001 ★
7/25:改稿 書きミス等を直し、文章を少し追加しました。
突然砂嵐のような雑音が耳を劈く。そして視界が白いノイズで覆われ、今まで見えていた画像が見えなくなり、音も聞こえなくなる。
「え? 何!??」
そして唐突に『私』は一瞬の軽い浮遊感の後、すとんと白い何もない空間に放り出されてた。
「な、何が起こったの!? って、あれ!?『私』……??」
きょろきょろと辺りを窺い、いきなりの出来事に驚いた私の口から思わず言葉がすべり出すと、その声に更に驚いた。いつも聞きなれている『私』の声だ。
そう、今この空間にいるのは『今の私』で『あの時の私』じゃない。
さっきまで前世の自分と重なるように、自分自身の目で見ていたのに……。
――あれ? 見ていたものは『あの時の私の記憶をなぞっていた』もので『思い出した記憶ではない』?
それだとおかしい……よね? 最初に思い出したのは『前世の私の最後の記憶』だったはず。なのにいつのまにか『あの時の私の記憶をなぞる』ようになってた……。一体いつから? なんで??
必死に思い出そうとしても、いつから切り替わったのか全く分からない。
それどころか、先ほどまで『なぞっていた記憶』を思い出すことが出来ない。 まるで、ごっそりとそこの記憶を抜き取られたように、ぽっかりと抜け落ちている。
前世の私は何をしていたの? あれ?? 前……世? え? 私何してたの? その前に――。ここ……どこ……?
軽くパニックを起こしそうになった時、透き通ったソプラノの声が私の頭の中に響いた。
<思い出してはだめ>
綺麗な声が囁くようにそう言うが、どこを見渡しても声の主の姿はどこにもない。相変わらずまっ白い空間に私一人だけがいる。
<通常であれば容易く刈り取れるはずなのに……。それよりもこの場で意識があるとは……。異界の体がこうも御せないとは……>
少し困ったような声がまた頭の中に聞こえる。
「ねぇ、貴方誰?! どこにいるの? それに、異界の体って一体……? 私に何が起きているっていうの?!」
この空間のどこかにいるはずの声の主に向かって、精一杯声を張り上げてみる。けれど、そんな私の声を無視するように、声は一方的に言葉を続ける。
<……偶然とはいえ、本来であればもう二度と会えないはずのアナタに再び相見える事が出来て嬉しかったわ。さぁ、アナタに術と封印を施します。今はあの記憶を呼び起こすことはアナタの害にしかなりません。今はすべて忘れなさい>
「勝手なこと言わないで!」と声を出そうとしたとたん、強烈な睡魔が襲ってくる。瞼を開けていられない。それどころか、これ以上意識を保つことが出来そうにもない……。
<……この世界にいる限り、封印は綻びいつか思い出すときが来るでしょう。その時までに心を強く育てなさい。誰にも揺るがされないように、自身の心を、魂を強く強く。さすれば受け入れる事も出来るはずです。……私の言葉もここに居た事も『思い出した記憶』も『なぞった記憶』も、起きた時には覚えている事は出来ないでしょう。――だから魂に刻んでおきましょう。貴方の力となるように>
優しい愛しむような声音が聞こえ、私の胸の辺りに七色に光る小さな光が、すうっと吸い込まれた所で私の意識は無くなった。
<光と共にあれ……私の愛しい子……>
「……ま……デさま」
鈴が転がるような心地いい声が私の耳をくすぐる。
うーん、可愛い声。もっと聞いてたいなぁ……。
けど、どうやら私を気遣っているみたい。声色が心配そうだもん。あー、もしかして心配かけてる?
「カエデ様、大丈夫ですか?」
少し頭痛のする頭と、重い瞼を無理やりこじ開ける。すると、戸惑いと困惑をまぜこぜにしたような表情をしたベルデちゃんと目が合った。
眉をひそめている顔も可愛いなんて反則! ――というか、上から覗き込まれてるこの体勢ってことは、私の頭の下にあるものって、もしかしなくてもベルデちゃんの足!? なに、この心地よさ!? 男の人が膝枕に憧れる気持ち分かるかも!!
「あー、ちょっと眠いけど大丈夫……。っていうか、なんで私ベルデちゃんの足を枕にして寝てるの? 重くない? ごめんね」
ちょっと名残惜しいけど、こんな小さな子の足に居座り続ける訳にもいかないので,
横たわっていた体を起こす。そして、ベルデちゃんと向かい合うように座りなおした。さてさて。ちょっと頭がぼーっとするけど、なんでこうなったか聞いてみないとね。
「全然大丈夫ですよ。こう見えて体力ありますから。あとカエデ様が寝ていた理由は、私との魔力交換にあてられたみたいですね」
「魔力……?」
「はい、何故かカエデ様と私の契約が成されてしまったようなので……」
「契約……??」
聞きなれない単語に、私の頭の中が疑問符でいっぱいになる。
ぁぁ、さっきまでやってたゴッコ遊びの続きかなぁ? ――はて? ゴッコ遊びで体から光なんて発せれるのかしら? 最近の遊びは進化してるわねぇ……。
ぁぁっと、うっかり忘れてたけど、この場所がどこかっていう事と、保護者が一緒かどうか確認しないとね! その為にはゴッコ遊びに最後まで付き合わなくちゃ!
「そっか、えーと、じゃぁ私が雇い主って形になるのかな?」
「雇い主……? マスター……主という意味ではそうかもしれません」
「じゃ、雇い主としてお願い。様はいらないわよ。呼び捨てでいいし、もし呼びにくいなら、お姉さんでもOK!! あとその敬語もいらないわ。普通にしゃべって!」
「……カエデ……お姉さま?」
「是非ともそれで!!」
「は、はい」
小首をかしげるように『お姉さま』と呼ばれ、ちょっと頭のネジが飛んでしまう。かぶりつき気味でそういった私に、軽く引いてるベルデちゃん。今の私の顔は、さぞかし恐ろしい表情なんだろうなぁ。……ある意味。
……こほん。興奮している場合じゃないわね。とりあえず気を取り直して。
「じゃ、質問。ベルデちゃんここには親御さんと一緒に来たの?」
「いえ、私一人です」
「ほらほら、口調口調。普通で良いわよ」
「え……と。さっきも言ったけど私ドリュアスなの」
ありゃ、案外重要なキーワードだったぽい。でもドリュアスなんて聞いたことないんだけどなぁ……。しょうがない聞くは一時の恥っていうし、素直に聞いちゃえ。
「ごめん、ドリュアスって何かな?」
「知らないんだ……。樹の精霊よ?」
「へー、樹の精霊って設定かー。言われてみれば緑色の髪の毛だし、容姿も儚げで言われてみれば精霊っぽいかもー」
「……? えと、設定ではないわよ? 精霊なの、私」
……はい? なんですって?
「ほら、その証拠」
近くにあった樹に近づいたベルデちゃんが、すぅっと樹に吸い込まれた。
ええええええええええええええええええええええええええええ!!?
驚きに目を見開いた瞬間、ぴょこん、と上半身だけベルデちゃんの体が、樹の幹から飛び出した。
拝啓 由比&夏 元気してますか?
私、生まれて初めて初めて見ちゃったよ不思議な光景。美少女が突然樹に吸い込まれたと思ったら、上半身だけ樹の幹から飛び出してる姿なんてめったにお目にかかれないよね。
とりあえずスマホで証拠写真を撮ったんで、帰ったら見せるね。
まぁ、確認したら樹の幹しか映ってなかったけどね!!!
とうとう現実に気がついたみたいですよ。主人公。




