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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第8章 謀略のガブリ編
154/227

第154話 サーシャの贈り物

書籍化決定しました!!


詳しくは活動報告にて!

 ラファエとの闘いを終えてサーシャの別荘に帰還した僕は、サーシャとガブリが闘ったこと、ガブリの非道な攻撃で遠くの町が火の海と化したこと、そして僕とラファエの闘いはガブリが裏で糸を引いていたことなど、サーシャ本人の口から聞かされた。


 ガブリとの闘いで深手を負ったサーシャは、僕がリナに預けておいた【超回復】で治してもらったらしく、こうしてベッドで安静にしている。


 リナはその呪文で多くのMPを消費して疲れたようだったので、今は自分の部屋で寝てもらっている。セレナ、アスタ、スーの三人は町の救援に向かったそうだ。



「僕がラファエと闘っている間に、そんなことがあったのか……」



 一通りサーシャの話を聞き終えた後、僕は呟いた。気が付けば窓の外は朝の明るみが広がり始めていた。



「……ラファエとは、ちゃんと分かり合えたのか?」



 サーシャの問いに、僕は力の抜けた笑みを浮かべた。



「ああ、あいつならもう大丈夫だ――って、断言できたらいいんだけどな」



 僕は目を細め、自分の右手を見つめる。



「僕は今まで〝壊す〟ばかりで〝救う〟ことをしてこなかった。正直ラファエを本当の意味で救えたかどうかは分からない……」



 精一杯のことはやったつもりだが、それでもラファエが人間の仲間になる道を選ぶかどうかは五分五分といったところだろう。仮にそちらの道を選んだとしても、それがラファエにとって絶対に幸せなことだとは限らない。



「ふふっ……」



 すると思わぬサーシャの反応に、僕は目を丸くした。



「僕、何か変なこと言ったか?」

「いや、お前は随分と自分を過小に評価するのだと思ってな。お前はこれまで沢山の人々を救ってきたじゃないか」

「……僕が?」



 サーシャは僕の顔を見て、呆れつつも優しげな表情を浮かべる。



「お前がセアルを打ち倒していなかったら、今でも何の罪のない人々の魂が奪われ続けていただろう。人質に捕られたセレナを助けてくれたのもお前だ。奴隷生活で苦しんでいたリナを引き取ったのもお前なのだろう?」

「……!」

「心配せずとも、お前のおかげで救われた者は大勢いる。だからもっと自信を持て」

「……ああ。ありがとうサーシャ」



 自然と胸が熱くなっていく。そうか、僕は壊してばかりじゃなかったのか。まさか六歳の女の子の言葉でそれに気付かされることになるとは。



「話は変わるが……今後のガブリの動きには十分に注意した方がいい。あいつはお前とラファエを闘わせることで何かを目論んでいた」

「……ああ」



 おそらく僕の正体をラファエに暴露したのもガブリだろう。だが僕と闘うように仕向けた理由が謎だ。単純にラファエなら僕を倒せると思ったからか? 仮にラファエが僕を倒していたとしても、それであの男が満足するとは思えないが……。


 僕はこの手でガブリの分身を二度葬っている。一度目は片腕を潰した後【死の宣告】で抹殺し、二度目は拳で胸を貫通して消滅させている。きっと僕のことを相当恨んでいるはずだ。そんな奴が、果たして他人の手で僕が倒されることを良しとするだろうか。嫌な胸騒ぎがする……。



「私がガブリを葬っていればな……すまない」



 サーシャは悔しそうに唇を噛みしめた。


 ガブリのように何をしでかすか分からない輩ほど厄介なものはない。目的の為なら敵どころか味方を陥れることも厭わないだろう。これ以上野放しにはしたくないし、早々に決着をつけたいところだが……焦りは禁物だ。



「僕はそろそろ覇王城に戻るよ。ガブリが本格的に動き出した以上、僕がここにいるとセレナや子供達が危険な目に遭うかもしれない」

「……まあ、否定はできないな」

「海水浴、誘ってくれてありがとな。楽しかった」

「……それはなによりだ」



 本当はもっとセレナ達と遊びたかったという気持ちはあるが、もうそんなことは言ってられない。ガブリの攻撃の被害に遭った町の様子も気になるけど、そちらはセレナ達に任せよう。



「それと一つ、サーシャにお願いがあるんだけど……。しばらくリナをサーシャのアジトで預かってくれないか?」

「リナを? 別に構わないが、何故?」

「おそらくここから先、七星天使との闘いは更に熾烈を極めたものになる。それにリナを巻き込むわけにはいかないし、サーシャの所にいた方が安全だ」



 リナは元々ただの人間の女の子だ。これ以上無理はさせたくない。



「分かった。お前の妹は私が責任をもって預かろう」

「……恩に着るよ」

「しかし、そのことはリナには伝えたのか?」



 サーシャの問いに、僕は首を横に振った。



「多分リナに伝えると『お兄様の力になりたいので絶対にお供します!』って言うだろうし……。リナには黙って行くよ」

「ふふっ、確かに言いそうだな。だが後でリナに怒られても知らんぞ?」

「……それは覚悟しとく」



 思わず僕は苦笑した。



「しかし覇王城に戻るのならセレナ達とはこのまま別れることになるが、お前はそれでいいのか?」

「……ああ。セレナ達は町の人々を救援してる最中なんだろ? その邪魔はしたくないし……今会ったら別れが辛くなる」

「……それもそうだな」



 それに、もう二度と会えないってわけじゃない。七星天使との闘いが終われば、セレナ達とはまたいつでも会えるだろう。


 唯一の心残りは、またしてもセレナと夜の営みができたかったことか……。まあ、お楽しみは後にとっておくということで。



「それじゃ、僕はそろそろ覇王城に――」

「待てユート」



 【瞬間移動】を発動しようとした僕をサーシャが止める。



「私からのプレゼントだ、受け取ってくれ。呪文【能力付与】」



 もはやお馴染みの、自分の所持呪文の一つを相手に与える呪文。サーシャはそれを僕に対して発動した。



「私の【未来予知】をお前に与えた。確か所持してなかったよな?」

「……そりゃ持ってなかったけど、この呪文っていつどんな未来が視えるか分からないんだろ? ただ不便だったから僕に押し付けたんじゃ……」

「まあ、それもあるな」

「おいこら!!」



 思わずツッコんでしまい、それを見てサーシャがクスッと笑う。



「冗談だ。確かに多少不便ではあるが、視える未来によっては今後の対策も立てやすくなるし、所持しておいて損はないと思うぞ。それでも不要だと言うのなら【能力付与】を解除するが」

「……いや、ありがたく貰っておくよ」



 少しだけ考えた後、僕はそう言った。サーシャの言うことは一理あるし、いずれ役に立つ時が来るかもしれない。



「それじゃ、僕は覇王城に戻るよ。色々ありがとなサーシャ」

「なに、こちらこそ。達者でな」

「……ラファエが帰ってきたら、よろしく頼む」



 ラファエがこの場所に帰ってきた時、それはラファエが七星天使としてではなく、人間の仲間として生きる道を選んだことを意味する。しかし七星天使を憎むサーシャにとって、ラファエの存在はあまり気持ちの良いものではないだろう。


 だがそれでも、サーシャは強く頷いてくれた。



「ああ。その時は私達の仲間として、あいつを受け入れよう」



 その言葉を聞いて、僕は心の底からから安堵した。


 こうして僕は【瞬間移動】を発動し、覇王城に帰還したのであった。

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