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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第10章 時空超越編
215/227

第215話 姉妹愛

すみません。だいぶ間が空いてしまいましたが、更新を再開します。長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。


ストーリーはまだまだ続きますので、今後も応援しただけると嬉しいです。


書籍1巻をご購入いただいた方は本当にありがとうございます。2巻も発売予定ですので何卒よろしくお願いします(詳細は後日)。




 幻獣との戦いから約一ヶ月が過ぎた。現在僕は大広間の玉座に腰を下ろしている。いつもならアンリが目の前で膝をついているが、訳あって今はここにはいない。


 幻獣の呪文【絶滅世界】によって全生物の約二割が滅んでしまったが、死した人間を半悪魔として蘇らせる『闇黒狭霧』の生成に必要な四つの材料が全て揃ったことで、僕はそれを世界中に散布した。その結果、死した人間の全てを半悪魔として蘇らせることに成功した。不本意ながら僕はアンリ達の計画の一部を叶えてしまったわけだ。


 そしてこれは後になって分かったことだが、その半悪魔たちには生前の記憶が全て失われていた。それが当人達にとって良いことなのか悪いことなのかはさておき、半悪魔となった者達を人間領に置いておくわけにもいかないので、悪魔領内に新たに〝半悪魔領〟を設け、そこに彼らを移住させることにした。


 アンリがここにいないのは、僕が彼らの統制をアンリに一任したからだ。アンリは『覇王様の第一の側近である私が覇王様のお側を離れることなど――』とか何とか言っていたが、僕が『お前のことを最も信頼しているからこそ任せようと思い立ったのだ』と言ったら、狂喜しながら引き受けてくれた。相変わらずチョロイ。


 とはいえ実際アンリが一番適任だろう。ペータは明らかにこういうことには向いてないだろうし、ユナはようやく妹のミカと一緒になれたのだから今は休ませてあげたい。


 しかし死した人間を半悪魔として蘇らせたことは本当に正しい行為だったのだろうか。考えようによっては、そのままあの世に逝かせた方が彼らのためだったかもしれない……。


 何が正解かなんて誰も教えてはくれない。だが一つだけ言えるのは、僕は自分のしたことに後悔などないということだ。



「!」



 大広間の扉をノックする音がしたので、僕は考え事をやめて顔を上げた。おそらくユナだろう。ユナには少し前にここに来るよう伝えておいたのだ。



「失礼します」



 静かに扉が開き、案の定ユナが入ってきた――何故かミカも一緒に。ユナの右腕に強く抱きついている。



「呼んだのはユナだけのはずだが……」

「も、申し訳ございませんユート様。ミカがどうしても私から離れようとせず……。ほらミカ、部屋に戻って!」

「ヤだ。私、お姉ちゃんのことが好きで好きでしょうがないから、ずっと一緒じゃないと寂しくて死んじゃう。お姉ちゃんは?」

「わ、私も、ミカのことは大好きだけど……」

「なら何も問題ないよね」



 すっかり仲良くなったものだな。仲が良すぎて見ているこっちが胸焼けしそうになるほどだ。



「まあよい。これからする話はミカにも関係あることだからな」

「お心遣い、痛み入ります……」



 するとミカが番犬のような目つきで僕を睨みつけた。



「何こいつ。お姉ちゃんに向かって偉そうに……」

「く、口を慎みなさいミカ! ユート様は貴女の命の恩人なのよ!? この御方がいなかったら今頃ミカは――」

「そんなの知らない。お姉ちゃんは私のことだけ見てればいいの」

「あのねミカ、いくら世界で一番可愛いからって何を言っても許されるわけじゃないのよ!」

「ううん、私は一番じゃない。だって世界で一番可愛いのはお姉ちゃんだから」

「もう、ミカったら……」



 何これ? 何を見せられてんの僕?



「ハッ! ももも申し訳ございません、ユート様の眼前でこんな茶番劇を……!!」

「……気にするな。仲が良いのは喜ばしいことだ」



 つい最近まで殺し合いを繰り広げていた関係だと思うとギャップが凄いけども。



「ところでユート様、私に話とは……?」

「うむ。ユナ、お前にはしばらく覇王城から離れてもらおうと思っている」

「……えっ!?」



 真っ青になった顔でユナは声を上げた。



「な、何故ですか!? もしやユート様の気分を害してしまった罰でしょうか……!?」

「すまん、言い方が悪かった。ただお前に長期休暇を与えようと思っただけだ」

「……長期休暇、でございますか?」



 キョトンとした顔でユナが聞き返す。



「ああ。お前たち姉妹は何年もの間引き裂かれ、今ようやく絆を取り戻したのだ。これを機に二人だけの時間を作ってやりたいと思ってな。こんな城にいては気も休まらないだろう」

「ユート様……!!」



 ユナの瞳が揺れる。僕が二人にしてやれることと言ったらこれくらいのものだ。



「ふーん。この人、なかなか良いこと言うじゃん」

「こらミカ!」



 はは……と僕は心の中で苦笑した。僕はこういった態度でも全然構わないが、もしアンリがいたら目を血走らせながら激昂してただろうな。



「それで、どうするユナ?」

「…………」



 ユナは少しだけ思案する様子を見せた後、顔を上げた。



「お気持ちは非常に嬉しいです。しかし今の私達があるのはユート様の御陰です。その恩に少しでも報いるため、今はユート様のお力になれることを第一に考えております。一生掛けても返せる恩ではないかもしれませんが……」

「……本当によいのか?」

「はい。人間をこの世界から滅亡させるという、ユート様の悲願はまだ叶えられておりません。私にできることがあれば是が非でも遂行する所存です」



 そんな悲願は微塵もないけどね?



「私はミカの姉であると同時に、ユート様にお仕えする四滅魔の一人です。ユート様が悲願を叶える前に城を離れることなど、心苦しくてできません」

「……そうか。良き配下を持って余は幸せだ」

「ありがたき御言葉……」

「だが、たまには休息も必要だ。長期とは言わんが、数日くらいどこかで羽を伸ばしてきたらどうだ? 余も完全に回復するまで大きく動くつもりはないからな」



 幻獣との戦いで僕は力を使いすぎた。万全の状態に戻るまでまだ時間が掛かるだろう。たとえ万全の状態になっても人間を滅ぼす気なんてないけども。



「ユート様がそう仰るのでしたら……御言葉に甘えさせていただきます。ミカもそれでいい?」

「私はお姉ちゃんが一緒なら何だっていい」



 更に強くユナの腕に抱きつきながらミカが言う。続きは部屋でやらせよう。



「用件以上だ。下がってよいぞ」

「はっ!」



 ユナは深々と頭を下げ、ミカと共に大広間から退室した。



「お姉ちゃん私、海に行きたい」

「そうね。じゃあ今度水着を買いに行かなきゃね」



 扉の向こうからこんな会話が聞こえる。最初はミカを覇王城に住まわせることに些か不安はあったが、幸いミカが七星天使の一人だと知っている悪魔は僕とペータくらいだし、今のところ問題はなさそうだ。

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