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高森の生物の時間 6

 「それから山根?」

急に呼ばれて私は「ぅえ?」変な声をあげてしまった。

 急に、と言っても何度目だ?

 そう言えば現国での水本の絡み方も今考えたらおかしい。

「悪いんだけどこの水槽、放課後片付けるの手伝って欲しいんだけど」

高森は嬉しそうだ。

 高森…絶対に面白がって私を呼んでる。

 私の事をやたら気に入ってるとみんなに思われてもいいのか高森。

 私はすごく嫌なんだけど。


「すみません、先生。私今日は桜井先生の所に行かないといけなくて」

「行かないといけないの?」

笑いながら高森が言った。

 やっぱり絶対面白がっている。

「行かないといけないんです!」

「昨日もそんな事言ってなかったっけ?山根は僕の手伝いするのが嫌なの?」

 女子がざわざわっと騒ぐ。

 止めてくれ高森。嫌に決まってんじゃん。


 がたん、と立ち上がったのはハヅキモエノだった。

「私手伝います!」

 教室全体がさらにざわっとした。

「そうか?」高森が言った。「ありがとう。え~と…」

「ハヅキモエノです」

「ありがとうハヅキ」


 チャイムが鳴り、高森はさっさと生物室から出ていった。

 どうするんだろうハヅキモエノ。

 というか、どういうつもりだ。

 あんな重たい水槽、私達2人じゃ無理だって。せっかく断ったのに。



 「山根さん」とハヅキモエノが言う。

「桜井先生の用事がすむの、私待ってるから」

「いや…」私は首を振って見せた。

「用事済むの、いつかわかんないし。無理だって。あんな重たいの男子に頼めばいいのに」

「なんか高森は山根さんを相当気に入ってるね」

私はさらに首を振って見せた。



「おれらも行こうか?」

私達のグループの理系の男子が言ったので私は慌てる。

 私が男子に頼めって言ったから…

「ごめん、今私が言ったの気にしないで!」

が、ハヅキモエノは満面の笑みで男子に言った。

「一緒にやってくれんの?ありがとう!」

「あ、オレも行こうか?何かオレだけ行かないの悪いし」

アサイカイトまで言い出した。

 何でみんな、そんな協力的な感じ?

 同じグループとはいえ生物は実験がほとんどないから、とくにみんなでわいわい話をした事もないのに。

 …ていうか私もやっぱり行く事になってるよね?


「何かちょっと面白そうだし」と理系のタケシタ君が言った。

「オレも結構カエル見たいかも」もう一人のヤマダ君も言った。

 理系の男子は文系の男子に比べて女子に優しい気がする。クラスに女子が少ないからだろうか。

 それかやっぱりハヅキモエノが美人だからかもしれない。


 結局私は桜井の所へ行くのは後回しにするという事にして、みんな6時限目が終わったらまた生物室に戻る事で話がまとまってしまった。


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