ユウリ君と薫ちゃん 2
「私の性格を指摘されたの」
それでも私は結局ごまかす事にした。性格が腹黒いと言われたのも本当だし。
「ヤグチが?薫ちゃんの性格を?」
うん、とうなずいたが、ツブツブが今度は唸って言った。
「あ~~もう~~気になるな~~」
気にしてもらえるのはありがたいけど、腹黒いと言われたことまでは言いたくない。
ツブツブに嫌われたくないのだ。
これ以上の説明は出来ない。…こういうところが腹黒いってことなんだろうけど。
「まぁいいや。いろいろ聞きたいけど我慢しよ」
そしてツブツブは言った。「メアド教えて欲しいんだけど」
生まれて初めてだ。男の子からメアド交換言われたの。感激する。しかも最初がツブツブなんてすごく嬉しい…
違った。さっきヤグチにも言われたんだった。
私はケイタイを家に忘れた事をツブツブに告げる。
ヤグチにはメアドを教えたくなくて言ったが、忘れたのは本当なのだ。
それでもツブツブは自分のケイタイをポケットから取り出して、私に渡してきた。
「オレのに入れといてよメアド。覚えてるでしょ?
帰ったらメールするからちゃんと登録してよ?」
高校3年間、というかその先も、男の子とメアド交換することなんかないんじゃないかと思っていたのにこの運び。
桜井に『男子が好きになってくれる設定』を断るのが、本気で惜しくなってくる。
ツブツブが何のためらいもなく渡してくれた彼の黒いケイタイを私は躊躇しながら開ける。ツブツブ、スマホじゃないんだな。
「いいの?私が勝手に開けて」
「いいよ全然。薫ちゃんはスマホとか?」
「ううん」私は首を振った。「ガラケーだよ。うちのクラスのアライサクラちゃんとクリハラミノリちゃん以外はメールする子もいないし」
言ってしまって失敗したなと思う。
社交的じゃない、友達の少なさを好きな男子の前面に出さなくてもいいのに私。
「オレも同じような感じだよ」ツブツブが言ってくれた。「オレも登録してるヤツ少ないし。ラインもやってないし、誰ともメールしない日もあるよ。続かないんだよね、面倒くさくて。しかも一番してんのが、薫ちゃん引くかもしんないけど、姉ちゃんなんだよね。うちの姉ちゃん結構面白い事書くんだよ」
シスコンてことか?
「シスコンじゃないんだけどね」
私が口に出さなかったのにツブツブはそうつけ加えた。
「いいなお姉さん」と私が言うと、ツブツブは嬉しそうに笑ってくれた。
「オレ、薫ちゃんからメール欲しいな」
わ~~~と心が騒ぐ。「私のメール面白くないよ」
「何かあんまりメールとかしない人のメールって貴重じゃん。薫ちゃんのからのは貴重メールだよ」
「ユウリ君…呼びにくかったら別に私の事まで名前呼びしてくれなくていいんだよ」
「うん」とツブツブが言うのでがっくりくる。
「でもオレもせめぎ合い。呼びたいのと恥ずかしいのとで」
がっくり来てたのに急激に嬉しくなって私はまた紅くなった。




