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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第9章 幻獣復活編
208/227

第208話 絆の力

 時は少々遡り、亜空間内――



「ユートの力になれるかどうかは分からないが、試してみる価値はある……」



 サーシャの言葉に、セレナ、アスタ、スー、リナの四人が注目する。



「今から私の【能力共有】を使い、皆で【能力付与】の呪文を共有する」



 どちらも似たような呪文だが、【能力共有】は一つの呪文を複数人で共有する呪文、【能力付与】は一つの呪文を他者に与える呪文である。



「えっと、【能力共有】で【能力付与】を共有……。すまん、どういうことだ?」

「流石はアスタ。理解力が著しく欠けている」

「な、何だと!? こんな時に本当のことを言うんじゃねえ!」

「……つまり【能力付与】の呪文を、アタシ達全員で使えるようにするってこと?」

「そうだ。そして【能力付与】を使い、ユートに皆の呪文を届けるんだ」



 このサーシャの発言に、四人とも目を丸くした。



「ユートに、アタシ達の呪文を……!?」

「そういやアイツ、呪文は使えなかったよな。確かにそれが上手くいけば、アイツの力になれるかもしれねえが……」



 呪文を使えば【変身】が解けて覇王であることがバレてしまうため、ユートはアスタ達の前では呪文を一つも所持していない人間として振る舞っていた。



「でも、そんなことが可能なんですか?」



 リナが疑問を口にする。通常【能力付与】は目の前にいる者にしか呪文を与えることはできない。しかもここが亜空間内とあっては尚更だ。



「本来なら不可能だ。だが……」



 サーシャは一旦言葉を切り、改めて亜空間内を見渡した。



「先程はっきりと、ユートの苦しみが伝わってくるのを感じたはずだ。ならばきっと、ユートと私達は〝見えない何か〟で繋がっている。それを強く信じれば、不可能を可能に変えることだってできるかもしれない」

「見えない何か、って?」



 スーの問いに、サーシャは決まり悪げに頬を掻く。



「あまりこんなことを言う柄じゃないが……。友情とか絆とか、そういう類のやつだ」

「プッ、ハハ! 確かに似合わねーな!」

「でも、嫌いじゃない」

「アタシ達の想いを、ユートに届けるわよ!」

「サーシャさん、お願いします!」



 全員の強い意志を受け取り、サーシャは頷いた。



「では、やるぞ!」




  ☆




 幻獣の攻撃が炸裂する直前、僕は確かに感じた。セレナ、サーシャ、リナ、アスタ、スーの五人が、僕に力を貸してくれていることを。



「余は【重力操作】を発動した。これは文字通り重力を操作する呪文。重力を引き上げる貴様の【天界重圧】にとっては相性最悪の呪文だな」



 僕が空中に浮いているのも重力を操作しているからに他ならない。【重力操作】はセレナの呪文。そのおかげで僕は窮地を脱することができたのである。



《有り得ぬ!! 我の【絶望の重税】によって貴様が所持する全ての呪文の消費MPは4000になっている!! 今の貴様では呪文を使うことはできぬはずだ!!》

「理屈ではそうだな。だが現に余はこうして呪文を使えている。何故だろうな?」

《ぐっ……!!》



 幻獣の【絶望の重税】の対象となるのは僕の所持呪文のみ。よってセレナの呪文である【重力操作】にまでそう効力は及ばないのだ。だが奴には知る由もないだろう。


 奴が動揺している今が反撃のチャンスだ。借りるぞアスタ!



「呪文【電撃祭】!!」



 無数の電撃の塊を生成し、幻獣に向けて一斉に放つ。奴にそれらを回避するほどの機動力などあるはずもなく、一つ残らず幻獣の肉体に直撃した。



《ぐおおおっ……!!》



 幻獣 HP 1567/2000



 よし、確実に効いている。【弱者世界】の効力によってDEFが著しく低下しているおかげだ。



《お……おのれえ!!》



 幻獣が立て続けに【天界雷撃】を放つが、どれも僕に命中することはない。余裕がなくなってきている証拠だ。再び僕は無数の電撃の塊を生成し、幻獣に炸裂させた。



 幻獣 HP 1088/2000



 奴のHPが半分近くまで削られる。このままいけば――



《愚か者め……我が回復呪文を使えぬとでも思ったか!? 呪文【無限快癒】!!》



 幻獣が呪文を発動する。が、奴のHPに変化はなかった。



《馬鹿な、何故……!?》

「回復できなくて当然だ。貴様は己の特性すらも忘れたのか?」

《!!》



 幻獣は言った。『我の特性により、我の呪文を受けた者はその命が尽きるまで回復呪文は適用できぬ』と。幻獣は僕の【反射穴】によって自分の【天界雷撃】をその身に受けている。よって奴自身の特性によって、奴は回復呪文を適用できないのだ。



「己の特性に苦しめられるとは、滑稽だな」

《元人間風情が……調子に乗るなあ!!》



 幻獣が右腕を伸ばし、空中にいる僕を直接握りつぶそうとしてくる。スー、次はお前の呪文を借りるぞ!



「呪文【憑依】!!」

《っ!?》



 幻獣の動きが止まる。【憑依】は意識を乗っ取る呪文。さすがに幻獣の意識を完全に掌握するのは無理だが、一時的に動きを制限する程度ならできる。



《このっ……!! 呪文【永遠解呪】!!》



 幻獣が【憑依】を解除する。だがこの隙に僕は半径三十メートル以上ある巨大な電撃の塊を生成し、幻獣の脳天に爆裂させた。



《がはっ……!!》



 幻獣 HP 453/2000



 もう一息だ。もう一息で奴のHPを0にできる。



「元人間風情、と言ったな。確かに力という点で見るなら、余はかつての覇王に劣るかもしれん。だが、元人間だったからこそ手に入れられたものもある」



 そう。人間だったからこそ僕は、リナやサーシャ、アスタ、スー、そしてセレナとの絆を紡ぐことができた。その絆が今、僕の大きな力となっている。それが僕と、かつての覇王との違いだ。



《黙れ!! 呪文【強制隔離】!!》



 幻獣が呪文を詠唱するが、何も起きない。



「ふっ、とうとう余をこの場から隔離する手段に出たか。しかし残念ながら【弱者世界】の中では転移系呪文は発動できんぞ」

《な……!?》



 次の攻撃で終わらせる。最後はお前の呪文を使わせてもらうぞ、サーシャ。



「呪文【星龍の嘆き】!」



 周囲の空間に歪みが生じ、無数の〝羽根〟が出現する。



《くっ……呪文【完全障壁】!!》



 僕と幻獣の間に巨大な障壁が立ちはだかる。おそらく【絶対障壁】の更に上をいく防御系呪文だろう。しかし僕は笑みを浮かべてみせた。



「悪いな。【星龍の嘆き】に防御系呪文は通用しない」

《……!!》

「さらばだ、幻獣よ」



 全ての羽根を一斉に射出する。それらは障壁を容易く貫通し――幻獣の全身に豪雨の如く襲い掛かった。



《ぐおおおおおおおおおおっ!!》



 幻獣 HP 0/2000

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