上戦いを長引かせる意味はなさそうだ。



「では、そろそろお遊戯は終わりにしようか」

「……お遊戯……だと……!?」



 さて。二回続けて【大火葬】というのも芸がないし、また氷で身を守られたりしたら面倒だしな。ここは一発で確実に葬れる呪文を使うことにしよう。

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