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加賀谷高校文芸部の日常  作者: 椎名覇琉
4/5

ある日の設楽圭の朝

「んー」

 軽やかな機械音に目を覚まし、そのままゴロゴロ。

 何分かそうしていると、階段を上る足音が聞こえた。

「圭くん、起きとる?朝やよ」

 自室の扉が開く音と共に、ゆっくりとした祖母の声が聞こえる。

「起きてるよ。おばあちゃんありがとう」

「そう、良かった。今日は圭君の好きな味噌汁やよ」

 それだけ言うと、祖母は居間に戻って行った。

 素早く着替えて、祖母を追うように居間に入る。

「おじいちゃん、おばあちゃん、お兄ちゃん。おはよう」

 いつも通り、居間に入るのは自分が最後だった。

「圭くんおはよう」

 祖父は、自分の席に腰かけて新聞を読んでいる。

 老眼鏡をかけて、時々唸りながらも一つ一つの記事をしっかり読んでいる。

「圭くん早かったね、おはよう」

 祖母は、キッチンに立ってコーヒーを入れている。さっき言われた通り、ちゃぶ台の上には、ご飯と味噌汁と焼き鮭が並んでいる。

「圭おはよう」

 兄の翠は、パジャマのままで圭を待っていた。いつも通り彼の周りには、日本史の本が山積みになっている。きっと、講義に遅刻するギリギリの時間まで読んで復習、予習をするつもりだろう。兄は昔からそういう人だということを、弟である圭は理解していた。

 祖母が、出来立てのコーヒーをお盆に乗せてこっちに歩いてくる。

「さあ、皆揃ったし食べよか。ほら、翠くんも本下ろして」

 兄の翠も、言われた通り、本を下ろしている。

 祖父も、読んでいた新聞を片付けて食べる準備をしていた。

「いただきます」

祖母が座ったのを確認してから全員で合掌し、声を揃えて食事を始める。

「あ。圭、塩とって」

「はい」

「おじいちゃんはコーヒーじゃなくてお茶やね?はい」

「おお、ありがとう」

 食事を開始した途端に、一気に騒がしくなる食卓。


 数分後。

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」

 圭と翠が同時に立ち上がり、食器を流しに運ぶ。

 すでに着替えているため、後は歯を磨くのみ。

 歯を磨き終えて居間に戻ってきても、家を出る時間まで三十分以上あった。

 何をしようかと思案を始めて、とても重要なことを思い出した。


『ねえ』

『ん?』

『明日、早起きしてくれる?』

『ああ、日直だっけ?』

『そう。いつも通りに起きて一人で登校するか、少し早起きして二人で登校するか…どっちがいい?圭が選んで?』

『んー、じゃあ早起きするよ』

『わ、ありがと。じゃあ、いつもの三十分前に迎えに来てね?』


 …………………。

 忘れてた!

時計を確認すると、時刻はすでにいつもの三十分前。

 やばい、もう行かなきゃ!

「行ってきます!」

 居間に適当に転がしていたエナメルを肩にかけながら、家を飛び出る。

 向かいにそびえ立つ大きな屋敷のベルを鳴らすと、いつも通り侍女が出て来た。

「設楽様、おはようございます。お嬢様ですね?」

「はい」

 では、と言って屋敷に戻る侍女。

 数分待っていると、大好きなあの子が出てきた。

「圭、おはよう。早起きさせてごめんなさい」

 申し訳なさそうに謝る彼女の言葉を遮るように告げる。

「大丈夫だよ。ほら、行こう」

 誰よりも大切な近江華恋と二人で登校。

 これが設楽圭の日常。


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