006
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あの後、カオスなメンバーと一緒に、シンプルながらも広くてスッキリとした応接室に場所を移した。
巨大な木を輪切りにして作ったような立派な机に、人数分お茶を用意してくれたメイド服姿の小さな妖精さん達にお礼を言い、私達は一つのテーブルを囲んでお茶を飲む。
あ、このお茶、ハーブティっぽくておいしい。
なんて、のんきな事を思っていると、4人の視線が私達を見ている事に気がついた。その視線で私は挨拶がまだだったことを思い出し、慌ててティーカップをソーサーに戻すと、ぺこりと頭を下げる。
「改めまして、早風楓といいます。カエデと呼んで下さい。クレイさんにお招き頂いてお邪魔させて頂いてます。よろしくお願いします」
すると、私の右隣に座っていたベルデちゃんも私と同じようにカップを置くと、軽く頭を下げる。
「私はベルデです。よろしくお願いします」
そんな私達に興味なさげな視線と、熱い視線、憎々しいと言ったような視線とセリフが向けられる。
「あら、ご丁寧にありがとう」
「ぉぉ、よく見れば愛らしいお嬢さんじゃないか!」
「「俺「アタイ」は招いてねーし」」
ガシャン!と私の左側から乱暴にカップが置かれる音がした。驚いてそちらに目を向けると、怒った空気を身に纏ったクレイさんの姿が。どうやら彼らの態度が気に障ったらしい。
「カエデたちがちゃんと名前を言って自己紹介しとるんじゃ、お主らが出来ないとは言わせぬぞ。それにカエデたちはワシの客人じゃ」
今までに聞いたことのないような冷たい声音で、クレイさんがそういうと、4人ともビクリ、と身を震わせる。
そして、4人は慌てた様子で佇まいを正すと、私に絡んできた水色の髪の綺麗なお姉さまが代表で声を発した。
「も、もちろんですわぁ、クレイ様ぁ!アタシたちもちゃんとご挨拶致しますぅ。ほら、アンタたちから!!さっさとしなさいよ!!」
そう言ってお姉さまから指名されたのは、緑色の髪をした時代遅れなヤンキースタイルの男の子と女の子。
「俺はヴァンだ」
「アタイはエアロよ」
「「歓迎はしねー。そこんとこ夜露死苦!!」」
めんどくさそうにそういうと、プイッと顔をそむける二人。
――間違いなく「よろしく」って漢字っぽい響きがあったよね?スタイルも明らかに日本のヤンキーだし・・・
もしかしたら――と自分の思考の中に落ちそうだった所で、かけられた声に意識が引き戻される。
「クレイ様のお客様っていうなら、アタシにとっても大切なお客様よ。頑張ってもてなしちゃう♪カエデちゃんとベルデちゃん、って呼んでもいいかしら?」
「あ、どうぞ」
「私もかまいません」
「じゃぁ、アタシの事は気軽に『オーロラちゃん』って呼んでね♪ウフッ」
そういって艶然と微笑むオーロラさん。・・・すみません、ちゃん付は出来ません。
心の中で謝罪していると、オーロラさんの横に座っていた赤い髪の綺麗なお兄様が横やりを入れてきた。
「何が『オーロラ』だ。お主の名は『ファウテン』だろうが」
「イヤッ!やめてよ、そんな厳つい名前出さないで!!アタシはオーロラなの!」
イヤイヤと身をよじる姿はきっと小柄ですらっとした女の子なら似合うだろうけど、ガチムチの巨体のお姉さまがそれをやると、目に対する暴力にしかならない。
魂を抜かれかけた時に、今度はファウテン――もといオーロラさんに横やりを入れていたお兄様が椅子から立ち上がり、わざわざ私の方にきて、足を折り、目線を合わせると右手を取られ挨拶された。その一つ一つの行動がやっぱり胡散臭い・・・というか演技っぽい。
「僕は『アグニ』だよ、小さな御嬢さん。愛らしいアナタこんな所に逢えるだなんて、これは運命の出会いだね」
「は、はぁ」
「森の妖精のキミも――「ベルデでお願いします、火の精霊様。そしてカエデお姉さまにも私にも近寄らないでください」」
私の手を取ったまま、ベルデちゃんに対して笑顔を向けたアグニさんをベルデちゃんが一言で切って捨てる。
べ、ベルデちゃんアグニさんにめちゃくちゃ厳しいな。なんか嫌な事でもあったのかな?
すると、今度はオーロラさんが横やりを入れてくる。
「アンタ、さっきもベルデちゃんに同じこと言ってたじゃないのよ。使い回ししてんじゃないわよ。相変わらずボキャブラリーが少ないわね、それにアンタは『フレイ』でしょうが、この脳筋男女」
「誰が脳筋だ!!この筋肉ダルマが!」
「誰が筋肉ダルマよ!」
「「ぐぬぬぬぬぬぬ」」
テーブルを挟んでにらみ合うお二人。
そんな二人に目を向けながら、私の左隣にいるクレイさんにこっそりと声をかける。
「あのー、クレイさん、もしかしなくてもあの二人、仲悪かったりします?」
「そうじゃの、見ての通り『水』と『火』の精霊じゃから相反しとるの。それにお互いがお互いすべてにおいて真逆じゃ。そりゃ仲ようないわい」
その答えにウンウン、と頷いていると
「さて、カエデとベルデはしばらくここに滞在することになる。滞在期間は今のところ不明じゃが、その間仲ようしてやってくれ」
さらっとクレイさんが私たちがしばらく滞在することを告げる。すると、場の空気が一気に変わった。口喧嘩していたオーロラさんやアグニさんはもちろん、興味なさげにしていたヴァンくんやエアロちゃんが一斉にクレイさんに意見し出す。
「「はぁ?聞いてないぞそんな事。とうとうボケたかジジイ」」
「クレイ、そんな事を君の一存だけで決めるのはどうかと思うよ?」
「あのぅ、クレイ様ぁ、一時の来客ならまだしも、さすがに人間がここに滞在するのはまずくありませんこと?」
「まぁ、大丈夫じゃろ。カエデの前世はこの世界の住人のようじゃし、そもそも異世界から攫われてきたばかりじゃからのぉ」
そんな彼らの非難の声を笑いながら軽く受け流すクレイさん。さすが、肝が据わってますね。私ならあの勢いに押されて、うまく意見が言えない気がしますよ。
彼らに顔を向けると、クレイさんのセリフに驚いた様子でこちらに視線を投げてきた。あれ?なんかおかしな事クレイさん言いました?
「カエデちゃん、アンタの前世ってこの世界の住人だったの?!あり得ないわ、そんな事!?それに攫われてきたんなら、なんでこんな所にいるのよ!?普通は攫われたその場で隷属されるはずじゃない!?」
「えーと、一応クレイさんにもお話させてもらったんですが――」
そして、私はクレイさんに説明した内容と同じ話と、更に今日の朝に分かった『攫われてきたけど、攫ってきた相手が気に入らなかったらしくポイ捨てされた』という事までを一通り身振り手振りを交えつつ掻い摘んで説明した。
「不憫・・・」
「かわいそうに・・・」
「「ぱねぇわ」」
うぅ、まさかこんなに憐んだ視線を向けられるとは・・・ま、まぁ彼らの身に纏う空気が少しは友好的な感じに変わったから、良しとしよう。うん。
「まぁ、そういう話なら仕方ないけど、私達がお仕事している間は余計な事しちゃダメよ?」
「へ?余計な事?」
そういえば、ここが何なのか全く聞かずについてきたんだっけ。例のごとくベルデちゃんに背負われてあっという間だったから、ここの場所がどこにあるのかもよく分からないけど、クレイさん達の仕事場なのかな??
返事を返さない私に、オーロラさんは更に言葉を続ける。
「ここは祝福待ちの『生命の種』が集まる場所だから、あまりウロチョロされると困るのよ」
「『祝福待ち』?『生命の種』?何ですか、それ」
初めて聞いた単語に、頭の中がクエスチョンマークだらけになったので、オウム返しにそう聞いた。するとオーロラさんの顔色が少し悪くなった。あれ?まずい事聞いちゃった?もしかして。
「もしかして知らなかったのかしら?」
その問いに、こくりと素直に頷くと、「しまった!」とばかりに額に手を当て顔を歪めるオーロラさん。あちゃ、やっぱり聞いちゃマズイ事だった?
「そりゃそうじゃ、さっきも言うたが異世界の住人じゃから、この世界の作りは知らんはずじゃし、そもそも精霊じゃない種族がここの事を知っとるはずがないじゃろが」
「そうでしたわ。失敗したわぁ。どうしよう、余計なこと喋っちゃった・・・。クレイ様申し訳ありません」
しおらしくクレイさんに首を垂れて謝罪するオーロラさんに、「気にするな」と軽く手を振って、下げた頭を上げるようにクレイさんは促す。
「ま、喋ってしまったもんは、しゃぁないじゃろ。それに、もしここの事が何処かに漏れたとしても、ここに二人を連れてきたのはワシじゃから、その時はワシが責任もつわい。じゃからお主は安心せい。まぁ、カエデもベルデもここの事を簡単に他人に口に出すような性格はしとらんはずじゃし、問題ないじゃろうが」
ふぉっふぉっふぉ、とにこやかに笑うクレイさんを、「ステキ・・・」と目をハートにしながら手を胸の方で組んで乙女のように身を震わせるオーロラさん。まぁ、クレイさんの男前発言を聞いたらそうなりますよね。よく分かります。
そして、私とベルデちゃんはクレイさんに出会ってまだ1日なのに、結構信用して頂けているみたいです。もちろん喋っちゃいけない事は喋らないですよ?これでも守秘義務にはうるさいお仕事してますんで、そこらへんはバッチリです!
「はい、ココが大切な所で、だれかれ構わず喋ってはいけない場所、っていうのであれば絶対喋りませんし、漏らしません。約束します」
「頼むぞ、カエデ。ワシが処分されないように気ぃ付けてな?」
「もちろんですよ!クレイさんの為なら余計に気を付けますって!」
任せてください!と笑顔で私がそういうと、クレイさんは満足そうにウンウン頷いて、私とベルデちゃんの滞在場所を用意すると言って、ベルデちゃんを伴って部屋から出て行った。
すると
「ちょっと、小娘。アンタ、クレイ様に少し馴れ馴れしすぎじゃないこと?」
「へ?」
クレイさんたちが扉から出て行って5秒もしないうちに、地を這うような恐ろしい低い声がオーロラさんが座っている方向から聞こえた。私の耳がおかしくなければ、たぶんこれはオーロラさんから発せられた言葉だとおもう。
恐る恐るオーロラさんに目を向けると、ゴゴゴゴゴ、と目に見えるような黒いオーラを背に背負い、人が射殺せるような視線をこちらに向けていた。そして、他の3人はそんな恐ろしい様子のオーロラさんに怯えた様子でガタガタと身を震わせている。
「何、クレイ様の気を引こうとしてるのよ?」
「いやいやいや!クレイさんには色々お世話になっているし、これからもお世話になるんで、そんな人に対して恩を仇で売るような事はしないって事です!別に気を引こうなんて思ってないですよ?!」
「色々お世話になったぁ?これからもお世話になるぅ?」
ギロリ、と睨まれるような音が聞こえた気がする。そして、オーラが更に濃くなったような・・・
――こ、これはまずい!!!誤解を解かないと!!
「ここに滞在する間、く、クレイさんには、しゅ、修行をつけてもらう事になってるんです!決して変な意味ではないです!!」
今にも飛びかかってきそうなオーロラさんの誤解を解こうと、両手を顔の前でブンブンと振り、必死で説得する。あんな丸太みたいな腕で殴られたら一発でエンドロールが流れる!!バッド的な!!
「本当ね?信じるわよ?」
「もちろんです!」
背中にダクダクと嫌な汗を流しながら、力強くそう言った私の必死さが通じたのか、どす黒いオーラを収めて、きっと冷めているであろうお茶を優雅に啜るオーロラさん。もう私に対して興味はなくなったみたいである。他の3人はまだガタブル状態だけどね。
手に浮かんだ冷や汗を裾で拭いながら、長いため息をつく。
やった!やったよ!!私生き残りました!!危険を回避したよ!!もしかしたら技能に『回避』がついたかもしれないくらい頑張ったよ!!
――それにしても、さっきからクレイさんに対する態度で分かったけど、オーロラさんもしかしなくてもクレイさんの事、好きだったりしますよね?――女子側が圧倒的にでかい、オッサン?のカップル・・・。うん、気がつかなかったフリしよう。
あの視線にもう一度晒されて、生きている自信は私には無いです!!私にオーロラさんを止める勇気は無い!!
私も自分の身が可愛いんです!すみません!!
元の世界でも三角関係なんて高等恋愛、関わった事ないし、そもそも色恋沙汰自体経験も無い私に、『オジサマ×オネェ×私』疑惑がかけられるとか、どんな無理ゲーよ!?
幸い?な事に、クレイさんはオーロラさんにロックオンされている事に気がついていないみたいだし、願わくばこのまま気がつかずに今のままの関係が続きますように。
頑張れクレイさん!!
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