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なんかスムーズにいかない 2

 今学習している夏目漱石の『こころ』について、どう思うか水本が私に聞いている…のはわかったが、その『こころ』の何についてどう言えと言っているのか、急に問われた私にはわからない。

 急にと言うか、私に当てる前からその前振りの説明をしていたんだろうけれど、私は全く聞いていなかった。

「あ~山根、まあ座れ」

言われた通り私は席に着く。


 

 「私はだなぁ、」水本がクラス中を見回して言った。「『こころ』が嫌いです。言っとくぞ。『こころ』は大嫌いだ。素晴らしい作品だともちろん普通に思うんだけど、それでも嫌いなんだよ。私が高校生の時もな、『心』が課題にあって、それで感想文とかもクラス全員夏休みに書かされてな、すんごい嫌だったのに。まさか先生になって、それで『こころ』が課題になってそれを教えてるなんてな…。山根?」

 へ?また私と思って私はまた席を立ちかけるが、水本は手で座っておくようにと合図しながら話を続ける。

「今年だけじゃないぞ。来年もだからな…よくな、生徒に聞くと、夏目漱石っつったら小、中学生だと『坊っちゃん』て答えて、高校生だと『こころ』って言うんだよ。今時の高校生が本気で読みたいと思って『こころ』を読んで、本気で感想文を書くとは思えないしな、ネットに『こころ』の感想文で検索できるしな。山根?」

 いやもう私を呼ばないで欲しいけど。

「この前の宿題で出させた感想文、山根が書いてた漱石の『草枕』のやつ、すごく良かったぞ。私も漱石だと一番『草枕』が好きだな。なかなか『草枕』持ってくる人はいないな。あっても『三四郎』とか『それから』とかな」


 最初は私が呼ばれるたびに、何人かずつチラ見していたクラスの子たちが

一斉に私の方を向いた。

 ツブツブも私の方を見て優しい微笑みを浮かべている。

 それはちょっと嬉しいけど。早く終われ現国。


 

 もう「山根?」とは呼ばれなかったが、残りの時間水本は夏目漱石について語るだけ語って授業を終えた。何か疲れた。

 次は生物だ。移動しなければいけない。

 高森の授業だ。

 何かちょっと嫌な感じがする。


 生物の教科書とノートを用意していると「山根さん」と声をかけられる。

 ナナダさんだ。下の名前はハルミ。成績が良くていつも本を読んでいる

典型的な文系少女だ。見かけは。

 黒ぶちの眼鏡をかけて髪は少し長めのボブ。スタイルも良いし、まぁまぁ美人だけど私の付けた点数は47点。

 喋った事はほとんどないが、ナナダハルミはたぶん、私よりも腹黒いんじゃないかと私は睨んでいる。


 噂によるとナナダハルミの目は悪くないらしい。

 それなのに眼鏡をかけているのだ。

 そしてそういう文系キャラを押しているのに、うっすら化粧をしているのも何か腑に落ちない。

 誰かが取りたてて彼女の悪口を言うわけではないけれど、誰もが遠巻きにしている感じ。


「すごいね山根さん」とナナダハルミが言った。「水本先生に褒められるなんて」

「あ~…」と言ったきり私は返答に困る。

 そして今日はまずナナダハルミか、と思う。

 私は話を聞く体制を取るろうとナナダハルミを見つめるが、眼鏡の奥のまつ毛、うっすらマスカラコートを塗ってないか?何か嫌だなナナダハルミ。



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