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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第9章 幻獣復活編
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第193話 覇王vs幻獣

「呪文【死の宣告】!!」



 最初に動いたのは僕。対象に死を与える呪文を発動し、黒い筋が幻獣の身体に広がっていく。この一手で葬れるほど甘い相手ではないだろうが、まずは小手調べだ。



《愚かな。その程度の呪文が我に通用すると思うか? 呪文【永遠解呪】!》



 幻獣が呪文を唱えた瞬間、黒い筋は幻獣の身体から跡形もなく消滅した。



《我が身に対して発動された呪文を〝存在〟ごと抹消する呪文。これで貴様はその呪文を永遠に発動することはできぬ》



 呪文の解除だけではなく、呪文の存在自体も消し去るとは……。【解呪】の完全上位互換というわけだ。やはりこれくらいのことはしてくるか。



《どうやら貴様は身の程を弁えていないようだな。まずは跪くことから覚えてもらおうか。呪文【天界重圧】!》



「……ぐっ!?」



 突然全身に凄まじい負荷が掛かり、思わず膝を折りそうになる。まるで身体中に巨大なおもりを付けられたかのような感覚だ。



《貴様に掛かる重力を通常の20倍に引き上げた。さあ、跪くがいい》

「誰が……跪くだと……?」



 僕はなんとか堪え、立ったままの状態を維持する。しかしこの重力下ではまともに動くこともできない。業腹だが【天界重圧】を解除しなければ。


 だが僕が所持する【解呪】で解除できるのは第四等星以下の呪文のみ。おそらく【天界重圧】はそれより上、よってこれ単体では解除できない。ならば……。



《痴れ者め。我を前にしてその態度、万死に値する。よって貴様には天誅を下す――呪文【天界雷撃】!!》



 鼓膜が破けそうになるほどの轟音が鳴り響き、上空から雷撃が迸る。これを喰らってはならないと、僕の本能が告げている。


 僕は刹那の間に次の手を講じる。【天界重圧】を解除して回避――間に合わない。【瞬間移動】を発動して安全圏に避難――座標を指定する時間はない。こちらの攻撃で相殺――確実とは言えない。となると、残る手はこれだけだ。



「呪文【絶対障壁】!!」



 あらゆる攻撃を遮断する障壁を頭上に展開させる――が、直後に僕は驚愕に打ちのめされた。障壁は老朽化したガラスのように木っ端微塵に砕け散り、雷撃はそれをいとも容易く貫通したのである。



「がはっ……!!」



 結果、僕は雷撃をモロに浴びてしまった。肉体が粉々に破壊されたと錯覚するほどの激痛が僕を襲う。今まで【絶対障壁】で防げない攻撃などなかったというのに、幻獣の一撃はその常識をあっさりと覆してしまった。



 覇王 HP4678905687/9999999999



 ステータスを見ると、HPが半分以下まで削られていた。たった一撃で僕にこれほどのダメージを与えるとは。これが幻獣の力か……!!



《ほう。我の天罰を受けてまだ命があるとはな。褒めて遣わす》

「……呪文【等星変化】【解呪】!」



 幻獣が感心している隙に、二つの呪文を同時に発動した。【等星変化】によって【天界重圧】の等星を下げ、【解呪】でそれを解除。セアルとの闘いでもやった手法だ。



「呪文【覇導砲】!!」



 身体の自由を取り戻し、すぐさま僕は呪文を詠唱して掌から膨大な闇のエネルギー砲を幻獣目がけて放った。威力は【覇導弾】の数十倍に匹敵する代わりに反動で数秒間呪文を詠唱できなくなるが、この相手に出し惜しみをしている余裕はない。


 幻獣の巨大さには面食らったが、それが奴の弱点でもある。あれほどの図体なら攻撃を回避するほどの機動力は確実にない。よって必然的にこちらの攻撃は全て必中となる。この放射速度なら【永遠解呪】の発動も間に合うまい。


 僕の狙い通り、【覇導砲】の一撃は幻獣の腹部に炸裂した。



「何……!?」



 が、驚きの声を上げたのは僕だった。幻獣は水鉄砲の水でも当たったかのごとく、【覇導砲】の直撃を歯牙にもかけていなかったのである。



《……貴様の力はその程度か?》



 余裕の表情で幻獣は僕は見下ろす。この一発で倒せるなどとは思っていなかったが、まさか全く効いていないとは。



《所詮は紛い物の魂か。このまま貴様を葬ったところで面白味がない……少し遊んでやるとしよう。呪文【死者狂舞】!》



 幻獣の体表から数多の泥の塊が溢れ出し、次々と地面に落下する。その泥の塊一つ一つが膨張していき、やがて生物の姿を形成した。数は千を優に超えているだろう。


 その先頭には見覚えのある顔があった。間違いない、あれは僕がこの手で葬った、七星天使のウリエルだ。



「覇王……貴様に殺された恨み……ここで晴らさせてもらうぞ……!!」



 狂気に満ちた目で僕を睨みつけるウリエル。その隣りには、同じく七星天使のイエグが立っていた。まさかこれら全てが死者だというのか……!?



《此奴らは全員、貴様を始め悪魔の手で殺された者共だ。貴様たちが殺めた者共によって最期を遂げるというのも、また一興かもしれぬな》



 ガブリが僕との闘いで【死者乱舞】という似た名前の蘇生呪文を使っていたが、あれは死者の血を媒介にする必要があったし、まして何人もの死者を蘇生させることなど不可能だろう。


 しかし幻獣は媒介すらも必要とせず、しかも一度にこれだけの死者を蘇生してみせた。もはや驚くのを通り越して畏怖すら覚えてしまう。



「呪文【蜘蛛金糸】!!」



 気付けば周囲の物体が全て金塊に変化しており、それらが蜘蛛の糸のように細くなって僕の両腕両足を縛り上げた。


 イエグの仕業か。こういう呪文を使う女だったなと、以前の『邪竜の洞窟』での闘いが脳を過ぎる。



「呪文【氷槍の裁き】!!」



 続けてウリエルが呪文を詠唱し、数多の氷の槍が出現する。それら全てが僕に向けて放たれ、イエグの呪文で身動きを封じられた僕の全身に炸裂した。


 そういえば僕が覇王に転生して初めてダメージを受けたのがこの呪文だったな。だが今は過去の記憶に浸っている場合ではない。



「侮るなよ……!!」



 僕はウルエルの攻撃に一切怯むことなく、両腕両足を縛っていたイエグの金糸を自力で引きちぎった。所詮はこの程度。生前僕に歯が立たなかった奴らが蘇ったところで何の脅威にもなりはしない。


 既に【覇導砲】の反動は解けた。全員まとめて一掃してやる。



「亡霊共よ、失せろ。呪文【大火葬】!!」



 幻獣が蘇らせた者達を紅蓮の炎が包み込む。死者を埋葬するにはお誂え向きの呪文だろう。やがてウリエルやイエグを含めた死者達は絶叫と共に今の形を失い、泥の塊に戻った。たかが呪文で蘇っただけの存在、消し去るのは容易い――



「……何!?」



 衝撃の光景に僕は目を奪われた。泥の塊が再び膨張を始め、それぞれの死者の姿を取り戻したのである。まるで【大火葬】を発動する前に時間が巻き戻ったかのようだ。



「再生した、だと……!?」

《そう。【死者狂舞】で蘇った者は生半可な攻撃では瞬時に再生する。貴様如きの呪文で消し去ることなど不可能だ》



 僕は心の中で舌打ちをする。たとえ脆弱な者達でも、何度も再生するとなると非常に厄介だ。しかもその数は千以上。幻獣に加えてこいつらの相手までしなければならないのか……!!



「ユート様!!」



 その時だった。背後から聞き慣れた声に名を呼ばれ、僕は振り返った。

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