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翌日 

 昨日といい、たまたま通りかかったのがツブツブで良かったけど…たまたま?

 そう言えば、昨日は気付かなかったれど、前にツブツブとバスであった事はない。

「オオツブライ君てバスだった?今までバスで会った事なかったよね?」

「おととい、自転車のチェーンが壊れて直してないから」

おととい…桜井に私が話を聞く前の日だ。


 そう言えば!ツブツブは部活してないって言ってたのに、何で昨日はあんな時間まで残ってたんだろう。

「ちょっと恥ずかしいんだけどさ」

ツブツブが小さい声で言った。「昨日下の名前で呼んでくれるって事になったよね?」

「あ、…うん」と答えるがもちろん私は困っている。

「山根は帰って何してんの?部活してないんでしょ?」

「私は…マンガや本読んだりご飯作ったり」

「へーお母さん仕事遅いとか?」

「そう。毎日じゃないけど」

「偉いな」優しく笑ってツブツブが言った。

「でもすごい簡単なものしか作んないよ」

「それでも偉い」

 今完璧に、ゴトウハルカよりツブツブの好感度の方が高くなった。

 桜井に仕組まれた事なのに、浮かれたらバカみたいだ。誰か来てくれないかな。こんなの慣れてないから2人きりは何かもう無理。



 それでも他愛もない話をツブツブがうまく振ってくれて、私達は気まずくならない感じでバスを降りた。

「薫ちゃん、おはよう」

やっと来た!助け舟。

 後ろから小走りにやって来てくれたのはアライサクラちゃんだ。私と一緒にお弁当を食べてくれてる一人だ。夕べの夢にも出て来てくれて、ゴトウハルカが呼んでるって教えてくれた。


 私がおはようと言い返すと、サクラちゃんは私とツブツブを見比べてこっそり、「一緒に来たの?」と聞いて来た。

「うん、バス一緒だった」と答える私。

「もしかして家近いの?」

「まぁまぁ近いよ」ツブツブが答えた。

そして私に振って来る。「昨日一緒に帰って近いのよくわかったよね?」

 え?一緒に帰ったの?という顔でサクラちゃんが私を見た。

「私、今邪魔してる?」

サクラちゃんが小さい声で聞いてくれる。

 私はブンブンと首を振った。

 とんでもない!助け舟だったよ。大好きだよサクラちゃん。



 サクラちゃんに説明する。

「昨日私桜井先生に放課後仕事頼まれて、それで帰りに気分悪くなってたら

ちょうどオオツブライくんが通りかかって、それで桜井先生がほぼ無理矢理に私の事送るように頼み込んじゃったんだよ」

そっか~とサクラちゃんは笑顔で言った。

 夕べの夢ではトリゴエユカにこの説明をしていた。

「あれ?」とツブツブが言った。「まただ。下の名前で呼んでくれるって話にならなかったけ?そう思ってたのオレだけ?」

唖然とする私。サクラちゃんも唖然としている。

「あーじゃあオレ先行くわ」と言ってツブツブは少し急いで先を歩く。

 どうしよう。私が「ユウリくん」て呼ばないから気分悪くしたのかな?せっかく「呼んで」って言ってくれたのに。



「ごめんね」サクラちゃんが言った。「私が先に行けば良かったよね」

私はまた頭をぶんぶんと振った。違う違う。

 違うけど…



 教室に着くと、先に行ったツブツブはもちろん教室に先に着いていて、もう他の男子と話をしていた。

 これも夕べの夢と同じ光景だな。

 トリゴエユカの姿を捜すがまだ来てないようだった。

 そして夢には出て来なかった男子のツチダに声をかけられた。

「山根、高森が呼んでたけど」

高森が?…嫌だ。

 私は昨日のお茶の味を思い出し気分が悪くなってきた。

 夢ではゴトウハルカが私を呼んでくれてたのに。

「桜井先生じゃなくて、高森先生が?」私は確認する。

「理科の準備室に来てくれって」

嫌だ。

 行かなくてもいいんじゃないかな私。



 絶対昨日の話の事で呼ばれてるのはわかる。なにしろ高森は桜井の手先だ。

 でも桜井じゃなくてなんで高森?桜井本人じゃなくて手先の高森に呼び出されるのが、逆にすごく怖い気がする。

 行きたくない。…けど、行った方がいいんだろうな。自分でも桜井と高森をもっと良く観察するって決めたもの。



 かばんを急いで片付けると理科準備室へ急いだ。急がないとホームルームが始まってしまう。

 ホームルームは担任の桜井が来るから、私がいなくても察知してくれるだろうけど、クラスの子たちには何も怪しまれたくない。



 理科準備室は私達2年の教室がある棟の3階にある、物理室と化学室の間の理科系担当の教師の準備室だ。

 私は教室のある2階から急いで3階への階段を駆け登った。

 嫌な事は早く済ませてしまいたい。

 扉を軽くノックして「失礼します」、と声をかけてから引き戸のドアを開けた。


 高森しかいない。

 白衣姿の高森が、手に黄色い半透明のビニルボールを持って、それを強く握ったり手の平で転がしたりしながら窓の近くに置かれた水槽を見ていた。




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