高森の生物の時間 1
生物室の前でやっとヤグチに教科書を返された。
「じゃあなオレ化学だから」
そうか、ヤグチは化学だったのに、ナナダハルミに困ってると思って私を助けてくれたのか。
「ありがとう」と私は一応言う。
「お―」と答えてヤグチは隣の化学室に入って行った。
でも次から止めて欲しい。
生物室に入ると担任の高森はまだ来ていなかったが、教卓にはあの、理科控室にあった気持ち悪い大きめの水槽が置いてあった。
高森がカエルを飼っていると言っていた水槽。
昨日よりもまた一層藻で覆われているように見える。水の量より藻の量の方が多いんじゃないかというくらいだ。
教材に使うのか?
私達文系のクラスは理科1科目の選択になるのだけれどうちのクラスから生物を取っている人は20人。後の大半が化学で物理を取っているのは2人だけ。
だから化学を取ってるのは8人か…。
ツブツブも化学だ。
文系で物理を選択するなんてそれだけで尊敬できるのだけど、それがまた男子ではなくて、私と一緒に弁当を食べてくれているアライサクラちゃんとクリハラミノリちゃんなのだ。
私は2人が物理を選択すると言った時に正直驚いた。
「「物理面白いよね?」」と2人は可愛く言う。
「「薫ちゃんも取ればいいのに」」
無理!無理無理、物理は無理。
2人が物理の宿題の答え合わせをしている時には、私は結構な疎外感を感じるのだ。全く話がわからなくて。
うちのクラスからの20人と理系のクラスから生物を取っている子の7人が加わる。
生物室には大きな机が縦に3台、横に3台の9台あるが全部で27人しかいないので、前と真ん中の6台の机に4、5人ずつのグループの席になっている。
私の席はちょうど教室の中央の台だ。
私と、同じクラスのハヅキモエノと、後は男子で、うちのクラスのアサイカイトと理系のクラスから来ているヤマダ君とタケシタ君だ。
さっき話しかけて来たナナダハルミも生物で、前の方に座っているが私の事をチラチラと見てくる。
見るな見るなナナダハルミ。
後、高森とヤグチでBLを書いているスズキナツミも生物だ。
ヤグチが生物にいなくてやっぱり残念なんだろうな。
じゃないとあれだけ私に2人一緒のところを見たいなんて言わないだろうし。
ナナダハルミのさっきの話は結局なんだったんだろう。
あれは私に話をしに来たっていうのに入っているんだろうか。結局水本とツブツブの事を気にしてるっていう事しかわからなかった。
私はもっとちゃんと聞くべきだな。
途中で少しくらいイラっと来たからって、聞く耳は持たないといつまでもミッションが終わらない。ヤグチの言う通りさらっと聞いて、嫌な事はそのまま素通りさせればいい。
まぁヤグチにも邪魔されないようにしなきゃいけないけど。
「水槽気持ちわり~~」
前の方の席の男子が騒いでいる。
「今何か水が飛んできたような気がするし」
「マジかお前、オレに触んなよ!」
「うるせぇオレには着いてねぇって」
「高森遅いね」
そう私に言ったのは私と同じグループのハヅキモエノだ。すぐ横に座っている。
うん、と私は答える。普段、教室ではあんまり話した事がないが、ここでは同じグループの女子2人なので話をする。
ハヅキモエノは88点。
美人だし、成績もいいし、スタイルも良い。
それほど男子に人気がないのは、たぶんレベルが高すぎるせいと、ちょっとガサツで大雑把な所が目立ってしまうからだろう。
こういう子よりおとなし目でか弱そうな子とか、世話好きな子を好きになる男子はたぶん、というか絶対に、女の子を見る目のないやつだ。
まずきちんとした女子は、そういう女子を好きになる男子を相手にしてはいけない。
私はガサツで大雑把な美人の女子は大好きだ。
ハヅキモエノも男子よりも女子に好かれるタイプの女子。
けれどこのクラスの中には特に仲がいいって女子はいないと思う。誰にでも普通にさばさばと話す代わりに誰にも深入りしない。ベタベタもしない。
ハヅキモエノみたいな子が男子だったら大モテなのに。




