田代姉妹の保健 3
「「せんせー」」男子の声がして私はハッと我に帰る。
ツブツブの声だ。それとヤグチ。
私は落ち着いてまわりを見回した。
2人が立って私の所へ来てくれたのだ。
が、2人とも止めて欲しい。ほら、みんながざわついている。
「せんせーオレがやる」ヤグチはそう言い、ツブツブは「先生お手本見せて下さい」と言った。
ヤグチがツブツブにあからさまに嫌な顔をしている。
田代ミカと田代リカが顔を見合わせじゃんけんをする。
私の右手にいる田代ミカがグーを、左手にいる田代リカがパーを出した。
パーを出した田代リカが輪の中に入っていき、お尻をごそっごそっとさせて無理矢理座り込んだ。私とヤグチとツブツブは輪の真ん中にたったままだ。
「じゃああたしからな~~~」
田代ミカが話を始め、とたんにヤグチは私の手を掴んで輪の隙間の空いている所へと移動する。
ヤグチに手を掴まれながらツブツブを振り向くと、睨むように私達を見て
自分も輪の中に戻って行った。
正直私は怖いと思った。どうして私はヤグチの手をちゃんと振り払わなかったんだろう。
「はずかしいからな~~~」と輪の真ん中の田代ミカが言う。「みんなちょっと目をつむれよ~~~」
輪に加わっているみんなはぎゅっと目をつむった。
みんなまじめだ。結構おかしな状況だと思うのに、みんなまじめ過ぎる。
サクラちゃんもミノリちゃんもツブツブも目をつむっている。
ヤグチは?左側にいるヤグチを見たらヤグチも私を見ていた。
「ほらそこ~~~」と田代ミカに言われてビクリとする。
田代ミカが仁王立ちで私とヤグチを見下ろしているので私は慌てて眼をつむり下を向いた。
「じゃあみんな~~~」田代ミカが言う。
「私がミカがリカかわかるやつ手をあげろ~~~」
今話してるのは田代ミカだ。だから私はそっと手を上げる。
が、それはさっきからの話をしている感じで田代ミカだと判断しているだけで、本当に今話している方が田代ミカなんだろうか…
私は上げていた手をそっと下ろした。
見たいな。みんなが手を上げているかどうか見たい。
「よし下ろしていいぞ~~~」
やっぱ上げてた人いるんだ。そう思った所へ、私の左腕、半そでのブラウスから出ている腕にヤグチの腕が当たった。
少し腕をずらしたがまた当たる。ていうか凄く私にくっついてきてない?
顔を上げないようにして左隣のヤグチを睨むが、ヤグチは目をつむったままだ。
私はそっと身を縮ませてヤグチとの間に隙間を空けた。
あんまり開けると右隣のデガワさんに当たってしまう。
「すげぇ失礼」とヤグチが聞こえるか聞こえないかの声で言ったので、私はまたヤグチの方を見てしまうが、ヤグチはやっぱり目をつむったままだった。




