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6/30:小説の流れから説得力が弱い部分を補うため、加筆修正しました
始めは何もなかった。
生きとし生けるものはなく風も大地も水も火も、何も存在しない漆黒だけの世界。
そこに一筋の光が降り立つ。
光は辺りを照らしたが、そこには何もない。
心細さに光は涙し、ぽたりと一滴涙が零れ落ちると、あっという間に何もない世界は『海水』で覆われた。
光は辺りを照らしたが、静かな水面に光が反射するだけで他には何もない。
光はため息を零すと、そこから『風』が生まれ、あっという間に何もない世界は『空気』で覆われた。
光は辺りを照らしたが、風が凪いだ水面はゆらゆらと揺れ、光がキラキラと文様を変えるように反射する。
水面の煌きに合わせて楽しげに光は手を打ち鳴らすと、打ち鳴らした分だけ水に波紋が広がり、広がった波紋の中から『大地』が姿を現した。
光は辺りを照らしたが、揺れる水面、荒れ果てた大地に舞い上がる砂埃があるだけで他には何もない。
生まれたばかりの大地をよく見ようと光は自身の輝きを強めると、大地が隆起し山が生まれそこから『火』が次々と飛び出した。
あわてた光は輝きを弱めたが、火は山の中を溶かし赤くて熱い水を作り出し、熱い水は山から溢れ出す。
流れ出た熱い水は大地を流れて大きな筋を作る。
どんどん流れていって最後は海に辿り着き、熱い水と冷たい水が初めてそこでぶつかった。
ぶつかった所から白い煙が立ち上がり空に雲が生まれ、海に波が生まれた。
空を覆った雲からは小さな水が沢山零れ落ち、大地を海を潤す。
すると大地には草木が芽吹き、水には海藻が育ち始めた。
見る見る変わっていく様子に光は嬉しそうに大地の端から端、海の端から端を飛び回る。
そのうち大地や海で動く物がある事に気がついた光は動くそれに話しかける。
「こんにちは、はじめまして」
だが、返答は帰ってこない。
根気強く光は話しかけるが動くものからの答えが返ってくることは1度も無かった。
光は悲しくなったが、ふと気がついた。
言葉が通じないだけなのかも。
光は動く物に祝福を与えてみる。
すると見る間に動くものは姿を変え、言葉を話すようになった。
嬉しくなった光は全ての動く物に祝福を与えていく。
するとあっという間に動くものは大地に増え、海に増えていく。
動くものは虫の形になったり、獣の形になったり、魚の形になったり、人の形になったり
様々な形になって光を楽しませてくれた。
特に人の形を取ったものは光と一緒に歌を歌ったり踊ったり、とても光と仲良くなった。
そんなある日、突然光の身体はみるみる小さくなっていった。
光は自身が小さくなっていくのを止められず、ある日、水や風や大地や火に自分の力を分け与えて自らの眷属にしてこう言った。
貴方たちはこの世界で生まれた存在。だから私より彼らに近い存在。
貴方たちは彼らと手を取り合い、私の代わりに彼らを見守ってね?
それと人間には特によくしてあげてね?一番のお友達なの。
そして光は大地の中央に降り立つと、1匹の白い竜を生み出し、もたれかかるように眠りに落ちた。
眷属たちは光の力が少しでも早く回復するようにと、力を合わせて光を天にも届くような大きな樹に変えた。
そして光の眠りを妨げないよう、樹の周りを沢山の木々で多い深い森を作り、そこを囲むように4つの山脈を作り出した。
そしてその世界は光の名前を貰い「リヒト」と名づけられた。
--リヒト創世記 第1節抜粋