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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第7章 反逆のラファエ編
145/227

第145話 第二形態

「どうして【弱者世界】まで……!? 一体何をした!?」

「これが第五等星呪文【時間記録タイム・レコード】の力だ」

「馬鹿な!! 第五等星呪文を発動するMPなんて今の貴方には――」



 そこまで言いかけて、ラファエはハッと何かを思い出した顔をした。



「そう、余が【時間記録】を発動したのは数分前のことだ。これを解除することによって、それを発動した時点まで時間を巻き戻した。余のMPが僅かしかないと思って油断したようだな……」



 この呪文をRPGで例えるなら、発動が〝セーブ〟で解除が〝電源を切る〟といったところか。呪文というものは発動の際にはMPを消費するが、解除の際にはMPを必要としない。その盲点を利用させてもらった。



「つまり貴様の【弱者世界】の効力が発揮される前の状態に戻ったというわけだ。当然、余のステータスもな」

「う、嘘だ!! 時間そのものに干渉する呪文を使える者なんて、この世に存在するはずが……!!」

「一つ忠告してやろう。余との闘いにおいては、今までの常識は通用しないと思え」



 形勢の逆転は明白だった。しかしあくまで時間を戻しただけで【弱者世界】を解除したわけではないので、数十秒後には今一度その効力が発揮され、あのオーロラが夜空を彩ることだろう。



「さて。再びステータスの補正を受ける前に、反撃に出るとしよう。呪文【覇導弾】!」



 闇のエネルギーを圧縮させた紫色の物質が出現する。しかしその数は一つや二つではなく、僕らの四方八方を埋め尽くした。その数ざっと1000。一度に生成できる数はこれが限界だが、十分だろう。



「そんな……!!」



 もはや逃げ場もなく、ラファエはただ狼狽えることしかできない。僕は追い打ちをかけるように、更なる呪文を追加した。



「呪文【未来贈与フューチャー・ギフト】」



 そして僕が指を鳴らすのを合図に、数多の【覇導弾】が豪雨のようにラファエに降り注いだ。



「うわあああああっ!!」



 凄まじい爆風と噴煙が巻き起こり、ラファエの悲鳴だけが響き渡る。


 無論ラファエの命を奪うつもりはない。先程ラファエが自らステータスを開示してくれた時にラファエのHPは確認済みなので、それが0にならない程度に調整して【覇導弾】を炸裂させた。


 少々乱暴なやり方だが、これでラファエも僕との力の差を思い知り、これ以上歯向かうことはしないだろう。



「……!?」



 だが次第に噴煙も収まり、視界が明瞭になってきた頃。僕は予想外の光景に言葉を失うことになった。


 【覇導弾】の一斉砲撃を喰らったはずのラファエが、何事もなかったかのように平然と佇んでいた。それだけではなく、160cmほどしかなかった上背が3m近くまで伸び、中性的な顔立ちが鬼のように歪み、全身の筋肉が隆々としている。まるで別人のように変貌を遂げており、一瞬それがラファエだと分からなかったほどだ。



「残念でしたね、覇王……」



 ラファエは邪笑と共に僕を見据えている。僕が動揺を禁じ得ないでいると、ラファエは再び自らのステータスを開示してみせた。



 ラファエ Lv600


 HP55109/55109

 MP68798/68798

 ATK856

 DFE943

 AGI794

 HIT765



「なんだと……!?」



 ラファエのレベルが200から600に上がっており、更に全ステータスが格段に上昇していた。何かの呪文かと一瞬考えたが、そのようなものが発動された気配は一切ない。



「貴様、一体何をした……!?」

「特別なことは何もしていませんよ。ただ僕の封印されていた力が解放されたというだけです」



 ラファエはどこか懐かしむような目で、自分の姿を眺める。



「僕の力は自分でも抑えきれないほど強大すぎた。いずれそれが何らかの悲劇をもたらすことを怖れた僕は、自らの手で力の一部を封印したんです。公然と力を振りかざす貴方には理解できない感情かもしれませんがね……」



 皮肉めいた微笑を浮かべながら、ラファエは更に言葉を続ける。



「僕が命の危機に瀕した時――つまりHPが残り僅かになった時、この封印は自動的に解き放たれる。さしずめこの姿は僕の〝第二形態〟といったところでしょうか」

「……なるほど。とんだサプライズだ」



 七星天使の第三席にしてはやけにステータスが低いと思っていたが、そのようなカラクリがあったとは。だが――



「策士策に溺れるとはこの事だな。まさか貴様自身が発動した【弱者世界】の効力を忘れたわけではあるまい?」



 【弱者世界】はレベル300以上のステータスを強制補正する呪文。よってレベルが200から600になったことで、ラファエもその対象に入ったことになる。


 強制補正から逃れるにはラファエが自ら【弱者世界】を解除するしかないが、そうなったら僕も強制補正を受けなくなるので、より状況は悪化する。いくら第二形態と銘打っても、所詮僕のステータスには遠く及ばないからだ。


 しかしラファエは何も言わず、ただ怪しげな笑みを浮かべるばかり。そして間もなく【弱者世界】が再びその効力を発揮し、夜空にオーロラが出現した。



 覇王 Lv999


 HP2000/2000

 MP2000/2000

 ATK100

 DFE100

 AGI100

 HIT100



 ラファエ Lv600


 HP55109/55109

 MP68798/68798

 ATK856

 DFE943

 AGI794

 HIT765



 だが結果は予想に大きく反したものだった。僕のステータスは【弱者世界】によって強制補正を受けたにもかかわらず、ラファエのステータスは全く変動していなかったのである。



「甘く見られたものですね……。その程度のこと、僕が考慮していないとでも思ったんですか?」



 嘲笑うようにラファエは言った。やはりそれも織り込み済みというわけか。



「さて、今回はどんな手品のタネを仕込んでいたのか、是非知りたいものだな」

「……いいでしょう、教えてあげます。封印の解放によって僕が取り戻したのは〝力〟だけではありません。この第二形態には『第五等星以上の呪文の効力を受けない』という〝特性〟がある」

「特性……だと?」

「そう。もちろん自分が発動した呪文も含めてね。よって第六等星呪文である【弱者世界】の効力を今の僕は受け付けません」



 僕は思わず溜息を洩らした。まったく反則技もいいところだ。これではこちらの第五・第六等星呪文も受け付けないことになる。と言っても今の補正されたMPではそれらの呪文は使えないも同然だが。なんにせよ、更に不利な状況に立たされたことは間違いない。



「さあ……本当の勝負はここからだ、覇王!!」



 ラファエとの闘い――その第二幕が開始された。

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