004
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7/14:訂正 5週→4週
私達はただ今綺麗なお姉さまと綺麗なお兄さま、昔懐かしヤンキー&レディースにもみくちゃにされています。
・・・どうしてこうなった?
事の始まりは、目を覚ましたクレイさんと一緒に、少し遅めの昼食を食べ終わった後の事だった。
もちろん、食材提供は私。今回は残っていた卵全部を使っての半熟スクランブルエッグモドキを、例のごとく買っていたレトルト食品・・・温めて作るタイプのシーフードカレーに乗せて出してみた。
『ドロドロとした茶色い謎の物体』という見た目のインパクトからか、お皿を出した時には二人とも若干引き気味だったんだけど、すぐそのカレー独特の良い香りとうまいうまい、と食べ進む私をみて、意を決したのかカレーを少量スプーンに取り、恐る恐る口の中に入れた。
すると、前回同様目を見開き「うまい!」「おいしい!」と言うや否や、ものすごい勢いでカレーを食べ始める。・・・が、
「な、なんじゃ、この辛さ!?後になって辛さがくるではないか!?」
「痛い痛い!!お水―!!」
「あ、やっぱり辛かった?」
顔を真っ赤にし、汗だくになりながら水をがぶがぶ飲む二人。そりゃそうだよね・・・私には丁度いいけど辛口だし。初めてカレーを食べるんだったら、この辛さは無茶だったかなぁ。・・・まぁ、そこでワザワザ作ったソレの出番ですよ、ふっふっふ。
私は水をガブガブ飲んでいる二人に、自分のお皿に乗っているスクランブルエッグとカレーを軽く混ぜ合わせながら説明した。きっと私の顔はドヤ顔になっているはず。
「二人とも、こうやってカレーの上に載っているスクランブルエッグを混ぜて一緒に食べると若干辛さ抑えられてまろやかになるよ?」
そう、食料難なのにあえてスクランブルエッグも一緒に出したのは、このためなんだよね。混ぜる事で最初のカレーの味とはまた違った風合いになるし、半熟状のスクランブルエッグがカレーの辛さをまろやかにしてくれるし、良い事尽くめなのであえてトッピングしたのだ。
ふっふっふ、どう?この女子力の高い心遣い?これで昨日のお昼ご飯の借りは返したわ!!
誰に借りを作って誰に借りを返したのか、などと突っ込まれそうだけど、そこはあえてスルーの方向で。ノリ的に言ってみたいセリフってあるんですよ、などと心の中で一人ボケ、一人ツッコミを繰り広げていると、
「でもまぁ、この感じが旨いな」
「ピリピリするけど、後引く感じが良いわね」
など言い、私の心遣いを綺麗にスルーして、普通にカレーを食べ進める二人。件のスクランブルエッグはカレーには混ぜずに、普通にサクっとスプーンで一口大に切り取ってカレーをつけて食べている。
な、何だと――!!!?わ、私の心遣いが――!?
が―ん、と言うような効果音が聞こえそうなぐらい衝撃を受けた私を余所に、ハフハフ言いながらカレーを食べ進める二人。く、悔しい!!また負けた!!
まぁ、そんな出来事がありながらも、和やかにお昼ご飯と後片づけを済ませる。そして、テーブルを囲んでひと段落ついていると、今後お互いどうするか、という話になった。
『この世界に私を攫ってきた、赤胴色の髪の男に仕返しする方法と、元の世界に戻る方法を探す事』と思わず言いそうになったけど、それは一旦置いておくことに。
今のままで出来もしないことをただ口先走るだけでは何も解決しない。何より『誰にも迷惑をかけないくらい私自身が強くなる』という目標がある。
そもそも何に対して、どうやって、どういう方向で『強くなる』のか、という事はまだ決めてないけどね。うーん・・・まずはそこを決める事からかな?あ・・・それよりも今後のご飯と住むところとかどうしよう・・・そろそろ食料つきるし、ここは長く住むような所じゃないしなぁ・・・
そう考えると、当面の目標は「安定した食料の確保と安全な居住の確保」になるのかもしれない。現実的かつ早急に解決しないといけない事だわ・・・
はぁ。この世界のお金なんて持ってないしどうしよう?
「私は自分自身の強化、もそうなんだけど『安定した食料の確保と安全な居住の確保』かな?そのためにはまずはこの世界のお金を稼がなきゃいけないよね。――その前にこの世界ってそもそも『お金』って概念はあるのかな?」
最後の貨幣の下りはほぼ独り言のように口にしたら、「貨幣ならあるぞ?物々交換もしたりするが、基本的に物を買うには貨幣が必要だな」とクレイさんから意外なセリフが。
・・・精霊なのに詳しいな、クレイさん。もしかしたら貨幣の価値も知っているのかも知れない。
「クレイさん、貨幣の価値とかもご存じですか?」
「価値?ああ、いくらで何が買える、とかか?知っとるぞ?ちょっと待っとれ。今説明するから」
そう言いながら懐から少し膨らんだ手のひら大の皮袋を取り出し、口を縛る紐を解き机の上でひっくり返す。すると、明らかに袋の膨らみと袋の容量に比例しないくらいの量の様々な色をしたコインがジャラジャラと出てきた。
「・・・明らかに入る量と出てきた量が違うんですが。って、精霊でもお金での物品のやり取りなんてするんですか?」
「精霊でもワシのように『魔道具』や『武具』等の生成を得意とするモノは、欲しい材料や道具を買うたりせにゃならんからの、色々と金が必要になるんじゃよ」
「それにうまいモンも色々食いたいし、面白そうなものも色々買いたいしのぉ」と『女子か!』と突っ込みたいようなセリフをコインを並べながらサラリというクレイさん。
そういえば意外と健啖家だし、私の持ち物もキラキラした目で見てたしね。――そうだ、私の持っているものをいくつか買い取ってくれないかなぁ・・・。手持ちのもので売れそうなのって、アロマのロウソクとか石鹸とか・・・あとは折り紙?くらいしかないか・・・。後で交渉してみよう。
そんなことをぼんやりと考えていると、コインを形別に二列に並べ終わったクレイさんが、貨幣の価値を一つ一つ丁寧に説明をしてくれる。コインは全部で6種類あり、名称は『コロン』と『カロン』いうらしい。なんだか可愛い名前だよね。
あ、そうだ!
「クレイさん、すみません。少し待って貰えますか?」
私は話を続けようとするクレイさんに待ったをかけて、説明を一時中断してもらう。そうして、洞窟の隅っこに置いてあったバッグから、所持品をチェックをした時にも使ったメモ帳とペンを取り出すと机の上に広げ、説明された内容を書き込んでいく。いや、一応集中して聞けば覚えれるけれど、教えを乞う者の姿勢としては、ちゃんとメモは取らなきゃダメでしょ。
カリカリとペンで先ほど説明されたコインの名称をメモする私と、それを凝視するクレイさん。あ、しまった・・・このパターンは・・・
「カエデ!その細長い筒はペンなのか?インクはどこにあるんじゃ!?」
やっぱり・・・興味を引いてしまったみたいだね。今にも手を伸ばして、私の手の中にあるペンを奪い取りかねない様子のクレイさんに、私は先手を打つ事にする。
「もしよければ説明終わった後に差し上げますから、取りあえず続きお願いします」
「約束したからの!?」
冗談半分で私がそういうと、見る間に嬉しそうな顔をする。
うーん、これは本当にペンをあげないといけないなぁ。しょうがない、ペンの事は諦めよう。物で釣る形になっちゃったけど、話が横にそれると長くなりそうだし、しょうがないよね。
そんな私の心の中のつぶやきを知る事もなく、クレイさんはウキウキとした表情で一番価値が低いという、下段の一番右のコイン・・・1コロンを指差す。1コロンは青銅っぽい色で四辺がそれぞれ1cmほど。正方形よりも若干いびつな形をしていて片面に短い一本の線、もう片面には何かで押したような四角い型が押されている。
「これが一番価値の低い1コロンじゃ。1コロンが10枚で10コロンに、10コロンが10枚で100コロンに交換出来るんじゃ」
そういいながら、今度は下段の中央の銅色と左側の鈍い銀色の四角いコインをそれぞれ指差す。どうやら銅色のコインが10コロンで、鈍い銀色のコインが100コロンらしい。ここまでは殆ど『日本円』と同じだね。覚えやすい。
10コロンと100コロンは先ほどの1コロンと同じ大きさの四角い形をしているが、1コロンは片面に短い1本の線だったが、10コロンは2本、100コロンは3本と線が増えている。形も見た目もシンプルでどれがどれだか分かりやすい。
クレイさんに了承を得て、それぞれのコインを手に取るとひんやりとしていて、金属の感触がする。見た目通り、1コロンが青銅、10コロンが銅、100コロンが銀のようだ。
ふむふむ、と私が頷くと、クレイさんは今度は上段の丸い3つのコインを指差した。
こっちは直径2cm程の丸い形のコインが3枚だね。さっきが『コロン』だったからこっちは『カロン』か。右から順に金色、白銀色、虹色をしている。って、虹色!?こんな金属あったっけ!?
見た事もない色をした虹色コインを凝視していると、先ほどコロンの説明をしてくれたように『カロン』の説明をしてくれる。
「これが1カロンじゃ。100コロンが60枚で1カロンになる。後はコロンと同じで、1カロンが10枚で10カロン、10カロンが10枚で100カロンじゃ」
金色のコイン、白銀色のコイン、虹色のコインをトントントン、と指差し、その価値を教えてくれる。
ちょっと待って!?いきなり60って数字が入ってきたよ!?なんでそこで10にしなかった?!
ま、まぁ、コロンからカロンへの繰り上げする時がちょっと混乱するけど、後は同じみたいだしそこまで難しくないから、いいか・・・
1カロンは100コロン60枚、10コロンが600枚、1コロンが6000枚、と。うん、覚えた覚えた。じゃあ、後は何がいくらで買えるか、ってことだよね・・・。
先ほどと同じようにクレイさんに了承を得て、カロンを手に取る。
こちらのコインは片面にそれぞれ動物のような絵が刻まれていて、もう片面にはコロンと同じように何かで押したような四角い型が押されている。どうやら片面の四角い型は『コロン』『カロン』共に共通らしい。
「クレイさん、例えば1回の食事をするのに、どのくらいお金が必要ですか?」
「うーん。ピンキリじゃが、例えば今日の昼に食べた量くらいなら250コロンくらいかの?まぁ、異世界の料理としての価値を考えると1カロンくらいにはなると思うが、普通ならそのくらいじゃと思う」
「なるほど」
1日3食として、最低でも750コロン、1か月――あっと、この世界の時間や暦の扱いも聞いておかないと1月いくら必要か分からないな。その辺りも聞いてみよう。
「クレイさん、この世界の時間の流れってどうなっています?1日何時間で、1月は何日ですか?」
「そうじゃの。1日は20時間、1週間は6日、1か月は4週。1年は16か月じゃ」
「・・・1時間は60分ですか?」
「1時間は60分で、1分は60秒じゃの」
「今の季節は・・・」
「火の季節じゃ。水の季節、風の季節、火の季節、土の季節のと、季節の種類あって、それぞれ4か月ある。その中で更に水の月、風の月、火の月、土の月、と分かれとるんじゃ。今は火の季節、風の月じゃ。来月の火の季節、火の月が1年を通して一番暑い月になるの」
ぉぉ、大体似てるけど、微妙に違う。ん?1週間は6日??・・・という事は、こういう事になるのかな?
カリカリと今聞いた時間や季節の事を書きながら、説明と図を入れていく。それを覗き込むように見ているクレイさん。いつの間にか目が光っている所を見ると私のメモの内容は読めるようである。・・・ていうか、いつの間に魔法使ったんだろクレイさん。
「流石じゃの。その図、その認識であっとる」
「やっぱり1週間は光と闇の日があるんですね」
そう、今まで4の倍数で日や月が構成されていたのに、週だけは6で構成されている。なので、週だけは光と闇の名称が出てくるんじゃないかと思ったら、やっぱりその認識で正しいみたい。月や季節には無いのに、週だけあるなんて不思議。
「そうじゃ。週の初めが光の日、週の終わりが闇じゃの。闇の日は働いてはダメな日、とされているから、大体は皆家に篭っておるの」
「なんで、月や季節には光や闇が無いんですか?」
「昔はあったようなんじゃが、いつの間にか今の暦になっておる。まぁ、祝福の影響じゃろうて。「光」と「闇」の名前が残っているのは昔の名残みたいなもんじゃの。ワシら精霊からしたら「光」と「闇」の名前が使われなくなった事は悲しい事じゃが、まぁ、仕方あるまい」
そうか、この世界の人たちに与えられる祝福の種類が「水」「風」「火」「土」だから、自然と暦も変わっていったって訳か。なるほど。
それにしても、お金だったり暦だったり異世界なのに元の世界と似てる部分も多くてびっくりした。もしかするとまだまだ元の世界と似通っている事があるかもしれないね。
説明回&ちょっと動く回。長いので説明回とちょっと動く回を分割します。
004、005とあわせてお楽しみ下さい。




