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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第9章 幻獣復活編
206/227

第206話 ラファエの魂

書籍第1巻、7/10に発売です。詳しくは活動報告にて!

 時は遡り、キエルが救援に駆けつける直前の出来事。



『ユート……さん……』



 何者かが念話で僕の脳内に語りかけてくる。まさか、この声は――



「ラファエなのか!?」

『はい……』



 そうか。ガブリの魂が幻獣復活の生贄にされたのであれば、ガブリが取り込んでいたラファエの魂も同時に生贄にされていたとしても何ら不思議ではない。どうやらラファエが幻獣の体内から僕に念話を送っているようだ。



「すまなかった、ラファエ。お前がガブリに殺されたのは、余にも責任がある。謝って済むことではないだろうが……」

『ユートさんは悪くありません。それに今は、そんなことを話してる場合ではないはずです』

「……そうだな」



 込み上げてきた贖罪の気持ちを、僕は胸の内に押し留めた。



『聞いてください。僕に考えがあります』

「考え?」

『僕の【弱者世界】を使って、幻獣のステータスを強制的に補正させるんです。そうすれば幻獣を倒すことができるはずです』

「……!!」



 確かに【弱者世界】が発動すれば、幻獣は大幅に弱体化し、まともに闘うこともできなくなるはずだ。いくら幻獣といえど、あの呪文に抗うことはできないだろう。身をもって体験した僕には分かる。



「……余に力を貸してくれるのか?」

『勿論です。こんな怪物を野放しにしておくわけにはいきません』



 自分の胸が熱くなるのが分かった。僕のことを恨んでいてもおかしくないだろうに……。



『ですが、魂だけの状態では呪文を発動することができません。今の僕は幻獣の一部にすぎないので、呪文発動の主導権は幻獣にあるんです』

「……だろうな」



 何か方法はないものか――そう思った矢先、ラファエが驚きの一言を放った。



『ですからユートさん、僕の魂をユートさんの中に取り込んでください』

「何……?」

『そしてユートさんが、僕の『弱者世界』を使ってください』



 つまりガブリがやったようなことを僕にもやれというのか。確かにラファエの魂を取り込んだガブリも、僕との闘いでその力を存分に使っていたが……。



「本気で言ってるんだな?」

『はい。少なくとも幻獣の中よりはマシでしょうから』

「……ふっ。そいつは結構」



 しかし問題は、ラファエの魂を取り出す方法だ。幻獣の体内には、奴が復活する際に生贄に捧げられた数多の魂が取り込まれている。その中からラファエの魂を探り当てるには――




  ☆




 この直後にキエルが救援に駆けつけ、かつての覇王の魂を引きずり出すことで奴を弱体化させる策を持ちかけられた。だから僕はその時に、覇王の魂だけでなくラファエを魂の位置を見出してほしいと頼んでいたのである。


 ラファエの魂が覇王の魂のすぐ傍にあったのは幸いだった。おかげでその二つの魂を同時に引きずり出すことに成功し、幻獣に覇王の魂のみを奪ったと思い込ませることができた。だから奴は僕らが二重に策を弄していたことに気付かなかったのだろう。


 しかしこの策は賭けでもあった。何故なら【弱者世界】は詠唱してから効力が発揮されるまで長い時間を要するので、その前に僕が死ねば一巻の終わりだからだ。だが勝利の女神は僕に味方してくれたようだ。



『やりましたね、ユートさん』

「……ああ」



 上空に広がるオーロラを見上げながら、僕は身体の中から聞こえるラファエの声に返事をした。この通りラファエの魂は既に取り込み済みである。しかし体内に他者の魂が存在しているというのは、なんとも変な感じだ。



『ラファエてめえ、どういうつもりだあ!!』



 するとガブリが念話で怒りの声を上げた。どうやら奴も僕とラファエが結託していたことに気付いたらしい。



『思い出せ、セアルの言葉を!! 幻獣の力をもって覇王を滅ぼすことがあいつの願いだったはずだ!! てめえの行為はセアルの遺志を裏切ることになるんだぞ!! それでもいいのか!?』



 ラファエはセアルへの罪滅ぼしの為に僕に闘いを挑み、結果命を落とした。だからラファエがセアルの遺志を優先したとしても、僕にそれを責める資格はない。だが――



『ガブリさん。僕はもう、貴方の言葉に惑わされたりしない! 僕はユートさんと共に、幻獣を滅ぼす!!』



 毅然とした声で、ラファエは宣言した。



『このっ……三下の分際でえええええ……!!』



 覇王 Lv 999


 HP 2000/2000

 MP 2000/2000

 ATK 100

 DFE 100

 AGI 100

 HIT 100



 当然ながら僕も【弱者世界】の効力によってステータスの強制補正を受けている。だが幻獣の力を大幅に削ぎ落としたことを考えれば安い代償だ。これまで二度に渡って僕を苦しめた【弱者世界】が、今度は僕の大きな助けになっているというのは、なかなか皮肉な話だ。



「さあ、これで余と貴様の力の差はなくなった。勝負は最後まで分かんぞ」



 ステータスが完全に同じである以上、ここからは鎬を削る闘いになるだろう。だが僕の見立てでは奴の所持呪文はどれもMPの消費が尋常ではなく、MPが2000しかなければまともに呪文も使えないはず。おまけに奴はそのデカイ図体のせいで機動力は皆無。よって僕の方が有利な闘いになるだろう。そう思っていたが――



《フッ……ハハ……ハハハハハハハハハハ!!》



 そんな僕の考えを嘲笑うかのように、幻獣は豪快に笑い声を上げた。



「……何がおかしい?」

《我を策に嵌めたことは見事だったと言っておこう。だが惜しかったな。我の力は貴様の戦略の遙か上をいくのだ》

「何だと……!?」

《見せてやろう。呪文【死者の供物】!!》



 幻獣が呪文を詠唱した。するとあらゆる方角から無数の光が集まり、幻獣の身体に吸収されていく。一体何が起きている……!?



 幻獣 MP 2029573/2029573



「なっ……」



 僕は幻獣のステータスを見て唖然となった。奴のMPが200万を超えた、だと……!?



《【死者の供物】は死者のMPを我がものとする呪文。下等生物共も少しは役に立つものだな》



 まさか【絶滅世界】によって死した世界中の生物から一瞬でMPを吸収したというのか。なんて奴だ……!!



 これでは幻獣が圧倒的に有利だ。【弱者世界】は呪文によって上昇したステータスまでは補正できない。どうする……!?



『ユートさん! ユートさんが僕との闘いの最後に使ったあの呪文なら……』

「!」 



 そうか。上昇したのはあくまでMPのみ、HPやその他の数値はそのままだ。ならば〝あの呪文〟でいけるはず。ここは速攻で決着を――



《速攻で決着をつける、か?》

「……!! 呪文【神罰の――」

《呪文【絶望の重税】!!》



 僅かな差で幻獣の呪文が先に発動し、僕の足下に巨大な魔法陣が出現した。先程の【絶望の宣告】とは陣の形が違う。今度は何を……!?

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