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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第8章 謀略のガブリ編
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第161話 アンリvsガブリ

 悪魔領の西地区で交戦していたペータとガブリ。今ペータは全身傷だらけで地面に横たわり、苦しげな呻き声を上げていた。その様子をガブリは気味の悪い笑みを浮かべながら眺めている。



「つ……強いっす……」



 それは呪文で生成された分身とは思えないほどの強さだった。否、そもそも目の前の敵は本当に分身なのだろうかと、ペータは疑問を感じていた。



「まさか……アンタ……!?」



「ンッフッフッフ。そう! 四人の俺のうち三人は分身で一人は本物。そしてこの俺こそが本物のガブリ様だ!!」



 ペータは歯噛みする。相手が分身だと思って油断していたのは否めなかった。思えば分身にしては気配が強大だと感じた時点で気付くべきだったかもしれない。最初から本物だと知った上で闘いに臨んでいれば、多少なりとも結果は違っていただろう。



「にしても流石は四滅魔の一人だ。俺もだいぶダメージを負っちまった。ラファエの力を吸収する前の俺だったら危なかっただろうなぁ」

「力を……吸収……!?」

「ああ。俺は同じ七星天使のラファエを殺し、その力を取り込んだのさ! 今の俺は覇王にも匹敵――いやそれ以上の力を得たと言っていいかもしれねーなぁ!」



 ガブリが言い放った真実に、ペータは戦慄を覚えた。



「仲間を手にかけるなんて……正気っすか……!?」

「なぁに、アイツは明らかに自分の力を持て余してたんだ。俺に吸収されてむしろ喜んでるだろうぜ!」



 仲間を殺したことに何の負い目も感じていないガブリを見て、ペータはこの男が外道だと理解する他なかった。



「だが安心しな、テメーは殺したりしねえ。テメーには人質っつー重要な役目を担ってもらうからよ」

「…………」

「しっかし覇王も薄情な奴だよなぁ。俺はちゃんと四人の中の一人が本物だって覇王に教えたんだぜ? 誰かが本物の俺と闘うことになるかもしれねーってのに、それに関してアイツは何の対処もしなかった。つまりテメーは見捨てられたも同然ってわけだ! 同情しちゃうぜまったく!」

「……ユート様のことを……悪く言うなっす……!!」



 ペータはなんとか立ち上がろうと歯を食いしばる。



「ほう、まだ闘う気力が残っているとは驚きだ。こりゃもう少し痛めつけてやる必要がありそうだなぁ……!!」



 ペータに向けて右手をかざすガブリ。だが今のペータにガブリの攻撃を回避する術はない。ガブリが呪文を唱えようとした、その時――



「ペータ!!」



 一人の女悪魔がこの場に現れた。それはペータの念話を聞いてすぐさま駆けつけたアンリだった。



「アンリ……来てくれたんすか……!?」

「当たり前だ! 大丈夫か!?」



 アンリがいた場所からここまでの距離は常人ならば半日は掛かるだろうが、アンリのスピードはものの数十秒で到達を可能にした。


 思いがけないアンリの登場に、ガブリはさぞ嬉しそうに破顔してみせる。



「これはこれはアンリちゃん! 分身じゃ物足りなくて本物の俺にまで会いに来てくれたのか! こんなにハッピーなことはねえなぁ!」

「黙れ……!!」



 アンリは怒りに満ちた目でガブリを睨みつける。そして奴の気配が、先程闘ったガブリの分身とは明らかに異質であることに気付いた。この男こそ七星天使のガブリだとアンリは確信を得た。



「わざわざここまで来てくれたってことは、やっぱり俺とのお茶の誘いを受けてくれる気になったのかな?」

「黙れと言っている!! 私の仲間を傷つけた以上生きて帰れると思うな!!」

「……はぁ。そりゃ残念だ」



 またしても拒絶されてしまい、ガブリは深々と嘆息した。



「予定変更だ。人質になってもらうのはアンリちゃんにするぜ。正直幼女じゃテンション上がんねえからなぁ」

「この私を人質にするだと? やれるものならやってみろ……!!」



 アンリは【自害剣】を発動し、再びその手に禍々しい剣を握りしめる。



「駄目っす……あいつは強い……今すぐ逃げるっす……!!」

「悪いがペータ、それはできない相談だ。仲間を傷つけた敵に背を向けるなど私のプライドが許さない」

「アンリ……」

「それに、この男はいずれユート様の脅威となり得る。ユート様の第一の側近として、私は奴をこの場で始末する」



 アンリの揺るぎない決意を聞いて、ペータは止めても無駄だと悟った。



「ンッフッフッフ。気合い十分だなアンリちゃん。ではイエグを葬ったその実力、しかと見せてもらうぜ……!!」



 場の空気が緊迫感を増していく。四滅魔のアンリと七星天使のガブリによる闘いの幕が今、切って落とされた。



「呪文【月光の恩恵】!」



 手始めにガブリは回復呪文を発動し、ペータとの闘いで受けたダメージを回復させた。【月影分身】によって三体もの分身を生成したとはいえ、ガブリのMPはまだ十分な余力がある。



「呪文【自害点オウンゴール】」



 対するアンリは静かに呪文を唱え、それを【自害剣】に纏わせる。そして間髪入れずにガブリとの距離を詰め、剣撃を炸裂させた。


 だが、ガブリへのダメージは0。【自害剣】は自害専用の剣、自分を傷つけることはできても他者を傷つけることはできない。アンリは地面を蹴って後退し、再びガブリと距離をとった。



「おやおや。また【自害剣】と【階層低下】のコンボで俺のレベルを下げ、【自害強要】で自害させるって戦法かぁ?」



 ガブリは分身との意識を共有していたため、アンリが分身との闘いで披露した戦法はしっかりと伝わっていた。無論【自害剣】が敵にダメージを与えられないことも承知しており、ガブリは敢えて避けることはしなかった。



「安心しろ。貴様とて腐っても七星天使の一人。同じ手が二度も通用するとは思っていない」

「ほう。それなりに評価してくれてるってわけか、嬉しいねえ。なら今度は何を見せてくれるのか楽しみだ。呪文【月光砲】!!」



 ガブリの右手から光の砲撃が放たれる。ラファエの力を吸収したことで【月光砲】の威力も格段に上昇していた。



「アンリ、避けるっす!!」



 ペータが叫ぶ。しかしアンリは不敵な笑みを浮かべたまま、その場を動かない。



「なっ!?」



 驚嘆の声を上げたのはガブリだった。ガブリが放った【月光砲】はアンリに届く前に180度軌道を変え、逆にガブリを標的としたのである。



「ぐはあああっ!!」



 予想外の事態に反応が遅れ、ガブリはもろに光の砲撃を喰らってしまった。

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