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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第6章 第一次大戦編
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第112話 城の崩壊

 ――七星の光城最上階・覇王VSセアル――



 セアルの凄まじい攻撃の連続で、床や壁の至る所に大きな亀裂が生じている。このままでは城そのものが崩壊しかねないだろう。



「……そろそろタイムリミットだな」



 床に這いつくばる満身創痍のセアルを見ながら、僕は呟いた。


 正確な時間は分からないが、感覚的に【最期の灯火】が発動して八分は経っているだろう。つまりあと二分ほどでセアルは真の最期を迎えることになる。



 HP8943607688/9999999999



 自分のステータスを確認してみる。この僕が10億近くもHPを削られることになるとはな。これだけのダメージを負うのはこれが最初で最後かもしれない。


 床に手をつき、なんとか起き上がろうとするセアル。だがもはや勝負の行方は火を見るより明らかだった。



「もう充分だろう。貴様では余を殺せないことは分かったはずだ。最期の数分くらい、自分の生涯を振り返る時間に充てたらどうだ」

「黙れ……まだワシは負けていない……!! 呪文【隕石衝突】!!」



 喉の奥から振り絞るように呪文を唱えるセアル。これで【隕石衝突】は五回目。しかし空を見上げても、隕石が落ちてくる気配はなかった。



「どうやらMPの方が先に限界を迎えたようだな。あれだけの大技を繰り返せば無理もないだろう」

「……まだ……だ」



 足をふらつかせながらもセアルは立ち上がる。それを見て僕は小さく息をついた。



「これ以上心を折るのは気が引けるが……致し方ない。呪文【超回復】!」



 HP9999999999/9999999999



 僕の身体を眩い光が包み、HPが完全に元の状態に戻った。



「【超回復】はHPを全回復させる呪文。これで貴様の今までの努力は水泡に帰したというわけだ」

「なん……だと……!?」



 セアルの表情が絶望に染まっていく。



「そろそろ理解したか? 貴様が一体〝何〟と戦っていたのか」



 これで戦う気力も失せただろう。しかし僕の予想に反し、セアルの目はまだ死んでいなかった。



「それでもワシは……最期の瞬間まで戦ってみせる……!!」



 セアルは拳を握りしめ、駆け出した。



「……見事な闘志だ」



 僕は心の底からそう思った。そして正面から向かってくるセアルに対し、僕は静かに右手を前に出した。



「余からの慈悲だと思って受け取るがいい。呪文【大火葬】!」



 その瞬間、セアルの全身を燃え盛る炎が包み込んだ。



「うあああああっ……!!」



 断末魔の叫びを上げるセアル。HPが存在しないのでダメージは発生しないものの、動きを止めるには充分だろう。



「……死人らしく、火葬で幕引きとさせてもらおう」



 セアルは床に倒れ、動かなくなった。もう起き上がってくる気配もない。


 これで正真正銘、決着がついた。【最期の灯火】の効力が切れるまで約一分といったところか。命を賭して僕との闘いに臨んでくれた礼として、その瞬間が来るまで僕が見届けてやるとしよう。



「!」



 と思った矢先、城全体が大きく揺れ始め、壁や床が崩れだした。やはりセアルの凄まじい攻撃の連続に城が耐えられなかったようだ。この感じだと一分も経たない内に崩壊するだろう。どうやらセアルを見届けることは叶わないようだ。



「……仕方ない」



 最後の仕上げをすべく、僕は『魂の壺』まで歩み寄った。これを破壊すれば人々の魂は持ち主の身体へと還る。ようやくだ、ようやくこれでセレナ達を苦しさや寂しさから解放してやれる――



「……!?」



 だが、そこで僕は違和感に気付いた。


 おかしい。前に壺を見た時、その中の〝白く光るもの〟からは生物の鼓動のようなものがハッキリと伝わってきた。だが今見えている壺の中の〝白く光るもの〟からはそれが全く感じ取れない。本当にただ白く光っているようにしか見えなかった。


 嫌な予感が僕の頭を過ぎる。まさか……!!



「ぬうん!!」



 僕は素手でその壺を破壊した。同時に全ての〝白く光るもの〟は線香花火のように儚く消えた。



「偽物か……!!」



 やられた。これは『魂の壺』でも何でもない、ただの大きな壺だ。中の〝白く光るもの〟も呪文か何かであたかも人々の魂のように見せていただけだ。



「……やっと気付いたか。どうやら最後の最後で出し抜けたようじゃな……」



 床に倒れるセアルが不敵に笑ってみせる。



「貴様……本物の『魂の壺』はどこだ!?」

「最初に言っただろう、貴様がここに来ることはワシの【未来予知】が教えてくれたと。ならば当然、貴様の狙いが『魂の壺』だということも分かっていた。敵が求めているものをそのまま置いておく馬鹿がどこにいる……?」

「御託はいい!! 本物をどこに隠したのか言え!!」



 僕は思わずセアルの胸ぐらを掴んだ。しかしセアルは薄ら笑いを浮かべたまま何も答えようとしない。これでは何の為に『天空の聖域』まで乗り込んだのか分からない……!!


 すると本格的に城の崩壊が始まり、その場に立つこともままならなくなる。もうこいつを尋問している時間はない。



「くそっ……!!」



 僕はセアルの身体から手を離し、アンリ達に念話を繋げた。



「全員直ちに城外へ退避せよ!! 繰り返す、全員直ちに城外へ退避せよ!!」

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