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プロローグ

連載開始。ノロノロ更新ですが、宜しく。気まぐれですので、ランダム更新です。

 株式会社シスプラチナに勤めるOLの由岐は、げんなりとしながら自宅に帰るためにニュウアイランド(この町の住人はN.Iと呼ぶ)の中枢であるN.Iタワーへ向かっていた。

 由岐は子どもの頃からファッションが好だった。それは今の生活になんの疑念もなく着いてきていて、今勤める会社は無論服のデザインを司る人気ブランドだ。それをそのまま受け入れた。

 好きだ、と言うことは才能よりも強いと信じてきた。だが、同僚の愛花に負けた。今日は会社の中でも優秀な人材が集まり、この夏の新作案を出す会議があったのだ。由岐は入社以来自分の好きだ、を信じて頑張った。それは結果を読び、由岐は昇格した。当たり前のように思えた。だから、今日も自分の案が採用される自信があったのだ。

 だが、負けてしまった。由岐でさえ欲しくなるようなデザインだった。誰もがこの季節ごとにある会議に初登場の筈の愛花を天才として見ていた。

 そう。由岐でさえも。由岐は完全に負けた。敗北したのだ。

 N.Iタワーの入口ドアが圧搾空気の抜ける音がして、メタルのドアが開く。このN.Iに住む人殆んどが、このN.Iタワーの中にあるコンピュータ(PC)の中に作られたサイバー空間に住んでる。

 今から約二十年前に人工の増加に備え、物や人などを電子化してサイバー空間に表示するシステムと同時に、電子物を実体化するシステムが完成したのだ。だから、大都市もといN.IにはN.Iタワーのような場所があり、その外は殆んどが会社や裁判所などの国家施設で埋め尽されているのだった。

 ところが最近になりこの画期的なシステムにも欠点が有ることがわかった。ある日、サイバー内の一部の住居が表示されなくなったのだ。サイバー空間にはそれぞれ管理者がいるが、その管理者は難しい試験をパスしなければ資格がもらえないため、管理者のミスは皆無と言っても良い。驚いたその管理者が原因を解明したところ、なんとサイバー内にウィルスの存在が確認された。

 以来、サイバー内にウィルスが侵入した場合、その付近に住むサイバー住人(私達はC.Pと呼ぶ)に警告し、ウィルスを除去するまでは帰宅させないシステムになっている。

 サイバー空間の現状を伝える電工掲示板には由岐の自宅付近にウィルスが侵入した事が表示されていた。だが、由岐は気付かなかった。今日の出来事が衝撃的過ぎた。

 N.Iに限らずウィルスがサイバー空間に侵入したすることは滅多に無いために、どうせ何も無いのだろうと由岐は掲示板を確認する事無く自宅への帰路にインストールした。

 真っ先に由岐の目に飛込んできたのは、いつもの自宅の光景でなく、黒いドロドロとした物体と青い小さな人か何かだろうか、そんな物が争っている光景だった。もしかしてインストールし間違えたのだろうか。そう考えたが、自らの足元に由岐が気に入って購入した表札が落ちていたため、間違っていない事とこれは不味い状況なのではないかと言う事がわかった。

 と、不意に黒い物体が舞い上がる。人か何かが蹴りあげたらしい。とは言っても人か何かとその物体は大きさが十倍以上違うため、由岐は最初信じられなかった。

 物体が攻撃してこない隙を伺い、青い小さな人か何かが由岐に接近してくる。接近してくる内にわかった事がある。青い小さな人か何かは――

「男の子……?」

 由岐が唖然として立ち尽くしていると、かなり近くまで来ていた少年は顔をしかめ、何かを叫び出す。が、由岐には聞こえなかった。数秒後、大きな影が由岐を覆うのを感じるのと同時に、由岐は少年に抱えられていた。

 金髪が由岐はの顔にかかる。

「アンタ、なに帰って来てんだよ!」

 由岐は自分が先程までいた場所にあの黒い物体が落ちるのをみて毛が立つのを感じた。

「なぁ、おネェさん、聞いてるか?」

 頬を軽く叩かれて漸く正気に戻った由岐に少年は同じ質問を繰り返した。

「いやあの、掲示板見てなくて……」

 少し後ろめたい気持ちで言うと、ジャニーズに入れるのではないか、と言うくらいの顔立ちが一気に苛立つ。

「ちっ。アンタみたいなのがいるから俺らの仕事が大変になんだよ!」

 俺らの仕事、と言う言葉に由岐は反応する。目の前の少年は明らかに十六、七位だ。仕事と言う言葉は似合わなすぎる。

「仕事って?」

 少年は黙って細長い指を迫りつつある黒い物体へと向け、その腰に着いたホルスターから銃を取り出した。ニヤリと笑う口は野性的で、少しでも甘い言葉を吐けば、誰でも惚れそうだ。

「コレ」

 そう言って引金を引き、振り返り打った。白い光線を発しながら進む弾丸を、少年の目は捕えて離さない。白い光線は黒いドロドロの物体へ突き刺さった。命中だ。

 少年は長い金髪をなびかせてもう一度由岐を見た。

「さて、アンタの家は壊れたから、博士の所に行って直してもらいな」

「はぁ。ありがたいんだけど……」

 博士とは誰だろう。さっきの銃は? 由岐は聞きたい事が溢れて言葉に詰まったが、少年は待ってくれないようだ。由岐に着いてこいと言うように目配せして先に歩き出した。

 サラサラの金髪と、頭にあるゴーグルが妙に印象に残った。


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