003 ★
7/3:修正 文章のはじめの字下げ追加
7/28:改稿 書きミス等を直し、文章を少し増やしました。
現実逃避しても現実は変わらない訳で……。
それなら、どうやって帰のかを考えてた方がまだ建設的だよね。条件付きだけど、帰る手段も一応あるみたいだし。
一番良いのは、攫ってきた相手を見つけて、帰してもらうようにお願いする事だよね。
二番目はベルデちゃんが言っていたみたいに、相手の一部を手に入れて、攫ってきた時のアイテムも手に入れる事かな。――まぁ、解析して魔法を組み立てるのって、どうやるのか分からないし、かなり時間がかかるだろうけど、まだこっちの方が現実的かな?
相手の一部――髪の毛とか毟ってやろうかな? 殴られた恨みを込めて。攫ってきた時のアイテム――下さいって、お願いする? それとも脅す?
うーん、そもそも、相手をどうやって見つけるのか、って事がクリア出来ていない時点で、お願いも、相手の一部やアイテムを入手する事も出来ないか……。
もし仮に、なんとか見つける事が出来たとしても、問答無用で殴ってくるようなヤツだし、それに簡単にポイ捨てされた事を考えると、全く相手をして貰えないか、今度こそ"どうにか"される可能性があるよね……。
相手に嗜虐趣味とかあったら最悪だし、もしかすると簡単に殺されるかもしれないって考えると、ゾッとする。それに、確実に男である相手の方が力もあるだろうし、勝ち目が一切ないよね。……ああ、力が無い事を悔しいと思う日が来るとは思わなかったな。
考えれば考えるほど、気が滅入ってくる。どう考えても帰る手段の何歩も手前――。相手を見つける方法すら思いつかない。――グルグル考えていると、ふと、頭にある事が思いついた。
そういえば、ここは異世界。そして、魔法が使える世界でもある。
――もしかすると、よくある展開通り、私にも魔法が使えるようになっているかも!?
モノは試し、とばかりに、私は飛び上るように座り込んでいた地面から立ち上がって、目を閉じ、大きく深呼吸をする。
魔力がそこにある、私は魔法を使えるっていうイメージを頭の中で作り上げる。
意識を集中し……そして腕を前に突き出し、目を開いて呪文を言う!
「ファイヤ!」
しーん……
……そうだよね、初めからうまくいくはず無いよね!もう一回!
「火! 炎!!」
しーん……
「サンダー! 雷!!」
しーん……
「風! ウィンド! 光!! ライト!!」
しーん……
なんだろう……。セオリーとしては、ここは使えるようになっているもんじゃないの!?
首を傾げながら、呪文が悪かったのかそれとも腕を突き出すポーズが悪かったのか、ああでもない、こうでもないと成功しない理由を考える。すると、背後からそっと声をかけられた。
「あの……? カエデお姉さま? 何をしているの?」
くるりと声のした方に目を向けると、訝しげな顔をしてこちらを窺っているベルデちゃんが……!? しまった!! ベルデちゃんがいる事忘れてた!! 何かに夢中になると周りが見えなくなるのは私の悪い癖だよね……。小学校の頃の通知表にも何度も先生のコメントで書かれてたっけ……。
は!? という事は――もしかしなくても、さっきの変な動きとかセリフとか全部見られて……
いーーーーやーーーー!!!! 恥ずかしすぎる―!!!
なに、何なのキーワードって! なんなのポーズって!!! 中二病全開じゃないの!?
あまりの恥ずかしさに、頭を抱えてもにょもにょ変な動きで身悶える。すると、ベルデちゃんから戸惑った雰囲気がヒシヒシと感じられたので、必死に平静を装い言い訳してみる。
きっと今の私の顔、真っ赤なんだろうな……とか思いつつ。
「えーっと、魔法が使える世界なら私も使えるようになってないかな、って思って。試してみてたの」
「魔法を使いたいの?」
「うん、元の世界に還るためには攫ってきたヤツの体の一部と、魔道具が必要になる訳でしょ? 今の私には何にも力がないから……。魔法が使えるようになるなら何とかなるんじゃないかと思って」
「遊んでた訳じゃなく必要だったから試していたんだよ」と言い訳すると、予想外の答えが返ってきた。
「この世界で魔法を使うためには、精霊からの祝福を受ける必要があるの。そして祝福の属性や称号次第で使える魔法の種類が異なってくるのよ」
「え!? それないと使えないの!?」
衝撃ですよ、じゃぁさっきまで私がやっていた事は無駄だったというわけですか……。ああ、思い出すと余計に恥ずかしい!! 何が「ファイヤ!」なのよーー!!
「うーん……。ああ、人族は精霊石や魔晶石の助けを借りて魔法を使っているみたい。だから、一応は属性関係なしに魔法を使うことは出来るみたいよ?」
「え!? 本当!? それ使えば私も魔法使えるようになる!? それってどこで手に入るのかな!? ベルデちゃんも持っていたりするの?」
矢継ぎ早にそう尋ねたとたん、すうっとベルデちゃん顔から表情が無くなった。
「……精霊石は精霊の核、生物でいう所の心臓にあたるの。精霊は基本的に不死なんだけど、それは精霊石があるからなの。それが無くなるって事はその精霊の消滅を意味するのよ。人間たちは何らかの方法で精霊を捕まえ、精霊石を取り出しているみたいね……。だからこの大陸では大樹林以外は、力の強い精霊の数が激減しているみたい。それに、最近は精霊石目的でわざわざここまでくる人間も増えて来ているわ」
精霊石が欲しい=貴方の命が欲しい、と言ったようなものだと理解した私は、全身から血の気が引くのを感じた。知らなかったとはいえ、酷い事を言ったのは事実であり、一度吐いた言葉は取り消せない。
表情を無くし、淡々とそう言ったベルデちゃんの態度が如実にそれを物語っている。
慌てて深く頭を下げ、謝る。
「……ごめんなさい、そんな物だと知らなくて……。欲しいだなんて言っちゃって……」
これでダメなら、土下座でもなんでもして謝り倒そう。
それだけの事をしても足りないような事を私は言ったのだから。
そんな私の態度を見て、真剣に謝っているのを感じ取ってくれたのか、ベルデちゃんはふっと表情を和らげニコリと微笑んでくれた。
「いいのよ。悪気があって言った訳じゃないのは分かっているし。それにこの世界の常識を知らないんだから、しょうがないわよね」
「……ありがとう、許してくれて」
「ふふ、この話は終わりね」
年齢に似合わないような微笑みを浮かべ、サラリとフォローを入れてくれる。そういえば、年齢とか聞いてなかったな。いくつなんだろうなぁ?
「……ベルデちゃん、私よりもお姉さんみたいだね」
「年齢だけでいえば、カエデお姉さまよりは年上よ?」
冗談ぽくそういうと、意外なセリフが……
「精霊化するのに千年以上かかるし、この姿は前のマスターにあわせた姿だから」
「あー、じゃぁ私の方がベルデちゃん……ベルデさんって言わないとダメだね」
「うふふ、良いわよ、今のままで。『カエデお姉さま』って言うの気に入ったし♪」
イタズラが成功したというように、満面の笑みを浮かべたベルデさ……ちゃん。
くっ、もしかして最初っから遊ばれてた!?
そういえば、精霊はイタズラ好きだって何かの本で読んだっけ。
この世界の精霊にも適用されるルールだったりするのかな……?
なんだろう、この手のひらで遊ばれている感じ……。
……嫌いじゃないかも、って思ったのは内緒です。




