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HP9999999999の最強なる覇王様  作者: ダイヤモンド
第6章 第一次大戦編
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第102話 突入

「呪文【混沌旋風カオス・トルネード】!!」



 僕は巨大な竜巻を発生させ、下級天使共を彼方へ吹き飛ばしていく。だがこの数相手では焼け石に水だ。


 この前みたいに【地獄の黒渦】でまとめて一掃するか? だが今発動すればアンリ達まで巻き込んでしまう怖れがある。アンリ達を先に行かせるべきか……?



「ここはウチが引き受ける! ユート様達は先に行くっす!」



 そう言ったのはペータだった。



「よいのか?」

「こんな奴らウチ一人で十分っす! それに一度この台詞言ってみたかったんすよ!」

「……では任せたぞ、ペータ」



 僕と他三人はペータを置いて『七星の光城』に向かって走り出した。下級天使と言っても敵の数は尋常じゃないし、ペータ一人で捌ききれるだろうか。



「呪文【彫像外忌ちょうぞうゲーム】!!」



 直後に呪文を発動するペータ。以前は【邪険外忌ジャンケンゲーム】とかいう呪文を使ってたっけ。



「覇王が城に向かってるぞ!!」

「絶対に行かせるな!!」



 案の定、下級天使共は僕に狙いを定める。



「あーくーまーさーんーがーおーこーっーた!」



 するとペータがそのような掛け声を唱えた途端、異変が起き始めた。



「な……なんだこれは……!?」

「ぐあああああ……!!」



 僕達を追いかけていた下級天使共の身体が塵となって消えていくのが分かった。他の下級天使の間からどよめきが起こる。



「天使ちゃん達は全員ゲームの参加者なんすよ? 動いていいのはウチが『あくまさんがおこった』と唱えてる間だけっす!」



 なるほど、日本における「だるまさんがころんだ」みたいなものか。唯一の違いは掛け声を言い終わった後に動いてしまったら死ぬということだ。なんて怖ろしい遊びだろう。



「このゲームを終わらせる方法はただ一つ、ウチの身体に触れることっす。さあ、死ぬまでウチと遊んでもらうっすよ!」



 どうやらペータ一人で大丈夫そうだな。僕は安心してその場を後にした。




 ペータが下級天使共の相手をしている間に、僕達は『七星の光城』の前に到着した。いつ見ても馬鹿でかい城だ。



「呪文【反響定位(エコーロケーション】!」



 まずは呪文で城内にいる者の数を確認してみる。【千里眼】を使う余裕がない時にこの呪文は便利だ。


 数は五人、いずれも強い生命反応を示している。それぞれ誰かまで特定することはできないが、おそらくどれも七星天使のものだろう。つまり七星天使六人中五人がこの城に集結していることになる。やはり僕達がここに来ることを予知していたとしか思えない。だがこれで誘き寄せる手間が省けたというものだ。


 にしても城外にはあれだけ下級天使を配備していたというのに、城内はたったの五人とは。七星天使が五人もいれば絶対に城を守りきれるという自信の表れだろうか。まったく舐められたものだ。



「罠が仕掛けられている可能性もある。念のため注意を払っておけ」



 僕はアンリ達に忠告し、扉を開けて城の中に足を踏み入れる。特に真上から鉄格子が降ってきたり落とし穴が出現したりすることはなさそうだ。罠を仕掛ける時間などなかったのか、そんなものは通用しないと最初から割り切っているのか……。


 まあいい、とりあえず上を目指すとしよう。【瞬間移動】は約1km以上離れた地点にしか転移できないので、少々面倒だが階段を使うしかない。階段は左右に一つずつあるので二手に分かれた方が効率的だろう。



「ここからは二手に分かれよう。余とエリトラは左の階段、アンリとユナは右の階段だ」

「えっ!? な、何故私ではなくエリトラがユート様と!? やはりユート様は私よりもエリトラを信頼しておられるのですか……!?」



 いや単に男女で分かれようと思っただけで深い理由はないんだけど。



「……そうではない、むしろ逆だ。余はアンリを信頼しているからこそ、余が傍にいなくても大丈夫だと思っているのだ」



 なんて適当なことを言ってみると、アンリの表情がパァッと明るくなった。



「そのような深い考えがおありだったのですね! 申し訳ございませんでした!」

「気にするな。それでは二手に――」

「あっ、でもお待ちください! それだとユナの事も信頼していることに……!? ユート様は私とユナ、どちらを信頼しておられるのですか!?」



 相変わらずめんどくさいなこの子!



「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょアンリ。ユート様のご指示なのだからつべこべ言わないの」

「っ! い、言われなくても分かっている!」



 アンリとユナは右の階段に向かって走り出し、僕は安堵の息をついた。ユナのおかげで助かった。そもそも信頼度に順番なんてつけられるはずもない。



「ではエリトラ、我らは左の階段を行くぞ」

「了解しました。ん~~ジェネシス!!」



 クルクルと回るエリトラ。しかしこの空間の影響か、その回転はいつもより遅く見えたのであった。




 僕はエリトラと共に階段を駆け上がり、やがて七階まで辿り着いた。【反響定位】で確認した限りでは、この階に一人目の七星天使がいるはずだ。



「!」



 そのフロアにいる人物を目の当たりにし、僕に僅かな動揺が生じる。なんとそれはキエルさんだった。


 城内にいる七星天使は六人中五人。つまり一人だけこの城にいないことになる。てっきり僕はキエルさんがその一人だと思っていた。キエルさんならこんな時にバイトをしていてもおかしくないからだ。



「……また会ったな、覇王」



 キエルさんは微かに口角を上げ、そう言った。



 ――次に会う時は仲間としてか、それとも敵としてかは分からないがな。



 あの時のキエルさんの言葉が呼び起こされる。ついに敵としてキエルさんと相対する時が来た。それと同時に、キエルさんと雑貨屋で会計のバイトをしたことや、ぬいぐるみを着て風船配りのバイトをした思い出が蘇ってくる。



「……できれば貴様とは戦いたくなかったんだがな」



 思わず僕は本音をこぼした。キエルさんと戦う覚悟は最初からできていたつもりだ。しかし情を完全に捨て去ったと言ったら嘘になる。



「……俺もだ」



 キエルさんはそう言った。きっとキエルさんも同じ心境なのだろう。だがこうなった以上は戦うしかない。それはお互い分かっているはずだ。



「ん~~!! ジェネシス!!」



 するとそんな空気を台無しにするかのように、エリトラが僕とキエルさんの間でクルクル回る。やがてエリトラはピタッと静止し、僕に向けて素早く膝をついた。



「ユート様。ここは我にお任せくださいませ」



 エリトラの口から思わぬ言葉が出た。



「……お前が奴と戦うというのか?」

「はい。理由は詮索いたしませんが、ユート様から彼との戦闘に消極的な雰囲気を感じ取りました。差し出がましいようですが、我にユート様の代わりを務めさせていただけないでしょうか」



 察しが良いな。流石は四滅魔の第一席だっただけのことはある。



「……では任せたぞエリトラ。だが奴は七星天使の第二席、決して油断はするな」

「御意。我のジェネシスに懸け、必ずやユート様のご期待に応えてみせましょう」



 僕はエリトラにこの場を任せ、更に上の階を目指した。キエルさんとはまた違う形で決着をつけることになるだろう……そんな予感を抱きながら。

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