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私の告白 1

 私達は渡り廊下の前まで来たが渡り廊下はなかった。

 それは渡り廊下が消えていた、というわけではない。というか渡り廊下は「あった」。

 何を言ってるんだ私、何が言いたいんだ私、って事だ。


 渡り廊下はあるにはあったが、それは巨大な河にかかる橋のように長く長く…あまりにも長い。果ての方は見えないくらい遠くまで続いていた。



 つまり渡り廊下は「ある」んだけど、それはもう普通の渡り廊下では全くなかったって事だ。

 渡り廊下があんまり長いものだから、渡り廊下の向こうにあるはずの校舎は目を凝らしても見えない。渡り廊下に合わせるように中庭も果てしなく広くなっている。渡り廊下に踏み出して見渡したこの校舎の周りは、何もないまっさらな土地がどこまでもどこまでも、果てしなく広がっていた。



 「お~~…」ヤグチがため息をつくように言った。「これは…」

さすがにヤグチも『すげぇすげぇ』ではすませなくなっているんだろう。

「渡った方がいいのか、渡んない方がいいのか」

ヤグチが続けたが、そんなの渡んない方がいいに決まってる!

 そして私はさっき思った事をもう一度考えていた。


 ツブツブと帰ったら良かったのだ。

 本当に私を助けてくれるのはヤグチじゃなくてツブツブだったのかも…



ヤグチが言った。「これは途中まで行ったら足場が崩れるパターンのやつだな」

どういうわけかヤグチは全く動揺していない。

「それかもう考えもつかない悪い状況が待ってるやつ。なぁ?足場崩れる以外でお前なら何が起こると思う?」

「…」

「ていうかもうこっから出れたとしてどうなんだろうな。ここは完全に違う世界だよな?…あれ?お前こんな状況で結構余裕だな。何か別な事考えてる?」

私は黙って首を振った。ヤグチの方がよっぽど余裕だろう。こんなわけわかんない目に遭ってるっていうのに。

 もうどうしたらいいか全然わかんない。さっさと帰れば良かった本当に。



 が、ヤグチはさらに聞いた。「今何考えてんの?」

「…何も」

「何もなわけねぇよな?もしかして…っていうかやっぱ、オレと迷うのがすげぇ嫌な感じなの?」

「…」

ダメだ、正直者の私は違うときっぱりと言えないでさっそく口ごもってしまった。

「マジか…。オレは結構テンション上がってたんのに」

「何でテンション上がるの?こんなわけのわかんないとこにいるのに。こんな目に遭ってるのに!」

「こんな目に遭ってるから。その…お前と2人で。オレはお前が桜井に話をされてるのを聞いてて、これは、って思ってた」

「何言ってんの?」

「お前もある程度こういう感じ予想してたろ?」

私はぶんぶんと頭を振った。「してないしてない」

 してるわけないよ!

「ふ~ん…そうか…じゃあ仕方ねぇ」

ヤグチがやっと言ってくれた。「じゃあ仕方ねぇから脱出しよう」



 私達は渡り廊下の脇にある階段を降りる。

「それでお前の夢の中のオレらって結局どうなった?」

「どうやっても校舎から出られなかった」

「それで?」

「ヤグチ君が屋上に連れてってくれて、そこで目が覚めた」


 私は結局、どうやっても今日は帰れなかったんだと思う。

 朝からの事を思い出すと、私は今日どうやったってこういう事に巻き込まれるはずだったんだとも思えてくる。

 …じょあ良かった。あの世界史の時間の前にただ歩いていた廊下で一人ぽっちになったみたいに、今一人じゃなくて。

 あの時もヤグチが来てくれた。そして今も一緒にいてくれてる…



 階段を降りて1階に降りたはずなのに、そこにはまた物理室と、スケートリンクがあった。

「おお~」とヤグチが感嘆する。「階段を降りても元の階、ってパターンか。じゃあそのお前の夢の通りに屋上に行くほかないんじゃね?」

「ダメ!屋上に行ったら…」

「行ったら?」

「何かすごくダメな感じになった」

私はあの夢の中の屋上のコンクリートと空のどんよりとした灰色を思い出す。

「何か超ネガティブな感じだったから」

「ふうん」

「何か、あ~何もかも終わりだなって感じだったよ」

「それはオレが連れていった屋上でって事だな」

「…うん。もう何もかも終わりっていうか、なんだろう。うまく言えないけど…何もない感じ。虚無な感じ」

「何かすげぇ嫌だな!オレの夢の中でもお前をどこにも出してやれなかったし。今でもそうだし」

「でも私は…」

「なに?」



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