008
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かぽーん
ただ今湯船には私と、先ほど乱入してきたお二人が少し離れて向かい合うように浸かっています。
入口側から一番遠い場所――窓際には私。入口側にはヴァンくんとエアロくんが、湯船のヘリに両手を広げて踏ん反り返るようにもたれ、私を凝視している。うん、逃げようにも逃げれない布陣だねこれは。
まぁ、二人とも見た目は小学生くらいだし、その位の子に裸を見られて恥ずかしがるような年でもないんだけどさ。それよりも、何がビックリしたって、本当は『エアロくん』だったみたいなんだわ。
いやいや、レディースっぽい恰好――ロングヘアでセーラー服にめちゃくちゃ長いスカート――しているから女子だと思い込んでいたけど本当は男の子だったみたい。あっはっは。
って
「ちっがーーーーう!!違う違う!『あっはっは』じゃないっての、私!」
「「な、なんだよ、急に大きな声出して」」
バシャン、と両手でお湯を叩くと、思った以上に大きな音が鳴った。その音と突然大声を張り上げた私に驚いたようで、二人同時に突っ込んでくる。流石双子。一言一句違わず同じタイミングで突っ込むとか、やるじゃないの。
「あ、ごめん。いやね、なんでエアロちゃ・・・くんは女の子の恰好をしていたのかな、って思って」
「アタイの恰好が変だっての?!」
ギロリと睨まれるが、お互い裸のせいでいまいち緊張感に欠ける。取りあえず知らずに着てたら可愛そうなので、一応教えておくことにする。まぁ自分の事を『アタイ』って言っている所を見ると、意図的なんだろうけどね。
「うーん、変っていうか、エアロくんは男の子だよね?あの恰好はセーラー服って言って私の故郷の女の子が着る制服だったから、女の子だと思ってたんだよね、私」
「ああ、アタイら精霊には性別なんてないから、別に男の服を着ようが女の服を着ようが問題はないのさ」
・・・性別が・・・無い?
いやいやいや!『性別がない』と申されましても!!姿形が完全に上から下まで男の子なら、それは間違いなく男の子になるよね!?私間違ってないと思うよ!?
――あ、はい。何でそんな事、知ってるんだって?それは仁王立ちしてる時にバッチリみちゃったからに決まってますよ。上から下まで。特に下の方は二度見しましたよ、見間違えじゃないかと思ってさ。はい、そこ!お巡りさんとか言わない!不可抗力なんだって!!
「え、でもヴァンくんもエアロくんも男の子の姿形をしてるよね?それなら男の子じゃないの?」
「最初に生まれた時にこの形だっただけで、女性体を取る事も出来るし」
「へーそうなんだ。だったら、女性体に変わってから女性用の服は着た方がいいんじゃないの?」
「「・・・・・・だよ」」
「え?」
「「二人バラバラの性別に姿を変える事が出来ないんだよ!わりぃか!?」」
顔を真っ赤にしながら、そう告げる二人。どうやら二人とも同じ性別にしか変える事ができないらしい。
「あ・・・それはなんというか・・・ゴメンナサイ?」
「何で疑問形なんだよ。それに姿を変えても容姿はほぼ同じだから、別に女性体にならなくたってそんなに変わんねーし。今日はたまたまアタイが『せーらーふく』を着ていただけだし」
「あー、変わりばんこに『特攻服』と『セーラー服』着ている訳ね。なるほど」
今日はたまたま、エアロくんが『セーラー服』を着ていただけで、ヴァンくんが『セーラー服』を着る事もあるって事ね。面白い事をしているなぁ、この二人。どっかの学園モノみたいな感じだねぇ。お互いの制服を交換してお互いの学校に入れ替わって行く、とか双子ならではじゃないの!
そんな、くだらない事を考えていると、二人はまだ言いたいことがあるのか、と言うような視線を投げかけてくる。
「ああ、最後に一つだけ。男の子のままで女の子の服を着ていると『女装している』って思われても仕方ないからね?」
「「え゛っ?!」」
私がそう忠告すると、驚いた顔でこちらを伺ってくるヴァンくんとエアロくん。
あれ?この様子じゃ、気がついてなかったんだ。せっかくなんで教えておいてあげようかな?
「こっちの世界でも同じ認識かは分からないけど、私の世界では男の人が女の人の恰好をすることを『女装』、女の人が男の人の恰好をすることを『男装』って言うんだけど――聞いたことない?」
「「ぁ、ぉ、俺ら、性別無いから関係ないと思って・・・」」
私がそう忠告すると、目に見えるほど動揺し出す二人。目は泳ぎ、声も完全に震えている。
あ、もしかしなくてもこっちの世界でも同じ認識なんだ。
そうか『男でも女でもない自分たちには関係ない』と思っていたから肝心なこと――自分たちが男性体を取っている事実――に気がついてなかったのか・・・なんか、このザンネンな感じが可愛いなぁ。もっとイジりたくなるじゃないの、うふふ。
にやける顔を手で隠しながら、もうひと押しする事に。さて、どんな反応するか楽しみ♪
「完全に性別が無い状態なら良いかもしれないけど、姿形は男の子だよね?なら、やっぱり『女装』・・・オーロラさん寄りって事になるんじゃ・・・つまり同類?」
「「うわーーー!!アイツと同類は嫌だーーー!!」」
ニコリと笑い、彼らの身近な存在であるオーロラさんの名前を出すと、顔面蒼白になり頭をかかえて身悶えだす二人。な、何てイジりがいのある子たちなの!?美少年をからかうとか、楽しくて癖になったらどうしよう!?
ひとしきり、「うー」だの「あー」だの身をよじる二人の姿を眺めて堪能したので、そもそも二人がここに来た目的を尋ねる事にする。
「えっと、そう言えば二人は何か私に聞きたい事があってきたんじゃないの?」
私がそういうと、はっとしたように二人は復活し、姿勢を正す。
「そう、アンタ・・・カエデに聞きたいことがあって来た」
「『真剣で話すには裸の付き合いからっしょ』ってマサトが言ってたから」
うん、たぶんそれ、間違った使い方だね。『裸の付き合い=本音を語る間柄』って事だからね!?
「アンタ、マサトと同郷の人間って本当なのか?」
「その、マサトさんが『地球』ってところの『日本』って国から来た、って言うなら、そうだと思うよ?」
この『お風呂』の形式や『裸の付き合い』なんて言葉で判断する限り、8割方同郷だとは思うけど、『マサト』さんが本当に日本人なのかはまだまだ判断材料が少なすぎる。
「マサトは『にほん』の『かんとう』から来た、って言ってた」
「『かんとうでは俺の名前を知らない奴はイネェ』って言ってた。カエデも知ってる?」
いや、私は知らないし。というか、日本にどのくらい『マサト』さんがいると思ってるんでしょうね。この二人は。まぁ、その『マサト』さんに言われた言葉を素直に信じているだけだと思うけどね。
・・・『かんとう』が『関東』って言うのであれば、間違いなく日本人だと思うけど、確実に判断するために、その人に直接会って話してみたいな。
「ねぇ、その『マサト』さんは今どこにいるの?ここに居たりするの?」
私がそう言った途端、二人の顔から表情が無くなる。そして、ヴァンくんが沈痛な面持ちで口を開いた。
「マサトはもういない。100年以上前に死んだんだ」
えええ!?100年前!?
あるぇえ?終わらなかった。
美少年イジリが楽しくて・・・




