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ユウリ君と薫ちゃん 3

「ヤグチもみんなから相談受けるの?」ツブツブが聞く。

「う~ん…どうかな。私ヤグチ君と一緒に呼ばれてないからよくわかんない」

「ふうん…どうしてオレ言われなかったのかな。何の悩みもないように思われてんのかな」

「悩みあるの?あの…昨日言ってたでしょ?名前の事、ツブツブとか呼ばれるの嫌だって、あれは悩み?」

私は自分が名簿に書き込んだ事の確認をする。


「あぁ」と言ってツブツブは笑った。

「悩みっちゃあ悩みだけど…でも本当は違うんだよ。アレ言ったのは…恥ずかしいけど…山根にそんな風に呼ばれるのはヤだったから。牽制の意味で言った。超恥ずかしいけど…本当に下の名前で呼んで欲しかったから」

 ツブツブは本当に恥ずかしそうにしてくれている。

 素直で優しい人なんだな。何か心がほんわかしてくる。

 今、桜井がいなくて良かったと思う。ツブツブがこんな事を私に言うのを聞いたら、ニヤニヤ笑われたかもしれない。

 学校休んだくせに私と同じバスに乗り込んで、わざわざあんな事を聞いてくるなんて…もしかして私の事を探ってんのかな。ちゃんとミッションをこなすかどうか…報告はいらないって言ってたくせに。



 私はただ、桜井にからかわれているだけなんだろうかとももちろん思う。高森もグルになって。それに今さっきの桜井はあきらかに私をからかっていたと思う。

 だいたい何で私は昨日あの話を信じたんだ?

 それは昨日の桜井が、いつもの飄々とした感じだったけれど、全部が嘘でただふざけている、っていう感じではなかったからだ。

 それにからかってるだけだとしたら、今日私に話しかけて来たスズキナツミは?ボーイズラブで創作活動やってるとか普段ほとんど話さない私にわざわざ話すだろうか。



「どうかしたの?」ツブツブが私の顔を覗き込んできた。

ドキリとする。

「ううん。なんでもないよ」私は首を振った。

「でもさ」とツブツブが言う。「本当に本当の、心の奥のとこにある悩みとか、そういうのをみんな簡単には話したりはしないよね?」

私もそう思う。

 だからやっぱりツブツブにも名前の呼ばれ方とかじゃなくて、もっと外の深い悩みが、それでも他の人に話したいと思っているような秘密があるのだろう。

 私はそれを聞いてみたい。



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