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あああああああ  作者: けろっぐ
第1部:ある世界の私
10/42

003 ★

7/23:改稿 書きミス等を直し、文章を少し追加しました。

「本当に……山に囲まれてるんだ……」



 私はその初めて見る光景に目を奪われていた。










 何がしたい? と尋ねられたので「生まれ育った森を見てみたい」とお願いした。

 「そんなの簡単よ」とニッコリ微笑まれたと思ったら、一瞬でベルデの長い髪が私の体に巻きつき、その小さな背中に軽々と背負うように抱え上げられた。



「じゃ、行くわよ♪」

「??」



 そう言うとベルデは軽く足を曲げ、とん、っと軽やかな音を立てジャンプした。一瞬の浮遊感の後、するするとベルデの体と私の体が上がっていく。



「え!?」



 突然の事にびっくりした私は思わず顔を上げると、私たちの真上にある木の枝や葉がトンネルのようにぽかりと口を開いていた。


 そこに吸い込まれるように私たちの体が入ったのを目で追い、通り過ぎた場所に目を移すと、左右から折りたたまれるように枝や葉が元に戻っていくのが見えた。



「わぁ、枝や葉が生き物みたいに動いてる!!」

「本体以外の木でもこの程度なら簡単に動かせるのよ」

「ベルデすごい!」

「ふふ、じゃぁ、もっとびっくりさせてあげようかな♪」



 そういうが早いか



「っ!?!???」



 緩やかに上昇していた速度がグンッと急加速し、ジェットコースターのように勢いよく上へ上へと登っていく。





「どんどんスピードは上がるわよー♪」

「わわわぁっ!!」



 肌に当たる風の強さが勢いを増し







「ほらほらほらー♪」

「ぁぁーーっ!!」



 耳を打つ風の音が激しさを増し







「まだまだー!」

「ぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」



 体にかかる負荷がどんどん増した所で









ぽーーーーーーーーーんっ






 突然空中に放り出された。







「あ、やっちゃった★」

「やっちゃった、じゃないぃぃぃぃい!!!」







 てへ、と可愛らしい声が聞こえ、一瞬空中で体が停止したかと思うと、重力に逆らう事無く体が下に引っ張られる。


 身体が落下する感覚に思わずぎゅっと目を閉じると、ぼふんっと軽い衝撃と共に身体が受け止められた。





「なんてね。どう? 楽しかった?」



 楽しげな声に恐る恐る目を開くと、横たわっている私の横にしゃがん見つめているベルデの顔が見えた。ニコニコと微笑み、自分がした事を自慢するかのような表情をしている。


 その顔はまるで、上手に出来たことを大好きな主人に褒めて欲しい小型犬のようだが、生憎と私が口にした言葉は、ベルデの予想から外れていたようだった。



「こ、怖かったぉぉ!!」

「え!? こ、怖かったの!? な、なんで!?」



 私のその言葉に笑顔が凍りつき、驚愕の表情になる。怖かった、という言葉が理解出来なかったようだ。


 そんなベルデを余所に、体験したこともないスピードと、突然宙に放り出された恐怖を思い出し涙がボロボロと零れだす。



「ぐんぐん上にいくし、空にいるし、落ちるしっ!!!」

「ごめん……楽しんでくれると思ったから……」

「ふえぇぇぇぇ……」



 泣き出した私の扱いをどうしたらいいのか分からないようで、ワタワタと慌てふためいているベルデを見ていると、整った容姿に似合わないその慌てようが滑稽で、少しずつ涙が収まってきた。



「ぐすっ……」

「ごめんね?」

「ぅうん……ベルデも悪気があったわけじゃないみたいだし……」

「いつもこうやって遊んでたから、ルクスちゃんも楽しんでくれると思ったから……」

「突然だったから怖かったけど、ちゃんと教えて貰えれば大丈夫……だと思う……」

「分かった。今度からは何するかちゃんと言ってからにする」



 その言葉に了承の意味を込めて、にっこりと微笑むとつられてベルデもにっこり微笑んだ。



「それより、ほら」



 その言葉と共に手を取られ、横たわっていた体を起こされる。いつの間にか体に巻きついていた髪の毛は解かれていたみたい。


 そして今更ながらに足元を見降ろすと、今自分がいる場所に驚いた。



 今立っている場所は大きな葉っぱの上で、私とベルデが寝転がっても十分な広さがあった。


 よく見ると蔦や木の枝が複雑に絡み合い葉の形を作っている。足先でちょんっと足元をつついてみると、身体が受け止められた時にも、寝転がっていた時にも感じたハンモックに似た弾力があった。


 試しに軽くジャンプをしてみると、ぽよんと葉は私の体を弾ませる。それが楽しくてぽよんぽよんと何度も飛び跳ねて、足元から葉っぱ全体に視線を移すと今更ながらここがまだ空の上であることに気がついた。



「ひゃぁぁっ!?」

「あぁ、大丈夫だから」



 驚いて座り込みそうになる私の体をベルデの腕が支えてくれる。その温かい腕にほっとした私は今いる場所から見える景色に圧倒された。




「わぁ……」

「どう? ここからの景色は?」

「本当に……山に囲まれてるんだ……」



 私は眼下に広がるその光景に目を奪われていた。


 足元に広がる緑の海から天を貫くようにそびえ立っているリヒトの大樹が少し離れた場所に見える。こんな高い場所にいてもリヒトの大樹の天辺は見えそうにない。


 そして、森の四方の果てにかすかに見える連なる山々、そこにかかる白い雲。見渡す限りに青い空、そこに浮かんで光を放つ太陽。


 父や母、それに村の大人たちから話だけは聞いていたが、森の中からは絶対に見えなかったその景色に感嘆の声を漏らす。



 どこを見渡しても視界を遮るものはなく、生まれてから殆どの時間を森に囲われた集落から出ることなく過ごしていた私は、この解放感に感動が湧き上がってくるのを感じた。



「すごい……」

「森を見てみたいって言ったから、全部見るならここかなって思って」



 驚いてベルデの方を見ると、顔色を窺うようにこちらを見ている。その様子が小動物のようで妙に可愛く思え、吹き出してしまった。



「あはっ、ちょっと森の中を見て回りたいなっていう意味だったんだけど」

「え!!? そうなの!?」



 またワタワタと慌てふためき出すベルデに



「でも、こっちの方が断然いい!ありがとう!ベルデ!」

「!」



 私はにっこりと笑顔でお礼を言う。


 そんな私にベルデはホッと息を吐き、そして満面の笑みを浮かべると、もっと褒めて欲しいというような表情で、なぜここに連れて来たかを説明し出す。



「すごいでしょ、ここ! リヒトの大樹には登れないけど、そこ以外で一番高い木……まぁワタシの本体なんだけど! そこからの眺めをルクスちゃんに見せたかったの!」




 すごいでしょ、と揺れるものがない胸を張る。



「私、初めて山とか見たし、空もこんなに広いだなんて思わなかった!」

「でしょ! ルクスちゃんがあきるまでここにいるから楽しんで!」

「うん! ありがとう!」



 太陽の光を浴びてキラキラと輝くリヒトの大樹。そこから少し離れた所に小さな湖が見えた。あそこはたぶん母と父に連れられて行ったことがある湖かもしれない。


 湖からかなり離れた左手側には木々が途切れた場所がある。そして反対側の右手側には山から森の中へ水が流れている所があるのが見えた。たぶんあれが川なんだろうな、いつか行ってみたいな、と心の中のメモにその場所を刻み込む。


 しばらくリヒトの大樹側で他に見たことないものや行ってみたいところが無いかきょろきょろと探していたけど、他にめぼしそうなものが無いので、今度は反対側を探そうとくるりと体を反転させる。


 そしてこちら側に何か無いかと目を凝らしてみると、山に近い森の中から白い煙のようなものが立ち上っているのが見えた。




「あれ……? なんだろ?」



 そんな私の声にベルデもその方向を見る。



「煙だと思うけど、この森にルクスちゃんが住んでる集落以外に人がいるって聞いたことないし、もしかしたらたまに来るハンターかもしれないわね」

「ハンター?」



 初めて聞くその名称に首を傾げると、ベルデが説明してくれる。



「うん、ワタシもよく知らないんだけど、森の周りとか山で採れる素材集めに来る人がいるみたい、その人たちの職業? がハンターっていうらしいのよ」

「へー、そんな人がいるんだね……初めて聞いたよ。よく来たりするのかな?」

「五~六年に一回とかそのくらいかな? ワタシはここから動けなかったから見た事ないんだけど、ほかの精霊の話とかでたまに聞いたりするわね」



 ふーんと煙の方向を見つめていると、



「ねぇ、ルクスちゃん。あそこ、見に行ってみようか?」



 ベルデがびっくりするような事を言ってきた。



「え!? 行けるの!? すっごい遠いよ!?」

「大丈夫よ! ワタシもルクスちゃんのおかげで本体から離れられるようになったし、あっという間に行けるよ!」

「うーん。大丈夫かな……」

「大丈夫、大丈夫。ぱっと行ってこっそり見て帰ってくればいいんだし! それに本体から離れてどこまでいけるか試してみたいのよね!」

「……行ってみようか」



 ベルデは今まで自由に動けなかった分自分が自由に動けることに興奮しており、そして私も普段出れない集落から出て自由に動けることに興奮していた。



「そうこなくっちゃ♪ じゃ、行ってみよー♪」

「おー!」



 そういうと、先ほどと同じように一瞬でベルデの長い髪が私の体に巻きつき、その小さな背中に軽々と背負うように抱え上げられる。


 そして、来た時と同じように音も立てずにするすると木から降り、飛ぶように木々を走り抜け、あっという間に煙が立ち上っていた場所まで辿りついた。












 そして――そこで見た光景に、私は言葉を発することが出来なかった。

あれー?この回で回想話は終わらす予定だったのに、ベルデが案外おバ・・げふんげふん、調子に乗りすぎて終わらなかった・・・



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