なんかスムーズにいかない 1
チャイムが鳴ってホームルームだ。
桜井が教室に入ってきた。やたらニコニコしていて気味悪い。
それでも普通のホームルームだった。出欠を確認して、まぁ全員出席なんだけど、日直を確認して、学校からの伝達事項を淡々と伝える。
そしてあっけなくホームルーム終了のチャイムの鳴る前に、桜井は教室から出て行った。
桜井は話の間、クラス中を何度も見まわしたが私だけを見てくるような事はしなかった。
1時限目の現国で私は自分の気持ちを整理する事にした。ツブツブの事もあって私は浮かれているのだ。まず落ち着こう。
昨日も落ち着こうと思ったような気がするが私は全然落ち付けていない。
まず、何も変わらない事にしよう。
とにかく普通にするのだ。これは日常なのだ。日常にちょっと変な色が付いただけ。誰かに話をしに来られても普通にただ聞く。
それでツブツブが優しくしてくれても、昨日や今朝のように浮かれてはいけないのだ。嬉しいと思っても、それで私達がどうにかなるなんて考えちゃいけない。…でもただ嬉しいと噛みしめよう。薫ちゃんて呼ばれてもそれが普通のような顔をしよう。呼ぶの止めてとは言えないし、止めて欲しくない。
ヤグチが絡んできてもそれはそれでほっておけばいいのだ。
だいたい人の話を聞くってだけの仕事に何の手伝いも見守りもいらない。
今日の放課後桜井の所に行くのももういいかなとも思う。何を話したところでもうどうにもならない。私はただクラスの子たちの話を聞くだけだ。
…でも席替えを頼んでみようかな。いちいちヤグチにちゃちを入れられたくないから。
昼休みにサイトウの話を聞く時に、ヤグチの事をどうしようかと考えている所に、現国の教師、水本が私の名前を呼んだ。
「山根?」
「…あ、はい」立ち上がる私。
ヤバい。聞いてなかった。何質問されたんだろう…目が泳いでしまう。
「山根はこの『こころ』についてどう思う?」
ココロニツイテドウオモウ?
目を泳がせながら私は水本の問いを心の中で繰り返す。
水本は去年赴任してきた若い教師だ。割と容姿は整っているけれど髪がやたらに長い。腰のあたりまである。1回春休み前に肩の辺りまで切っていたのを見たのに、次に見た時はもう背中の真ん中くらいまで伸びていた。ウィッグかとみんな思ったがどうも地毛らしい。




